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日本から海外のアートフェアに出展するまでの記録(その2)M.A.D.S. Art Galleryさんでの展示

前回の記事を書いてから1年以上経過してしまいました。筆が遅くて本当にごめんなさい。
公開してから、色んな反響をいただき、時には個別に色々と相談もいただき、私なりの経験をお伝えしてきました。その度に「あぁ、ちゃんとnoteの続きを書かなくては」と思うものの、なかなか取りかかれずにいました。

理由は二つです。

一つ目は、コロナ渦を一通り経験する中で、これからも自分自信が絵を続けていく自信を一時無くしていたからです。
多くの画家が兼業でやってる中、良い絵を描き続けるには収入の確保は不可欠です。そして画家としての活動には直接目で見てもらう、人に集まってもらう場での展示が必要です。でもここ数年は収入源に何度も危機が訪れたり、展示の場に人を集めることさえ難しかったりで、「もう、できないのかな」と、何度も心が折れていました。自分のことを画家と名乗って良いのかさえ分からなくなっていました。
それがやっと、最近になってやっと落ち着いてきた。やっと、「やっぱり続けるんだろうな」と自分の中で思えるようになった。

そして二つ目の理由、それは、これまで海外のアートフェアに参加したもののそこで絵が売れることはなく、次に自分が何をやってくかが見えなかったからです。
こういう海外のアートフェアに一度参加して売れなかったら参加するのを辞めた方がいいんだろうなと思いながらも何回か参加しました。でもさっぱり売れず。まぁ、そうだよね、本人が現地に行って営業しないんだから。そうこうしているうちに今年はパリのアートフェアでに参加することが決まった。ひとまず、「パリのちゃんとしたアートフェアで展示したい」という夢が一つ叶う。これで売れなかったら、もう海外での展示は一旦最後にしようかな、地道に日本でやろう。気が変わるかもしれないけど、一旦そういう結論を出せた。

長い言い訳は以上です・・・。
では本題に戻ります。

はじめに:M.A.D.S. Art Galleryさんで展示した感想

前回の記事ではM.A.D.S. Art Galleryさんでの展示を決めたところまでを紹介しました。詳細に入る前にまずはM.A.D.S. Art Galleryさんで展示した感想をお伝えしたいと思います。
一言で言うと「やってよかった」です。
もう少し細かく書くと、こんな感じ。

  • デジタルキャラリーなので絵の輸出手続きが無いところが楽

  • 送るもの送ったら後はキュレーターさんが全部やってくれるから楽

  • ちゃんとレポートも作ってくれるのに出展費も比較的お安くてお手頃

  • でもこの展示から絵が売れることはなかった

  • この展示を見た別の海外ギャラリーから声がかかったからその点は展示してよかった

最近は出展経験のある方が日本でも増えてきたようですが、今でもM.A.D.S. Art Galleryを日本語で検索すると予想検索で「怪しい」と出ますね。

「怪しい」って出る・・・

私が出展した2021年当時はここで出展している日本人も少なく、ヨーロッパ在住の友人知人に聞いても情報が得られず、私もすごく怪しんでいました。
ですが、出展した後の感想は「出してよかった!」「ここはぼったくりではない!」でした。

では前回の続きに入っていきます。

1)まずは条件の確認から

Instagramから届いたメッセージに返信し、自分のメールアドレスを伝えると「これはイタリア語か英語からGoogle翻訳したんだろうなぁ」と思われる不自然な日本語のメールがMADSさんから届きました。翻訳された日本語はおかしかったですが、
・展示のコンセプト
・展示の詳細
・費用について
・FAQ
がきちんとPDFでメールに添付されていました。英語版だけのものもあったり、これまた「Google翻訳したんだろうなぁ」と思われる不自然な日本語版があるものもあったり。
条件は添付されていた資料に詳細に、こんな具合に詳細に記載されていました。

ギャラリーがやること
・ミラノのギャラリーでデジタル展示すること
・公式WebサイトやSNS等でプロモーションを行う
・公式Webサイト上に作品と作家紹介ページを作る
・作品をキュレーターが批評し、編集した作品ん解説文を作る、等

