マリみてSS「Stay at my side」

お題:久保栞(2023/06/07)

手を繋ぐと、相手の色々な感情が分かるような気がする。
緊張とか。
不安とか。
繋いだ手から相手の感情が流れ込んでくるようで。
そして、そうさせている原因の一つが自分でもあるわけだけれど。
「聖、緊張してるの?」
私はクスリと笑った。
「…栞は緊張しないの?」
傍目から見ても緊張している聖の顔。
これが本当の聖。
怖がりで。
臆病で。
寂しがりで。
「私に告白してくれたときを思い出して。そうしたら、きっと大丈夫よ」
薔薇の館のビスケット扉の前で、私は微笑んだ。

「ずっと、そばにいてほしいんだ」
不安と。
緊張と。
まっすぐな瞳。
そう言われて、私達は姉妹になった。
私は聖からロザリオをかけられた。
「ずっとそばにいるから、聖」
それ以上は望まなかった。
それ以外は望まなかった。
卒業までの間だけ。
ほんの少しでいい。
私が聖の隣にいられる理由になるなら。
ただ、そばにいるよ―

そう。
今日は、薔薇さま方に、私達が姉妹になったことを報告する日。
だから、聖はこんなにも緊張しているのだ。
「あれは、その、勢いというか」
視線を逸して頬をかく聖。
自分でも思い出して恥ずかしいのだろう。
「じゃあ、ロザリオ返そうか?」
私は意地悪そうに笑った。
「え…それは、嫌だよ」
聖は本気で困った顔をした。
「ずっと隣りにいてほしいって言ったのは嘘なの?」
その様子が可笑しくて、ついからかってしまう。
「ほ、本気だよ」
「じゃあ私は聖から離れない」
一度離れた手を、また強く握る。
聖は一瞬だけきょとんとした表情を浮かべると、私に微笑み返した。
「それなら安心だ」
一呼吸して。
繋いでいない片方の手で、扉を開ける。
「今日は、大事な話があります」

健やかなる時も。
病める時も。
あなたと私でいられますように―

あとがき
「もしも栞が聖の妹だったら?」というのは考えてしまいますが、あえて形にしてみました。
タイトルは機動戦士ガンダム水星の魔女11話の英語字幕から拝借しました。

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