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3コマ進む。

何年くらい前からだろう、飲食店以外のお店で、お茶を振舞われることが増えたような…

和菓子店で試食を兼ねて出されることはもともと多く、土産物店などでも時おりあったけれど、作家ものの細々した雑貨やヴィンテージの紙雑貨を扱う狭い店内などで入店直後に出された時など「え、今?商品にこぼしたらどうしよう」と戸惑う場合も。3人連れで店に入って全員にお茶を出され、誰も何も買わずに店を出るのも気が引けて「自分が代表して何か一個買うか〜」となることもあれば、疲れているときは一息つけてありがたいと思ったりもするし、お茶を用意している様子に気づいて遠慮したり、その時々ではあるけれど。

この前、女性二人で営む路地裏の創作菓子店(3坪ほどの店内)で、会計と包装されるのを待つ間、カウンター席で中国式のお茶をいただけるというので席に座ったところ、隅の席に先客の男性がいて、手持ち無沙汰だったのでなんとなく「何のお菓子を買われたのですか?」と水を向けると「いやぁ、まだ…」と曖昧な返事が。その後お店の女性との会話から、彼は商品が目当てというより、そのひっそりした空間で感じの良い女性二人とのカウンター越しの会話を楽しむのが目的でやって来ている(数回目)と知りました。

「大変だなぁ…お店ってのは」私は勝手に不安になっていました。

客として、買う前にお茶を出されたり、時には席を用意されてお菓子付きで出てきたらもう「口にした以上、ここを出て行けない…」と、黄泉の国の食べ物を口にしたイザナミの気分になってしまうんですが、一方お店側としたら、事前にお茶を出すことで客が買い物をする率が上がったり、事後におもてなしをすることで良い印象を与えるなどの効果があるのかもしれないけれど、前述の男性のように、お茶やお菓子=長居、という方がいても不思議ではないなぁ。

ふと思い出したのは、自分が昔何度か個展や二人展などをした時に会った、〈ギャラリーおじさん〉です。

ギャラリーおじさんとは【展覧会(個展)に来て延々作品の批評をしたり、作品をあまり見ないで業界のことや自分がいかに目利きであるかなど持論を展開し、数時間その場で話し続ける見知らぬ男性】のこと。会場に来客用のテーブルと椅子を置いてお茶やお菓子でおもてなしをする方式をとった場合、どなたも数十分(〜1時間)歓談して、頃合いを見て(大抵は次の来客に気づいて)席を立つのが暗黙の了解なのだけれど…

知り合いのイラストレーターさんも心当たりがあるそうで、「その人が展覧会場にいてずっと喋り続けて、自分はある程度メジャーな仕事をしているせいかなんにも言われないのに、もう一人の友人のことを酷評して、このレベルではどうのと上から目線でああだこうだ説教されて何時間いるのって感じで、最後は喧嘩腰になって帰ってもらった】という話を長文メールでもらったことがありました。

一般生活の上でも飲食店の方にたまに理不尽に(食べ方や注文の仕方を)叱られたり、各種訪問や電話でのセールスに悩まされたり、詐欺まがいの行為に遭ったり、どんな世代・立場であれ何が起こるかはわからないので、「長居するお客さん」「思いもよらぬ態度の訪問者」などにフレキシブルに毅然とした対応をしたり場合により飄々と受け流すなど、常に心がけることは必要だなと思っています。

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そんなわけで前々回の「1コマ進む」、前回の「2コマ進む」の続きです。新たな仕事場でデザインの作業をしながら一角にギャラリーショップを設けるにあたり、一人でいる店(仕事場)にどんな方が来るか分からないことへの不安が一番のネックでした。

そこで、店に入るときには少し躊躇する敷居の高さを感じさせるよう、作品や外観にある種の緊張感を持たせることと、お客さんにお茶は出さず椅子やベンチもおかないこと、そして、ある程度観光地か、どこかキリリとした緊張感をたたえたお店が界隈にある場所、ほどよく人の往来がある風通しの良い場所を選ぶなど、いくつかのポイントを抑えておきたいです。

そんな外側の話より、本来オープンに向けて作品を用意するのが先ではありますが。算数で難しい文章問題より先に計算問題を解いておいた方が後でゆっくり集中して取り組めるのと同じで、ポストカードなど手軽に作れる紙雑貨の絵柄の候補を今のうちに作っておこうという考えのもと、noteではヘッダー画像に載せる形でコツコツ進めています。なのでこんな風に書いておきながら、最終的にここではお店の宣伝や告知はしない予定です。

今回のヘッダー画像は、ピンクのものたち。健康雑貨に少し携わっていた頃、ダンベルやツボ押し器、風呂用枕など、〈ピンクにすれば売れる〉という傾向からフューシャピンクのものをよく目にしていて、いっときピンクに胸焼けを起こしていたこともありました。

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使い方ひとつで安っぽく下品になったり、この上なく幸福なイメージをもたらしてくれるピンクは「時と場合と用途によってよくも悪くもなる」ところが面白いです。

自分のお店も、やり方次第でつまらなくもなれば面白くもなるだろうな…誰か一人でも「いい」と思う人がいればそれはやった甲斐があるとは思うのだけれど、その「誰か」の前にまず、自分の過去や未来に恥じぬようなものにしたいものです。

【お店のイメージ:その2】

1.何も買わなくても立ち去りやすく、またフラッと訪れたくなる気楽さのある店にする。

2.入るのに少し勇気と冒険心がいり、何も買わずに出ることには少し引ける(気がする)店にする。

[new]3.作品や店構え、ギャラリースペースにある種の緊張感を持たせる。店内外にベンチなどを置かない。お茶を出さない。

[new]4.ある程度は観光地か、感じの良いお店が界隈にある場所、そこそこ人が行き来する風通しの良い場所を選ぶ。

次回はお店のロゴや内装、外観について。