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健康診断という苦行が今年も終わった

今年もやって来たよ、健康診断という苦行。
予約する時はなんとも思わない。「よし、サクッと行って来よう!」なんて思う。でもこれが健診前々日くらいになると、なんとなくじわーっと気持ちが重くなる。

午前中に検査する場合、前の日は夜9時以降は何も食べてはいけない。
お風呂上がりにちょこっとシュワシュワしたお酒を飲んだり、冷たいジュース飲んだりもできないし、寝る前のアイスも楽しめない。寝る前のご褒美タイムが1日お預け。
もちろん当日の朝も何も食べてはいけない。朝起きた時の楽しみ、美味しいカフェオレだって飲めない。

こんな、血糖値が下がった状態ではるばる健診会場へ行く。あぁ、もう嫌だ、美味しいコーヒー飲みたい。コーヒーと一緒に焼きたてのクロワッサン食べたい。その後バニラアイス食べたい。

健康診断会場は繁華街近くにある。賑やかな深夜を終えた後の朝の街は独特の匂いがする。先に景色だけ変わって、まだ空気が深夜の喧騒を引きずっている匂い。私はこの匂いが苦手だ。

会場に着いて受付を済ませると着替え。ここで男女兼用の、そこはかとなくダサい服に着替えなくてはならない。一つ一つのロッカーに「着替えた後はTシャツやブラジャーは着ないでください」と張り紙がしてある。上半身は素肌に健診着を着てくださいってことなんだろうけど、この現実に直面する度に「こんなことなら女性専用の検診クリニック予約すればよかった」と思う。大企業勤めの時は女性専用の会場に行っていた。健診着も分厚かったし、体が冷えないように靴下も置いてあった。でもなぜか予約が面倒で、毎年同じ、楽に予約できるところを予約してしまう。仕方ないよね、人間だもの。

そうだ、みんな人間だもの。このフロアにいるおじさま達も皆人間だもの。そう思いながら女子更衣室を出て会場に繰り出す。と言っても血糖値はダダ下がっている。早くソファーに座りたい。へちょん、とソファーに座って最初の採血で呼ばれるのを待つ。

意外と早く名前が呼ばれて採血される。既にヘロヘロなのに血も減ってヘロヘロだ。慣れてはいるけど、針が刺さるのは当然痛い。あぁ、もういやだ、お家に帰って楽なお気に入りの服を着てご飯食べて寝たい。

会場は1フロアで収まっておらず、何度も階段を上り下りする。最初の階でいくつか検査したら階段で1つ上の階に行って検査して、また下の階に階段で降りる。血糖値は下がっているしさっき血も抜いた。心を無にして昇り降りする。

検尿は紙コップを渡される。採取する時に採尿カップから外れたら大事故だ。カップの底には的を外さないように申し訳程度の印刷がしてある。血糖値が下がっていて血も抜いて階段の昇り降りをしてヘロヘロでもここは集中しなくてはいけない。こんなショボいタイミングで「男性に生まれてたらよかったな」なんて思う。

おなかのエコー取るときに塗られるあのネチョネチョしたジェルも苦手。検査が終わった後に「これで拭いてください」ってタオルをくれるけど、若干ネチョネチョしたまま素肌に検査着を着る。丁寧に拭きたいけど、なんとなく「早く服着ろや」って思われるんじゃないかと思ってさっさと済ませる。お風呂に入りたい。

メインイベントはバリウム検査。
機械に乗ったら駄菓子のラムネの粉みたいなのがパンパンに入った容器を渡される。そして見るからに水に見えない液体の入ったコップを渡されて「水で流し込んでください」「ゲップしないでくださいね。しちゃったらお薬追加です」と言われる。ここからゲップ我慢一人耐久レースが始まる。レース脱落の罰ゲームはあのラムネの粉の追加だ。

そして紙コップに入った白い液体、バリウムを渡されて「飲み終わったら検査スタートです」と言われるのだ。つまり、今私が手にしているこの白いどろっとした液体を飲み干さないと始まりもしないし終わりもしない。何かの儀式が始まる前のような気持ちだ。このヨーグルト風味の味付けが苦手な人はどうしているのだろう?・・・なんて思いながら食べ物とは縁遠い、どろっとした謎の物質を流し込む。なかなか飲み干せない。そして飲み物をごくごく飲んでいるところを人に見られているのは恥ずかしい。飲料のCMに出てる人はすごい。こんな恥ずかしい姿をたくさんの人に見られながら、何度も撮り直しされているに違いない。

