日本に対外情報機関は必要か?(その2)
前回に引き続き、このテーマについて大森義夫氏著の「日本のインテリジェンス機関」(文芸春秋社刊、以下「著作」)を題材にしてお伝えしたいと思います。
1 そもそも対外情報機関とは何か?
著作には
日本の情報組織を概観しておこう。
として
合同情報会議
と称する情報連絡会議のことが書いてあり
大森氏は
内閣官房副長官が主宰し、内閣危機管理官のほか内閣情報官、公安調査庁次長、防衛庁(※)防衛局長、外務省国際情報統括官、警察庁警備局長が出席する。 ※防衛省になる以前の組織 (中略)この会議の出席メンバーが日本の情報コミュニティを構成している、というのが一応の見方である。ただし、日本では、国の安全保障に関する情報活動の内容が定義されていないから、経済官庁を含めて情報担当を名乗る省庁がばらばらに多数ある、というのが実態である。(中略) 日本は足元を見られている。
と日本のインテリジェンス・コミュニティは
内閣情報調査室、公安調査庁、防衛省、外務省、警察庁
により構成されていることを述べられています。
他方で、この日本のインテリジェンス・コミュニティを構成するそれぞれの組織はどれ一つとっても
米国のCIA
英国のMI6
ドイツのBND
フランスのDGSE
イタリアのAISE
カナダのCSIS
などG7各国に必ず存在している対外情報機関としての機能を有していないことから大森氏は
米国のCIAなどは日本から入れ替わり立ち替わり「インテリジェンス代表」が来訪するから当惑もするし、ほくそ笑んでいることだろう
と記述されています。
筆者(小職)は、「9.11米国同時多発テロ事件」発生時に警察庁警備局で勤務した際、当時在京の外国大使館に勤務する対外情報機関のメンバーと接触して情報交換する機会を多数経験しておりますが、相手国の情報機関員から大森氏が述べられている内容の愚痴を聞いたことがあります。
上記のインテリジェンス・コミュニティは、我が国の国益を考えて情報収集或いは友好国との情報交換を行い、結果を内閣府に報告するという機能を有しておきながら、その活動が自省(庁)の利益(省益)優先に帰するところが「まとまりのない」という評価と結果しか残していないのが実態です。
ゆえに、この激動の時代には日本に対外情報機関が絶対に必要なのであります。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
次回からはビジネスとインテリジェンスについてお伝えしたいと思います。
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