あの頃思い描いていた先生になれているのかな。

 こんばんは。日が伸びてきましたね。あったかくもなってきた。寒い冬が大嫌いなので40度の夏が待ち遠しいですが、冬はイベントだけ考えたら大好きなので少し寂しいです。寒くなければ完璧な冬。楽しいことも多いし休みも多いし服も可愛い。可愛い服を買いすぎて普通に毎月赤字なので、早く終わったほうがいいかも、冬。

 はのとです。初めまして。


 もうすぐ現配属校への赴任が決まってから1年が経ちます。いや、もう経ったかな、どっちだろう。大学4年生の冬、軽音楽部の練習中に電話がかかってきて、「〇〇高校校長の〇〇です。」と絶望の結果発表があった。懐かしいね。その場にいた全員に慰められた。だって、地元で有名なヤンキー校だったから。

 赴任前に職員室にお邪魔すると、まさに「アットホームな職場」を絵に描いたような感じでした。おったまげ。先生たちはみんなリラックスしていて、大学生の授業前の風景とあんまり変わらない。気を張っている感じはしない。びっくりしちゃった。

 対応してくださったベテランの女性の先生も、すごく雰囲気の柔らかい方でした。いや、本当はきびきびしていてかっこいいタイプの先生なんだけど、緊張しまくりの私をリラックスさせようと優しくにこにこで話しかけてくれるような方。それで私の肩の力は少し抜けました。

 その方は今年度1年間、教科の面で研修を行ってくださった担当の指導教員になってくださいました。本当にお世話になった。毎週授業のことについてお話して、私の授業のいいところをいっぱい褒めてくれる。ダメ出しじゃなくてアドバイスをしてくれる。

 とは言え、今どきの若者に遠慮しているような空気はずっと感じていました。打たれ弱い若者。そんな我々に対して過保護に優しくしてくださっているような感じはね。そんなことないのかもしれないけど、ちょっと距離感はあった。寂しいね。


 ということで、なんやかんやで1年間が終わりそうです。初日は会議しかしてないのに身も心もへとへとになってさ。しかも今年度は初日が月曜日だったから、みっちり5日間働かないといけなくて辛かった。

 みっちり5日間働いて、2日休んで、そしたらもう入学式。1年生の担当になった私は、入学式にもちゃー-んと教員側で出席しないといけなくて、副担任だったからまだよかったものの、でも保護者の方を誘導したりご挨拶したり、あーこわこわ。今思い出すだけでもこわこわ。超怖だった。

 最初は生徒たちに指示することもできなくて、ずっと遠慮がちにいてさ。担任の先生が指示を出して、みんなが動き始めてからなかなか動きについてこれない子に追いで指示を出す。それくらいしかできなかった。でしゃばれなくて、でかい声も出せなかった。遠慮気味にずっと生きてた。


 そんな私が、今では口の悪い厳しめの先生として名を馳せているのです。それはさすがに過言。厳しめとは思われていないね。だって身長148cmの若い女に何言われても怖いとは思わないでしょ。

 でも私はしつこいのでね。粘着質なのでね。よく言えば粘り強いのでね。何度だって短いスカートを注意するし、何度だって緩いネクタイを注意するし、何度だって小さな返事を注意する。何度だって何度だって、同じことを言い続ける。改善されるまでずっと。

 特に男性の先生だと、女子生徒のスカート丈を厳しくチェックすることができない。いろいろあるからね。でも私はできる。なんなら私が折られている部分を戻すことだってできる。つまり、生徒の腰に腕を回して強制的にスカート丈を戻すことができる。いつか怒られそう。

 でも、そんな風にじゃれながらスカートを注意し続けていたら、全員の服装が直るまで授業を「起立、気を付け、礼」の「礼」を言わせずに待っていたら、私の授業ではほとんどの生徒が身だしなみを整えてくるようになりました。本当はすべての授業ですべてのタイミングで整ってないといけないんだけどね。まずは小さな一歩だよ。

 授業以外でも、廊下とかで目が合えば言わなくても直すようになった。折ってないときにはにこにこの笑顔で近づいてきて「折ってないよ! えらいでしょ!」なんて言ってくるものだから、「えらい! 超えらい!」とほめてあげることにしています。可愛いよね、彼らは。

 男子のネクタイもそう。さすがに私も男子のネクタイを締めなおしてあげることはできないけど、きちっとしているところにすれ違うと、「先生見て! 俺今日完璧!」とどや顔をしてくる。可愛いね。「完璧! いつもそうしろ!」と追い打ちをかけると、「当たり前じゃん!」と胸を張ってくる。可愛いね。