飲み終わったカップを置いたら検査スタート。垂直に立っていた板が傾いて並行になる。板に背を向けて立っていた私は仰向けになる。仰向けになったと持ったら「ぐるっと2回、回ってください」と言われて、硬い板の上でぐるっと2回転する。始まった。何回くらい回るんだっけ。言われた通りに体を傾けたりなんかしながら「もう回らなくていいんだっけ?」と思っていたらまた「回ってください」と言われる。これが繰り返される。合計10回くらい回らされた気がする。血糖値も下がってるし血も抜かれてるし階段の上り下りだって何度もした後だし、そんな状態であの嫌なジェルも検尿もこなした後だから正直しんどい。この板の上でぐったりうつ伏せで寝たい。いっそのこと、今乗っているマシーンが全自動回転マシーンになってほしい。この板もさっきまで寝そべっていたと思ったらまた垂直に戻ったり、また倒れて横になったり、頭の方が足より下になるほどに傾いたりして落ち着かない。私は心を無にして板から落ちないように手すりにしっかりしがみつく。

バリウムが嫌なら胃カメラ検査にするという選択肢もある。しんどいだろうけどちょっと気分転換できるかもしれない。でも予約が取れない。9:00にネット受付開始で9:00に操作しても予約が取れない。人気のライブチケットより取れない。だから私は毎年バリウム検査を受け続けている。

バリウム検査で「検査終了です」と言われた時のあの安堵感といったら。部屋から出て洗面所の鏡で自分の顔を見る。口にバリウムが付いている。あぁ、短い距離だけどこんな顔でここまで歩いてきちゃったのか。ちょっと恥ずかしい。こんな顔じゃ確実に外は歩けない。

身長体重、視力聴力はなんてことはない。ただ、眼圧測定はいつまで経っても好きになれない。眼球にプシュッと風を飛ばされてテンションが下がる。

げっそりしながら淡々とこなしてやっとこの日の検査が終わる。
あのそこはかとなくダサい検診着ともこれでお別れ。着替え終わってまた受付に行って、自宅で採取する検便キットと同じビル内のレストランでのランチ券を受け取る。

終わった・・・。
無料ランチ券を使ってご飯を食べる頃にはこの一連の苦行のことを忘れかける。15時間以上ぶりの食事。あぁ、なんとか乗り切った。お疲れ様、私。周りのお客さんは健診を終えた人達ばかりだ。そしてどんどんみんなご飯のおかわりを頼む。そうよね、こんな血糖値ダダ下がりの状態じゃ午後からおしごとできないものね。でもみなさん気をつけて、急に血糖値あげるとそのあと急にお腹空いちゃうよ。

でもまだ終わってはいない。そう、体の中にバリウムが残っている。バリウム検査直後から体が「消化できる有機物以外の何かが入ってるよ〜」と違和感を訴える。これが下から出ても安心してはいけない。嘘みたいに流れにくい。だからもし職場や公共の場所で出しちゃって、これがさらに水流弱いトイレだったとしたらもう地獄。こんなん残したまま個室出ていけないじゃない?100回くらい流して、やっと視界から消えてもらう。こんなことしてたら「なんか個室から流水音ずーっとするけど何があったん?」なんて思われてるかもしれない。

そして我々には宿題がある。検便だ。こんなに自分が出したものをまざまざと見ることってそうそうない。正直辛い。人類の進化の過程で、ここ数十年で急激にトイレ事情は清潔になって来たではないか。水洗、自動流水、消臭、お掃除もカンタン。いや、進化したのはトイレだけではない。よく考えたら、検便の仕組みも進化したじゃないか。これが何十年も前は、出したものをそのままマッチ箱みたいな小さな箱に入れて出してたんでしょ?出す方も回収する方も、検査する方も大変だったに違いない。それに比べたら、プラスチックの細い棒で何度かツンツンするだけの儀式に変わったのはどえらい進化なのでは?実は気づかないところでこんな、黒電話がスマホに進化するようなどえらい進化がそこかしこで走っているに違いない。願わくば、次は朝に好きなもの食べても健診できる時代になってほしい。いや、やっぱり全自動バリウム検査マシーンだ。

こうして無事に今年も健康診断が終わりました。結果を待つのみ。このおかげで私の健康は維持されてるに違いない。ありがたい仕組みですよ。でもね、憂鬱なの、ちょっとだけ。

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