1ヶ月ぶりの恋人との休日

 こんにちは。一昨日までゼミ論一切手付けてなくて、漠然となんとかなると思ってたんですけど、昨日なんとななりました。めちゃくちゃ内容薄いけど提出できる形式にまでは持っていけました。ほらね。やればできるじゃん。後は時間が許す限り肉付けすればおっけー。私すごい。

 はのとです。初めまして。


 実は先日も数週間ぶりの休日を一緒に過ごしたんですけど、今回の記事ではその前の休日についてお話ししますね。時で言うと、11月の頭頃の出来事です。

 私は軽音楽部に所属している大学4年生です。恋人は1つ下で先月まで部長をしていた同じ部活の後輩。11月の頭におっきなイベントがあったので、練習とか企画準備とかで全然時間が取れなくて、毎日電話はしていたけれど、週に何回かは大学で顔を合わせていたけど、ゆっくりすることはできなかったんです。

 そしてイベントも終わり、片付け日のあとそのまま恋人の実家へ。以前酔っ払った私を心配して、彼に予定外の自宅訪問をされたので、今度は私が行くよ、と。双方実家暮らしなので、なかなかおうちデートというのも頻繁にはね。


 行くよ、と自分から言いながら、結構緊張していて。恋人のご両親に会うとか、特にお母様にお会いするというのは、なんというか、緊張するよ。だってさ、家族仲良好なんですもん。それに、恋人をご両親に紹介するのは初めてだと言うので、尚更緊張。

 ドキドキしながら駅から家までの道のりを並んで歩く。そもそも2人きりになることも久しぶりだったので、それも噛みしめながらゆっくりと、彼が毎日歩いている道のりを辿る。なんかいいな、って、静かに思う。

 久しぶりだから、腕も掴めなくて。


 家に着いて、ちょっと待っててくださいね、と言われて待っているとお母様が登場。そこに恋人の姿はなく、突然私は2人きりにされてしまいました。そもそもコミュニケーション能力に欠けている私ですから、それはもう、戸惑いと焦りと色々で。

「初めまして。はのとと申します。」
「〇〇の母です。来てくれてありがとう。」

 初手は成功と言っていいでしょう。優しく微笑んでくださったその様子は、優しさの塊のような彼を彷彿とさせるようで。とっても温かい人だな、と、直感で思いました。温かい人に育てられたから、あんなふうに温かい人になったんだなって。

 一通りご挨拶を済ませたところで、いよいよ家の中へ通されました。階段を上がって部屋へ。一度写真で見たことのある風景が広がっていて、ああ、私、本当に来たんだ、って実感しました。

 いつもここから、この場所から、私に電話をかけてくるんだ。あの日は、この場所で泣いていたんだ。この場所でギターを練習して、この場所で朝を迎えるんだ。彼の日常に触れた気がして、なんだかほかほかという気持ちになりました。ほかほかな気持ちって何。


「くつろいでください。」

 そう言ってミルクティーを出してくれた恋人。私はそれに頷いて、無遠慮にベッドに上がる。座って、部屋中を見渡す。物はそんなに多くなくて、散らかってもいなくて、すごく綺麗な訳でもないけど、わりと綺麗で落ち着いた部屋。

 楽器に関する色んな本が置いてあって、教科書は隅の方で眠っている。ベッドにはたくさんの大きなぬいぐるみが置かれていて、どの子も彼に抱きしめられながら夜を過ごしているらしい。可愛いな。

 机の上には広げられたままのバンドスコア。彼の大好きなBUMP OF CHICKENのアルバムのスコア。昨日のライブでやっていたあの曲は入っていない。趣味で買ったんだ。

 本棚に並べられているDVD。ほとんどはBUMPのライブDVD。他にも色々ある。これらに救われながら、20年間生きてきたんだ。きっとこの枕には、彼のたくさんの涙が染み込んでいる。すべての涙を、この子が受け止めてきたんだ。


 日も沈んできて、近くの温泉へ。お母様が車を出してくれて、帰るとき電話してね、と言われた恋人はポケットに手を突っ込む。「あ、携帯忘れた。」何をしとるだ。「私が持ってるから大丈夫です。番号覚えてる?」「覚えてます。」「ごめんね、じゃあ、お願いできる?」「はい、送っていただいてありがとうございます。」