作家が用意すること
・展示するすべての作品の高品質な写真(JPEG形式)。写真は作品全体を表すようにトリミングされていること(背景なし、イーゼルなどのサポートなし)。
・作品に関する情報
・作家紹介文

金額は当時1作品出展で250ユーロ、3作品で500ユーロ。
しっかりと条件が書かれていたので安心できました。契約書を締結するわけではなく、メールで「参加します」と返しました。

余談ですが、どんな企画に参加するにせよ、契約書の内容確認、契約書が無い場合はサービス内容や支払いについての確認は事前にしっかりしないと損します。オファー文面には良いことだけを書いて作家にとって損になることがはっきり提示されていない、なんてことがあるんですよね。
昨年、画家のプロモーションサービスを行なっているとある日本の会社からWeb個展や画廊や百貨店での展覧会企画などの「特別企画」の招待状をもらったことがあります。画廊や百貨店での展示会企画なんて有り難い話じゃないですか。ですが、添付されている資料に手数料の有無や企画の詳細が書かれておらず。よくよく問い合わせてみるとこれが

・手数料は毎月5,000円。初回は2年間解約不可(つまり合計12万円払わなければならない)
・プロモーションはするが特別企画参加者全員が画廊での展覧会開催が実現するわけではない。

ということでした。なんだそりゃ。12万円払った分の効果は保証できません、ってことか。12万円あったらMADSで3作品展示してもお釣りが出る。そう考えてお断りしました。

2)作品選定

参加の意思を伝えたら、作品選定です。
どの作品を展示してもらうか、キュレーターさんと何度もメールの往復をして決めるのでここでもDeepLが大活躍です。

それと、もう一つ「これは用意しておいて良かったな」と思ったのが、自分の作品一覧を紹介できるポートフォリオサイトです。
例えばこういうもの。

今でこそ自分のホームページを作っていますが、当時はBASEに作品写真を全てアップしていました。たまたまそうしていたことで、キュレーターさんにリンクを送って「これが主な私の作品です」「この中から選びたいです」と言えてラッキーでした。

3)必要なデータの送付

展示する作品が決まったら、その作品の高解像度の写真を送らなくてはいけません。この写真がWebにも掲載され、カタログにもなる。正直、Web上の展示企画に参加するのはスマホしか持っていない人は厳しかもしれない、と思いました。作品を高解像度で撮影して、取りミングした写真データを送付しました。
他にも自分の自撮りの写真、住所などの個人情報も送りました。

あくまで私の場合こうだった、という話なんですが、急に先方から「●日までにこれ用意して送って!」という連絡が来て焦ることもしばしば。急に「エンジニアチームが作業するから●日までに作品写真送って!」みたいな。海外で展示する場合は最初に「いつまでに何を用意したらいいか教えて」と聞いておいた方がいいかもしれない。
作品写真の用意は、メールで連絡受けて慌ててフォトショップとかで加工しました。

