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【常勝の脳】 レスリング 高谷惣亮


こんにちは、レスリングウエアブランド MAMO 代表の半田守です。

私は岡山県の山奥で、レスリングウエアをつくったり、薪をつくったりして生活しています。全く違う2つの仕事をしていますが、それぞれに意義を感じており、仕事を通して充実した毎日を送っています。

今回のnoteは、レスリングリオデジャネイロ五輪代表の高谷惣亮選手の取材記事になります。オリンピック3大会連続出場をかけて、9月の世界選手権で代表権獲得に挑む高谷惣亮選手に、勝ち続けるために何を考え行動しているのかを聞いてみました。

高谷惣亮選手の戦歴はこちら。

高谷選手、ツイッターはじめましたよ!

@TacklePrince


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 高谷惣亮選手は、2007年の天皇杯全日本選手権大会で高校生ながら決勝に進出し延長戦の末惜しくも敗れたものの、その一戦は業界に大きなインパクトを残し一躍注目選手となった。その後、2011年の全日本選手権大会で初優勝。2012年3月にカザフスタンで開催されたロンドンオリンピックアジア予選で準優勝し、出場枠を獲得した。鋭いタックルが武器で、「タックル王子」のニックネームを持つ。

高校3年生で迎えた天皇杯 あどけなさの残る高谷
(写真=日本レスリング協会より引用) 

レスリングは年に2回日本一を決める大会があるのだが(春の明治杯、冬の天皇杯)、このまま行けば2011年の初優勝から一度も負けることなく2020年の東京五輪を迎えることになる。この10年間で怪物級に強い選手は所々で現れたが、今もなお勝ち続けている選手は彼以外いないのではないだろうか。

 そんな高谷選手に、一人のビジネスマンとして常勝の脳のつくり方を聞いてみたいと思ったのが今回の取材の動機である。


階級変更が挑戦を生んだ

 <半田> リオ五輪では7位という結果で惜しくもメダルには届きませんでしたが、そこから4年間気持ちを入れ直してトレーニングに励むのは大変ではなかったですか?

<高谷> ん〜そうですね。4年間と考えるとものすごく長い時間に思えますが、結局は一日一日の積み重ねなので、時間の長さはそんなに関係ないです。その中で一つの転機は階級変更ですね。2017年からルールの変更で、試合当日の計量になりました。僕は74kg級でずっと戦ってきましたが減量が多く当日計量ではベストなパフォーマンスができないと判断したので、その年の全日本選手権から階級を一つ上の79kg級に上げたんです。そのことで、「74kg級での負けられない戦い」から、「上の階級での挑戦」にマインドを変えることができました。そして、2018年の全日本選手権から東京五輪を見据えてもう一つ上の86kg級に階級変更をしました。なんかこう、挑戦って楽しいじゃないですか。だから僕、今すごく楽しいんですよね。

86kg級で現チャンピオンを下し初優勝した高谷
(写真=日本経済新聞より引用)

通常であれば、これまで自分が勝ち続けた階級で戦えないとなれば不安になるところだが、それを挑戦と位置づけてモチベーションに変えてしまうのはさすがである。取材中、彼から出てくる言葉はどこまでもポジティブだ。


ルーティンをやめました

<半田> 日々生活している上で、心がけていることはありますか?

<高谷> 逆に心がけないようにしました(笑)。リオ五輪まで、毎朝ヨガをするのを習慣にしていたんです。確かに気持ちのいいことなんですが、ヨガをやれば調子がよく、その反対でヨガをやらなければ調子が悪いっていう強迫観念にとらわれてしまって。。それで、朝ヨガのルーティンをやめました。それから調子がいいんですよね。

人間は自分との約束を守れた時に自信を持つことができる。反対に自分との約束を守れなかった時は自信を失ってしまう。忙しくてどうしても時間をつくれない朝もあるだろう。その都度不安になることよりも、その呪縛を取り除くことを戦略的に実行していることが、非常に考察深い。

停滞は退化だ

<高谷> ただ一つ信条というものはあって、「停滞は退化」ということ胸に置いて生きています。調子がいい時の自分の理想を追いかけようとして、過去の理想を体現しようとすると、そこに「進化」はなくなってしまいます。そうじゃなくて、常に新しい情報をアップデートしていきながら、練習に取り組んできたから今があるんだと思うんです。強いからって現状維持してたら飽きるじゃないですか(笑)。

孫子の兵法に「兵を形すの極は無形に至る」という故事がある。究極の軍の態勢として孫子が挙げたのが「無形」。すなわち「形を見せないこと」だ。高谷選手は以前、「完成させないこと」を目標にしていると語ったことがある。つまり、常に変化し続けること。彼の連戦連勝の理由は、常に進化と変化を求める姿勢にあるのではないだろうか。


オリンピックはそんなに綺麗なところじゃない
もっと泥臭く汚い舞台だよ

リオデジャネイロ五輪で戦う高谷
(写真=nikkansports.comより引用)

<半田> 今回で3回目のオリンピックを見据えるわけですが、どんなモチベーションですか?

