大学で最初に声をかけてくれたk へ

大学で最初に声をかけてくれたk へ

 お元気ですか。そっちはどんな感じなのかな。実家に帰って一年、どんな毎日を過ごしていますか。

 kと出会ったのは、たぶん一生忘れない2019年の4月3日。大学に入学したばかりで、とにかくオリエンテーションの毎日だった最初の一週間。高校からの友だちはいないので、孤独に行動していた日々。そんな中で、初めて声を掛けてくれた子だった。

 4月2日のクラス顔合わせで、私のことを覚えていてくれたよね。もうそれが奇跡だよ。すごすぎる。人の顔覚えるの苦手だから、声かけられたときは正直全然ぴんと来てなかった。ごめんね。その後軽く自己紹介して、それでやっと思い出したよ。写真が趣味だって言ってた、THE 女の子 みたいな子。

 kは、地方から来てるから友だちがいなくて、ついでにその日のオリエンテーション会場が分からなくて彷徨ってたら私を見つけたらしい。案内したい気持ちはやまやまだったけど、私も彷徨ってたから、結局二人でさ迷った。まだ二年も経ってないと思うと怖いな。すごい昔のことに感じる。

 その日はずっと一緒にいたね。連絡先もちゃんと交換して、お昼も一緒に食べた。まだまだ会話はぎこちなかったけど、半日一緒にいただけで、kの印象は第一印象と変わった。可愛いのに女の子女の子してなくて、案外さばさばはっきりしてる。私が好きなタイプの子だった。

 オリエンテーションが終わって、今度は部活とかサークルの話をしながら構内を彷徨ったね。沢山の先輩に声を掛けられ勧誘されるたびに、女子校上がりで過剰にビビっていた私の代わりに、可愛いkが華麗にそれらを交わしてくれた。「あ、この子はもう決まってるし、私もだいたい決めてるんです。」って。

 私は軽音部に決めていたから。kはまだ迷ってる感じだったけど、なんやかんやでかわしてた。強いね。

 私の入部届を出すため、kの履修相談のために、私たちは私が入部を希望する軽音部のもとへ向かった。軽音に興味がなかったkを連れていくのは気が引けたが、それでもkは、履修相談したいし、と言ってついてきてくれた。この頃から優しかったね。

 そんなこんなで一日終わったっけ。曖昧だからその後の日の記憶と混ざってるかもしれないけど、たぶんこんな感じ。偶然と言うか奇跡というか運命というか、とにかく私たちはお互いに、大学生活初めての友だちが出来た。

 その後、私たちの学科はクラス単位の必修授業がほとんどを占めるから、k以外のクラスの子たちとも仲良くなった。その後、なんとなくグループが出来て。それもかなりなんとなくだったけどね。私たちは4,5人でいることが多くなった。

 人数が増えて、私たち以外の3人はお姉さん気質が強かった。というか、私たちがろくでもないあほだったのかも知れないけど、とにかく私とk、姉さんたち、という構図も出来てきた。姉さんたちは、分かれてそれぞれ私たちの面倒を見てくれた。二人して面倒かけたけど、でも、あの頃は本当に楽しかったね。

 そんな感じだから、そのグループの中でも、私たちは仲良くなった。どんどん、仲良くなった。形だけの友だちから、本当の友だちになった。いつからだろう。そんなのわかんないけど、いつからかkのことを大切に思うようになった。kといる時間は楽しくて、全然ぎこちなさなんてなくて、居心地が良かった。

 kの一人暮らしの家は大学からとっても近くて、電車で2時間かかる私は、たまにkんちにお邪魔した。その時はいつも決まって、「ただいま~」と家に入る。「別にはのとの家じゃないんだけどな~」なんて決まったやりとりをしたのも、今となっては懐かしいね。

 あの家は本当に居心地が良くて、まるで自分の家のように(笑)過ごせた。二人でご飯を作って、テレビを見て、音楽を聴いて、歯を磨いて、そこまでしてやっと私たちの夜は始まる。

 私たちの共通点、それは、自己肯定感が低くて自分に自信が持てないこと。それが共通点ってはっきりと分かったのは、一緒に過ごした最初の夜だったかな。

 悩みを話すというか、日頃から抱えているもやもやというか、自分たちにはない素敵な部分を沢山持っている姉さんたちの話というか、コミュニケーションに長けるクラスメートのことというか。自分はなんでこんなことしか出来ないんだろう、なんであんなことは出来ないんだろう。そうやって片方が話して、もう片方はそれを否定する。「はのとは十分頑張ってるからいいじゃん。頑張ってればいいんだよ、可愛いし。大丈夫、全然大丈夫。今日だって授業で…」

 つまり、私たちは持ちつ持たれつで、互いの自己肯定感を上げようとしていたね。でも、それは無理矢理やっているものじゃなかった。少なくとも私は。私にとっては、kだって十分素敵な人だもん。自分の弱点から逃げないで向き合ってるし、努力家だし、可愛いし。毎日頑張ってメイクしてるじゃん。私はメイクが苦手だから、そうやって自分を磨こうとしているkは素敵だなって思う。

 kはすごく可愛いのに、自分に自信がない。だから、私は会う度に、意識的にkを褒めた。メイクを褒めた。kの顔面をとにかく観察して、「今日の二重幅めっちゃ綺麗」「アイラインいつもより自然だね」「まつ毛めっちゃ上がってる可愛い」なんて、褒めまくる。それで、kが笑顔になってくれるのが嬉しかった。

 そんなkにもう一年以上会ってないと思うと、なんだか吐きそうです。気持ち悪いです。誰が私の自己肯定感を上げてくれるの。自分で上げるしかないじゃん。でもそれじゃ、上がりきらないよ。それに、誰がkを笑顔にするの。私じゃん。

 もうすぐ会える。大学は来年度から本格的に対面に切り替わるし、そうなったらまた、前みたいにとは色々といかないだろうけど、沢山会えるよね。一緒にご飯作って、テレビ見て、音楽聴いて、重たい話も出来るよね。この一年で、kに話したいことは沢山あるよ。嘘、本当はそんなにない。何もない一年だったから。でも、何もなくても、kといればそれは楽しい時間になるから。早く会いたいね。ずっと言ってるけどさ。

 でさ、来年度は毎秒会おうね。毎秒笑おう。一年分取り返そう。もう、kに会うためだけに授業とれるわ。それくらい、一年間のブランクは大きい。ZOOMだけじゃ、やっぱ足りないよね。

 残り数週間。頑張って耐えよう。大丈夫、私たちなら絶対幸せになれるから。こんなに頑張ってるんだもん、幸せになれないと帳尻取れないよ。ね。

 だからそれまで、元気でね。また。


2021年3月21日 はのと

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