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バラ好きの視点から読み解くさよならローズガーデン第4回~イギリスに咲くサクラ

ごきげんよう、はねおかです。
今回は「バラ好きの視点から読み解くさよならローズガーデン」の第4回として、サクラとその歴史をご紹介します。

サクラとは、バラ科サクラ属の落葉広葉樹の植物を指します。
バラ科の植物は幅広く、バラだけでなく、サクラにウメ、アーモンドなどが該当します。

ボケ(バラ科ボケ属 学名: Chaenomeles specios)
ユキヤナギ(バラ科シモツケ属 学名:Spiraea thunbergii)

サクラといえば日本というイメージがあります。
サクラは英語で「Cherry blossom」ですが、海外でも「Sakura」で通じるとか。
それだけ日本の象徴とされているのです。

サクラ自体は北半球に分布していますが、日本のサクラのような大きな花をつけるものではありません。
日本には鑑賞に適した大きな花をつけるオオシマザクラやヤマザクラがあり、そこからサクラを鑑賞する文化が確立していったとされています。

さよならローズガーデンではバラがイギリス、とりわけアリスの象徴であるのに対して、サクラは日本、とりわけ華子の象徴とされており、対になっています。

さよならローズガーデンの1巻147ページでは「イギリスにサクラはあるのか?」という華子の問いに「見たことがない」と返答するアリス。
「いつか一緒に見に行こう」と提案する華子。
「いつか、ね」と期待しない返事をするアリス。
という描写があります。

イギリスでは、コリングウッド・イングラムという人物が、欧州でのサクラの鑑賞文化に貢献したとされています。
彼は日本のサクラの収集家で、そのコレクションが日本で失われたサクラ(タイハク)の復活に貢献しました。
そんな彼の活動は19世紀後半のことで、作中の1900年より少々遅れてのことです。

では、イギリスにサクラは存在しないのでしょうか?

花としてのサクラはありませんでした。
しかし、サクラはあったのです。

セイヨウミザクラ。
つまりはサクランボです。

セイヨウミザクラはバラ科サクラ属の植物で、その果実は紀元前からヒトにより採取されていることが分かっています。
イギリスでは青銅器時代、つまり紀元前3000年代の頃のセイヨウミザクラの種が発見されたそうです。

アリスの言葉を言い換えるなら、「(花としての)サクラは見たことがない(が、果実は知っているかもしれない)」といった感じでしょうか。

サクランボはセイヨウミザクラとスミミザクラという品種が元になっていますが、後者の方は酸味が強く生食に向かないそうです。
例えば、日本では有名な品種「佐藤錦」は、セイヨウミザクラが元になっています。

カンヒザクラの実も食されていて、台湾では「山櫻桃」として食されており、沖縄では果実酒にしたとか。

さて、そんなセイヨウミザクラの花はどのようなものでしょうか?
生憎今はサクラの開花シーズンを過ぎてしまったので実物を見ることはできないので、Wikipediaのセイヨウミザクラのページから拝借しました。

セイヨウミザクラの花(出典:Wikipedia セイヨウミザクラ)

日本でよく見られるピンクやより赤みの強い花と異なり、白色なのが特徴です。
白いサクラは日本でも見られ、オオシマザクラが有名です。

サクラが日本を代表する花となったのは、平安時代からと言われており、それまでは花といえば唐から伝来したウメを指していたそうです。
有名な日本古謡として知られる「さくらさくら」は、筝の手ほどきの曲として作られたそうです(作者不明)。

サクラの満開の美しさは「雅」として。
サクラの散りゆく様は「諸行無常」として。
日本人の精神性を表しているとされています。
サクラの花言葉「精神の美」も、これらを表しています。

一方、フランス語でのサクラの花言葉は「Ne m’oubliez pas(私を忘れないで)」です。
散りゆく様を恋人の別れに見立て、このような花言葉になったようです。

さよならローズガーデンでは、アリスと華子はお互いに一時は離れてしまいます。
それでも、アリスは華子を、華子はアリスを、お互いに忘れることはありませんでした。

最終巻では、あとがきにサクラの木の下で佇むアリスと華子のイラストが掲載されています。
これは二人の未来が満開のサクラにようになったのか。散りゆくサクラのようになったのか。
願わくば、その花言葉のようにお互いを忘れることなくいてほしい。
そう思う今日このごろです。


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