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中が見えない。

ラッピングされたプレゼントをもらうととても嬉しいけれど、それを開けながら「自分はうまく喜べるだろうか」と、いつも少し焦ります。

〈わ〜、こんなのが欲しかった、という感激をそのまま表現できるか〉というのと、〈期待値が無限大だったために、中を見てほんの少し気持ちが盛り下がったことが顔に出ないだろうか〉という両方の不安があるというか。中が見えないって、お楽しみでもありつつ罪なことです。

ずいぶん前に虫歯治療をした部分に多少の違和感があり、先日歯科衛生士さんに伝えると、「レントゲンでも映っていないので外からでは原因は分からないですね...よほど痛いとか不自由がある場合などは一度開けて先生に確認していただきますが...」と言われました。とはいえ中を開けてみて、悪い場合には虫歯治療再開、問題がなかった場合にも被せ物を再発注するので4万円(自費)は消えるという、ハズレくじばかりの話のようなので、「違和感、ひとまずは気のせいかもしれません」で終わりました。

中が見えないといえば、うちのベランダによく来る猫が夜に悲痛な鳴き声をあげるので、寒さしのぎに不要なダンボールなどを使って作った猫ハウス。ベランダに設置したら、翌々日頃から気に入って、しょっちゅう中で過ごしているようですが、当初は遊び心を入れてこういうイメージだったのだけど、

寒さをしのぐのが最優先なので、窓を一度くりぬいてから全部塞いでダミー窓にしたので、猫の「在・不在」が外からは分からず、洗濯物を干す時やちょっと窓を開けた時、または気配がないので猫ハウスの中を見ようと覗き込んだ時などに猫が飛び出してきたりすると心臓に悪くて、「中が見えないって不便だなぁ」と、ここでも...

家にあるキャビネットや食材用保存缶についても同じく、「中が見えない」不自由さがあります。小引き出しが好きで、売っていたらつい欲しくなるし、長年棚に置いてインテリアの一部になってはいるものの...引き出しに合うサイズのものを入れるとなると、大したものは入らず、先日掃除がてら中を見たら、ポケットティッシュや貰い物の携帯ストラップやキーホルダー、誕生日ケーキ用のロウソクの余りなどが入っていました。それらを必要なときに使っているかというと、入れたことで得心して結局何年も使っていない。雑貨ならまだしも、食材の缶の場合、賞味期限切れがしばしば起こり、粉物の場合、缶の中で虫がわいたりして怖いです。

それでも「引き出し」に関して言えば、それ自体に魅力があって、チョコレートなどが3段ほどのボックスに入っている構造は、一粒ずつ食べようとするときに毎回、宝石箱みたいなそのボックスを開けたり取っ手をつまんでそっと引き出す行為にトキメキがあるんだろうなと、チョコよりラムネ菓子の方が好きな私でも思います。

他にも、お正月におみくじを引くときに引き出しから一枚ずつ出されるのは何やらありがたいですし、漢方薬局などで見かける薬箪笥も絵になるし。昨年の夏頃、病気ではないのに体調があまりにも悪いので、生まれて初めて〈昔ながらの漢方薬局〉を訪ね、私としては自分の諸症状に合った生薬を、引き出しから取り出して調合されるのを期待して行ったのです。鹿の角とか朝鮮人参だとかサルノコシカケなど...標本を色々見られるんだろうなと。何しろ江戸時代にタイムスリップしたような空間なので、そこで想像もつかない素材で私に合ったオリジナルの煎じ薬を処方してくれるだろうと。

そうして初めて入った薬局の相談コーナーで、背後の薬箪笥を見ながら、あれこれ事細かく症状を伝えた私に対して、白衣の薬剤師さんは席を立つこともなく...

上の絵のテーブル右にある、オススメの生薬製剤(生薬のシロップ)と生薬滋養強壮剤(緑のエキス)の瓶を手にとって曰く、結局は、どんな栄養素も血流が悪いと体の隅々にまで届けられないし、まずは血流を改善して冷えを取ることが大切ということで、それらに効くのがこの二種類の商品なのだと。

その後半年以上飲み続けて体調は良好なので、確かに効果はあり、薬局の方には最善策を授けてもらったとは思うんですが、それでも...どんな体調の人にも万能のドリンク二種類を薦めているのではと思うと、「薬箪笥の引き出しはダミーだったの?もはやインテリアなの?」とツッコんでしまった気持ちは、ここで吐き出させてください。合理的で良い提案だっだと身をもって理解しつつ、でも神秘の引き出しも開けて見てみたかったなと。

それにしても、中が見えないことに対していろいろ書いてきて、今思うのは、ポリプロピレンなど半透明素材のケース類で「見える収納」をこれだけ世の中に浸透させた『無印良品』(実際にMUJIが担ったかどうかは不明ですが、個人的な印象では)って、すごいなぁ。...という唐突な着地点なのでした。