4)さぁ、展示

万全で臨んだ展示開始の日。海外で進んでいることなので、Webで確認できるまで「詐欺だったらどうしよう」とビビっていました。

でも無事ちゃんと始まりました。

この画像は過去の活動履歴としてMADSのホームページに現在掲載されているものですが、イベント中は目立つところに作品や作家の一覧が掲載されていました。

こちらのページに今でもアーカイブ情報が残っていますし、私のアーティスト紹介ページも残っています。

作品とアーティスト紹介のカタログも作成されまして、PDFデータと動画もアップされていました。

カタログ表紙


かっこいい作品解説


一つ一つの作品はこんな感じで紹介

作品解説も、和訳するとこんな↓感じで、なんかよく分からんけどかっこいい。ここまでちゃんとした解説は作ってもらえるとは思ってなかった。

何にでも慣れる。それが人間というものだ。瞬間的な変化や突然の変化に順応し、狭いアパートを巣にし、仕事や子供のためにサーカディアンリズムを乱し、昼食を食べ忘れ、劇的なショックには生活を続けることで対応し、スポーツでは肉体的な限界を超えて自分を追い込み、喪失感とともに生きることを学び、新しいことをあまり摩擦なく受け入れる。私たちはおそらく、地球上で最も適応力のある種なのだ。呼吸を奪われたことによる呼吸パターンの変化といった些細な変化から、引っ越しや喪失、新しい人間関係など、より複雑で入り組んだ変化まで、変化は常に存在するものだ。ショーペンハウアーは「変化こそ不変の唯一のものである」と言った。私たちはしばしば、人生のさまざまな領域で達成したバランスを保とうとする傾向があるが、内的または外的な変化を受けて、再適応する必要性を誰もが経験している。したがって、変化は人間にとって不変のものであり、より広い意味では私たちの現実にとっても不変のものである。それは不確実な段階であり、歩くべきか立ち止まるべきか、あらかじめ確立された習慣の静寂の中でもう少し待つべきかどうかがわからない瞬間である。(以下略)

きちんとWebで展示されていて、それだけではなくちゃんと自分の作品を解説してくれていて、参加してよかったな、と安心しました。さらに、このイベント中に私の作品を見たスペインのギャラリーさんから「展示をしないか」と連絡をもらえたので私的には満足でした。
本当は作品が売れればいいのだけれど、Webイベントやデジタル展示なので、プロモーションしてくれていると思えばいいのかもしれないですね。

5)お支払い

お支払いはPaypalでした。イベント終了後にMADSのキュレーターさんから「Paypalで支払って」と連絡が来て支払いの処理をしました。

6)今後もMADSで展示したいかどうか

Instagramなどで作品を発表していると、一度展示した後もMADSのまた別のキュレーターさん達から「展示しないか」と連絡をもらうことがあります。キュレーターさん同士バラバラに動いていて、過去展示に参加していたと知らずに連絡くれることが何度かありました。その度に「どうしようかな」と悩むこともりましたが、結局は2回目以降の展示はしていません。

個別に「MADSさんから声がかかったのだけれど、参加していいものかどうか悩んんでいる」という相談の連絡をいただいた方には大抵「1回くらいは腕試しのつもりで参加してもいいんじゃない?」とお答えしています。ただ「1回展示してその後特に何も起こらなかったら、1回でやめて少しの間様子を見た方がいい」ともお伝えしています。
私はたまたまMADSさんで展示した後に次に繋がりましたが、一度展示してそうならなかった場合や、前回展示した時から自分の腕がそんなに上がってないかな?と思う時は参加費と手間を無駄にしてしまう可能性があるので慎重に考えた方がいいと思うのです。
それと、これはMADSさんに限らず海外のギャラリーさんは皆そうなのですが、画家本人が現地に行けない場合はそこから自分でお客さんを開拓していくことができないので、宝くじを買ったような気持ちで結果を待たなくては行けないもどかしさもあります。もどかしい気持ちを抱えたまま、次のチャンスが広がる自信も無くお金使うのなら勿体無い。

7)おまけ

そうそう、お金といえば、このMADSさんの金額が、その後の良い判断材料になりました。

繰り返しになりますが、MADSさんでは
 1作品を出す場合・・・250ユーロ(約34,000円)
 3作品を出す場合・・・500ユーロ(約79,000円)
でした。デジタルギャラリーだとしてもこの金額できちんとHPも残してくれて、カタログも作ってくれました。

作家をやって作品情報を発信していると、「うちに登録しないか」「こんな企画があるんだけど参加しないか」という話を国内からチラホラいただくことも出てくると思います。中には内容の割に法外な手数料を取るぼったくりのような話もあります。
これを読んでいる作家の皆様が色々と判断しなくてはならない時に、MADSさんの金額が参考になれば幸いです。


次回以降は、MADSでの展示を見て連絡をくれたスペインのギャラリーさんとのやりとりや、展示までの準備などなど、ご紹介していく予定です。

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※公開後も都度読み直して加筆・修正します


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