<高谷> みんなオリンピックをすごく華やかな舞台だと思ってるけど、全くそんなことはなくて、海外選手が命をかけて挑んでくる本当に泥臭い舞台なんですよ。僕は2大会経験してそれをわかってるのが強みだと思っています。だから、あの華やかな舞台に立ちたいというよりは、自分の進化を確かめたいというモチベーションですね。そのために、世界選手権では必ず代表権を持ち帰ってきます。

高谷選手は、過去に試合中に噛み付かれたり、試合後に対戦相手から熱湯をかけられたり散々な経験をしている。国内のように世界は穏やかなところではないことを知っている彼が、今回どのような戦いを見せてくれるか注目だ。

熱湯をかけられたことが記事になっています。


原動力はワクワクする心

<高谷> 先ほどから、挑戦マインドだったり、成長の確認作業だったりと言っていますが、これって全てワクワクに繋がるんです。とにかく今ワクワクしてます(笑)。実は一つ夢が叶ったんです。それは、高校の同期と一緒に戦うこと。同期に山根将貴っていうトレーナーがいるんですが、国内の戦いでは必ず彼にサポートをお願いしています。なんか、昔からの友達と一緒に戦うってすごく楽しいじゃないですか。そんなことでも、ワクワクを感じています。

優勝の喜びを分かち合う高谷選手と山根トレーナー

僕も気持ちは一緒に戦ってますよ!(高校の一つ下の後輩 ←半田)

<高谷> それから、最近試合後のパフォーマンスについて、世間の意見が変わってきたことがすごく嬉しくて。僕はレスリングをいかにメジャー競技にするかを考えているんですが、その一つの取り組みが優勝パフォーマンスなんです。別に調子に乗ってやってるわけじゃなくて、ちゃんと自分に義務付けてやっています(笑)。はじめた頃は、ネットでも誹謗中傷コメントを書かれたものです。今回は日向坂46のダンスを披露したんですが、Yahoo!ニュースのコメント欄に「ロンドン五輪からずっと注目してますが、階級が上がって身体つきがまるで変わってる。たんに目立ちたい選手じゃなくて、信念を持ってる選手なんだって思います。応援しています!」って投稿してくださった方がいて、続けてきてよかったなって本当に嬉しくなりました。もちろん注目されたいって気持ちもありますが、それもこれもワクワクをもたらす要素になっています。

2017年天皇杯で優勝を決め、三代目ジェイソウルブラザーズのパフォーマンスをする高谷
(写真=日本レスリング協会より引用)

高谷選手は、会話の節々に「ワクワク」や「楽しむ」というワードを散りばめていた。ワクワク=原動力。これは脳科学でも証明されていて、モチベーションの源であるドーパミンという物質は、楽しい出来事をイメージすることで放出される。つまり、高谷選手はワクワクすることを想像して、脳内にドーパミンを出し、常に高いモチベーションで行動しているということになる。高谷選手はその力が人並外れているのだろう。そこに常勝の脳の仕組みを感じとることができた。


子どもたちには自分のやりたい種目をやってほしい

<半田> 最後に、今のちびっこレスラーに伝えたいことはありますか?

<高谷> そうですね。自分がやりたい競技をやればいいと思っています。今レスリングをやってる子も、それがあまり面白くないと思うのであれば他の競技をやればいい。とにかく、楽しいと思えることをやってほしいんです。楽しいことって、誰に言われるでもなく真剣になれると思うんです。そして真剣に頑張ってる姿ってなんかかっこいいじゃないですか。僕はそれを体現している選手でありたいと思いますし、その姿をみてレスリングってかっこいいなって思ってもらえたら嬉しいですね。

出身クラブの京都網野レスリング教室に凱旋した高谷

「スポーツはいやいややるものではない」。これを最後のメッセージとして残してくれた高谷選手。教育現場ではまだまだやらせる風習が根強いが、自らの活躍でそれを変えていきたいという思いを感じとることができた。


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今回、試合後のお疲れのタイミングにも関わらず快く取材を受け入れてくれた高谷選手。レスリングをメジャー競技にしたいという気持ちで受けてくださったのだと思う。取材をしていて感じたことは、「楽しいことじゃないとやっている意味がないよ」というメッセージだ。これはスポーツだけのことではなく、仕事でも同じことがいえる。常勝の脳の秘密はここにあったのだ。私自身、全てのことにワクワクを感じながら取り組めているだろうかと問いただすいい機会になった。

リオ五輪から3年が経ち、フリースタイル86kg級で東京五輪の切符をかけて9月の世界選手権に挑みます。私と一緒に、そんな高谷選手の応援をよろしくお願いいたします!

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半田 守
1990生、京都府出身。6歳からレスリングをはじめ、網野高校卒業後、専修大学へ進学しレスリング大学日本一になる。2018年から岡山県西粟倉村に移住し
自然エネルギーの勉強をスタート。同時にレスリングウエアブランドMAMOを立上げ、現役選手にエールを送り続けている。
MAMO:https://www.mamo-wrestling.com/
twitter:@handamamoru
note:”仕事つくる”をテーマに連載中!

読んでいただきありがとうございました。
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