おとなの読書感想文3

『バベル九朔』万城目学

読んだのが数年前なので内容云々はあまり語れないのですが、久々に万城目学だ!と感じた作品でした。初期の『鴨川ホルモー』『鹿男あをによし』はすごく面白くて好きでしたが、『プリンセス・トヨトミ』『偉大なる、しゅららぼん』『とっぴんぱらりの風太郎』あたりが、ううーん(--;)と感じていました。たぶん面白くないと感じていたのは設定に無理があるように感じたからだと思います。鬼を操ってのバトル、しゃべる鹿。それが違和感なく読めた初期作品に対し、それに囚われてしまった作品群というか。『バベル九朔』はそのもやもやした作品群を突っ切って出てきた作品だなと感じます。読めば読むほどありえない現象だらけなのですが、だからこそ小説って楽しい!のです。物語に引き込む強さ、スピードも速いです。ハードカバーの存在感は辞書並の分厚さで結構圧がありますが、大丈夫。あっちゅーまに読めます。

『コンビニ人間』村田沙耶香

アスペルガー障害の主人公。そうは書いてないけどきっとそう。この感想文を書く前に少し評論などを読んでみたけど「現代的なんちゃら~」とあり、社説的な作品ってことかな。僕はアスペルガー障害当事者だから「これを読んで健常の人はどう感じるんだろう?」と思いました。変わり者、偏屈、扱いずらい、ロボット。いくらでも言われる気がした。主人公は生きられる場所があって良かったと思いました。周囲は理解してくれないけど、少なくとも自分が自分で居られる場所を確保できているって大切なことだから。

ちょっと話は変わるかもしれませんが、Twitterで出回っている指示だしに関するイラストや、企業における社員の調子を図るお天気マークの取組みなどをご存知でしょうか。

これは健常者の人達にも受けているのですが、僕は障害者職業センターで習いました。健常者と発達障害者の境目というのは本当になく、ボーダーであることに気付かされます。

『熱帯』森見登美彦

おかえりなさい、もりみー。と言いたい出だしだったのですが、途中でぐにゃりと歪んでしまったような気がしたのはおそらく僕が苦手とする時代設定が出てきたせいです。僕はどうしても戦争で満州に出兵していた場面が出てくると内容を一切受けつけません。なんのトラウマがあるのか知りませんが、何も入ってこないのです。それ以外はとても良かった。『千一夜物語』は何かといろんな作品に出てくる古典なので、読書を深めるためにもそろそろ一読したいと思いました。森見先生の作風は「腐れ大学生」と「ミステリー」の二面性があります。今回は後者でしょうか。しかし、あ、好きな森見先生だ!と感じたのは達磨です。『夜は短し歩けよ乙女』などの作品でもその愛らしいフォルムとキャラクターの達磨は森見節と思っています。華々しいデビューから働き過ぎで潰れて大変だった時代をエッセイなどで存じておりましたが、落ち着いて熟成されてきているのかなと感じました。次回作も首を長くして待ちたいと思います。

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