 そんなやり取りをして、温泉に向かいました。思ったよりも賑わっていて、とりあえず料金を払って中へ。お腹が空いていたから、先にご飯を食べようとなって席に着きます。メニューを開いて、前後から一緒に覗き込む。メニューを追っていく彼の後頭部を眺めるのが、私は好きです。

 
 出来上がったうどんを取りに行ってくれる彼を眺めながら、幸せだなあと漠然と感じる。ようやくゆっくりできてるんだなあと、実感がありました。彼も、部長という重荷から解放され、これからは私と同様、元幹部という肩書でもなんでもない小さな勲章を掲げながら、ただただ部活を楽しむ権利を得たわけです。感慨深い。

 温かいうどんをすすって、そのまま温泉へ。何時にここでまた会いましょう。温泉が好きな彼は、大浴場が苦手な私に気を遣って、短めの時間を設定してくれました。

 数年ぶりに入る温泉。大浴場での入浴は苦手だったけど、疲れた体を癒してくれる温かさに、温泉も悪くないな、と、のぼせそうな頭でぼんやりと考えていました。彼が大好きなサウナにも入ってみたけど、これは私にはあんまり良さ分からなかったわ。いや、サウナの良さはちょっとだけ分かった。でも、水風呂だけはたぶん一生理解できないです。ごめん。

 上がって外で待っていると、すみません、と急いでこちらに向かってきた恋人を見つけます。「私も今出たとこだよ」なんていい女ムーブをかまし、冷たい飲み物を飲みながら少しだけのんびりとしていました。

 ぼーっと遠くを眺める恋人を眺める私。その視線に気が付いて、「なんですか?」と首をかしげてくる、その姿もまた可愛くて、私は笑いながら「なんでもないよ」と返します。なんて平和な世の中なんだ。


 家に帰り、イベント4日間お疲れ様。幹部1年間お疲れ様。本当によく頑張ってくれてありがとう。そんなエモい話をしながら狭いベッドに2人で横になります。今日は疲れたからもう眠ろうか。頷いて目をつぶった恋人に、私は1か月ぶりのキスをしました。

「ずるい! 眠れなくなります。」
「わがまま言わないで寝なさい。おやすみ。」

 結局朝方まで眠らずにぼそぼそと話をしてしまい、2人とも眠りについたのは隣の部屋で眠っていたお姉さんの目覚ましが鳴ってからでした。こんな休日も、悪くないな。

 お昼ごろ目が覚めて、身支度を整えてお昼ご飯を食べに外に出る。私の地元とよく似た静かな彼の地元に安心しながら、昨日はできなかった腕を組んで、誰もいない道を2人だけで歩きます。なんでもない話で笑いながら。ずっと、笑いながら。


 ご飯を食べて、彼の散歩ルートを辿りながら遠回りをして家に帰る。普段ここを歩いているんです、ここが俺のお気に入りの道です。そんな風に紹介しながら細い、でも見通しのいい道を2人で並んで歩く。腕は、組んだまま。

 優しい風が吹いて、でも太陽は眩しく照っていて、ほんのり温かくちょうどいい気温を感じながら、寝不足なんてこと忘れてさ、のんびりと外の空気を楽しんだ。楽しいね、なんて笑いながらさ。ただ歩いているだけなのに。隣に恋人がいるだけで、途端に特別な景色に見えてくるんだよ。すごいね。

 家に戻って、またベッドに横になりながら色々な話をする。たまにキスをする。また話をして、キスをする。ライブの動画を振り返って、よく頑張ったねって抱きしめて、頭を撫でる。私の倍の力で抱きしめて返してくる彼は、普段の可愛さで忘れそうになるけど、彼も男の子なんだなって思い出させてくれる。

 別に思い出す必要なんてないけど。犬のようにしっぽを振っている彼も、時々見せる男の子の顔をした彼も、どっちも好きだしどっちもこれからも見ていたい。


 とにかく、あんたが笑っていてくれれば、私はそれでいい。心からそう思います。なんか今日はポエマーみたいになってしまいましたね。自分で読み返して寒ってなるかも。嫌だな。まあ、たまにはいっか。

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