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海草の下には砂糖がたんまり?!

江戸時代では高級品と言われていた「砂糖」は、現代では身近な生活必需品となり、あらゆる食品に使用されて、僕ら日本人の食生活を豊かにしてくれている。砂糖は主にサトウキビやてん菜を原料とし、これらを精製して不純物を取り除くことで作られる。日本では、国内消費量の3分の2を輸入の原料糖から、そして残りの3分の1を北海道のてん菜と沖縄・鹿児島のサトウキビから作っている。このように、これまで人類は陸上の作物から砂糖を作り出してきた

ところが、ドイツの研究チームによると、これまで人類が気付いていなかった意外な場所にとんでもない量の砂糖が眠ってるらしい。その意外な場所とは、海の中で波に揺られる草の下。つまり「海草の生えた海底」に大量の砂糖が眠ってる可能性が出てきた!

「Posidonia oceanica」という海草は、地中海の固有種であり、時期になると実を付けるため、イタリアでは「海のオリーブ」と呼ばれている。そして、海底を覆うように群生し、まるで草原のように生い茂る。本研究によって、P. oceanicaの根っこ周りの海底では一般的な海底で観察された濃度の約80倍の糖が蓄えられていることが明らかになった。そして、海草が世界の沿岸地域の約50万㎢に渡って生えていることから、最大でコカ・コーラ缶約320億個分の砂糖(約130万トン)が海底に蓄えられている可能性が示唆された。

海草は光合成をする際に糖を生成し、ある程度の明るさでは自身の代謝と成長のために生成した糖のほとんどを使ってまう。せやけど、昼間や夏場など太陽の光がたくさん降り注ぐときは、調子乗って使うよりも多くの糖を作ってしまう。そして、余った糖(スクロース)は根っこの周りの土壌(根圏)に放出される。本来なら放出された糖は微生物に速攻で処理されてまう。ところが、P. oceanicaはコーヒーやフルーツに含まれる「フェノール化合物」を分泌して微生物の代謝を遅らせとることが明らかになった。これによって、彼らの周りの海底では糖が分解されずに多く堆積してたってわけ。

海草はブルーカーボン(海洋生物の作用によって大気中から海中へ吸収された二酸化炭素由来の炭素)の重要な吸収源の1つであり、同じサイズの陸生の森林の2倍の量を35倍の速さで吸収できると考えられている。特にP. oceanicaなど海底を草原のように覆うタイプの海草が失われることは、炭素回収量の大きな損失に繋がる。沿岸の海底環境を蘇らせるボランティアを募るときには、お礼に「海草の下からとれた砂糖で作ったお菓子」を配ってみるのも面白いかもしれない。


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