 私の勤める学校は、いろんな事情を抱えた子が多い。本当に色々。今までニュースとか教科書とかでしか見たことのない事例が現実にたくさん存在している。学ぶことが多いです。

 そんな生徒たちがね、「はのと先生だから話すけど…」って、抱えるものを吐露してくれるの。ちょっと本当に私に抱えきれるものではないんだけど、もちろん了承のうえで学年の先生方に共有するんだけど、それでもまず第一歩として自分のところに来てくれたことが嬉しいのです。

 それも1人2人とかではなく、日々を重ねるごとにたくさんの生徒がね、「先生放課後時間ある?」って聞いてくるようになったの。本当に嬉しい。悩みの大きさには大小あってさ、ソーシャルワーカーにつなげないといけないようなこともあれば、ただの愚痴みたいなこともある。

 どんな内容だって嬉しいよ。思春期で色々と考えてしまう年ごろ。抱え込んでしまって1人で苦しんでしまう年ごろ。そんな子たちが、「はのと先生になら話せると思った」って言って話してくれるの。私はうんうんうなずくことしかできないのに、それでも何度も何度も話してくれる。「最近はね~」って話しかけてくれる。


 それから授業もね、最近多いんだけど主要教科は習熟度別のクラス編成を行うっていうのをうちもやっていてさ。2クラスを3つの習熟度に分けるの。得意、普通、不得意って感じで、不得意が1番少人数になっていてマンツーマンで教えることができる。そんな感じ。

 私は各クラスでそれぞれ持っていて、そのうちの不得意のクラスの生徒がね、2学期までそのクラスでじっくりコトコト煮詰めていたんだけど、3学期ついに1つ上のクラスに上がることになって。それも結構たくさんの子が。

 それだけじゃなくて、普通のクラスから得意のクラスに上がった子もたくさんいたの。2学期までずっと普通にいたのに、最近得意になってきたな~と思ってたらポンって上がっていっちゃった。

 それがすごい嬉しくて、3学期になったときに「先生私上がった~」って報告してきた子たちに「すごいじゃん! 〇〇が頑張ったからだよ!」って言ってたら、全員に「先生のクラスがよかったのに!! 上がりたくなかった!!」と抗議された。本当はすっごい嬉しくてよしよししたかったけど、「自分が頑張った結果なんだから喜べよ~」と言ってその場を去りました。

 実際に新しいクラス編成で授業が進んでいったころに、不得意クラスにいた子たちとすれ違って、「最近どう? お利口にやってる?」と聞いたら、「授業全然分かんない! 先生の方が教え方上手い!」なんて言うの。誰にも言えないけど超嬉しいよ。超喜んだ。私のすべてのモチベが上がった。

 まあ結局私も先生なのでね。教えることが仕事なので、本業の授業で顧客である生徒にそう言ってもらえるのはとっても光栄なことです。ありがたいですね。私の教え方が上手いというよりは、きみたちが頑張れる素質があったからだよ、と思うのだけど。私は教えているというよりも彼らに並走しているだけなので、一緒に考えてわいわいしているだけなので、うまいと言われるような教え方はできていないのです。

 全部当人の努力と頑張りの賜物。それでも、やっぱり私のクラスから上に上がって、それでもなお私のクラスに戻りたいと思ってくれているのは嬉しい。分かりやすい授業をできている自信はないけど、楽しい授業をしている自信はすこー------------しだけあります。すこー----------------しだけね。

 楽しい授業をしようとするとね、私も楽しいし、生徒も楽しんでくれるし、何よりも私が授業中に生徒の活動に干渉する必要も減ってくるので、私にとっても楽なんです。楽しい授業はみんなが幸せになれます。


 そんな感じかな。バレンタインには女子生徒よりも男子生徒からたくさんの本気チョコをもらい、時代だなあと感じます。我々のときはバレンタインに男性が率先してチョコを用意するなんてなかったよ。え、違う? 違うわ。私女子高だったからそもそもチョコあげる異性もいなかったんだった。

 みんな「先生いつもありがとう」って言いながらチョコをくれます。こっちこそありがとうだよ。私のほうがありがとうだよ。こんな私を先生にしてくれてありがとう。なんて重いメッセージを返したくなりますが、彼ら彼女らがくれるチョコに実際はそんなに深いメッセージはありません。「せんせいだいすき!」このくらいのテンションです。

 だから私も、ホワイトデーには1人1つキットカットでも返しますよ。「1年間たいへんよくがんばりました」とでも添えようかな。本当はね、1人1人に対して書きたいことがたくさんある。これが友だちとか後輩だったら書いていたけど、あくまで我々は先生と生徒の関係なのでね。つかずはなれずの距離感を保ったまま、卒業まで見守りたいです。


 そんなこんなで、先生として最初の1年間が終わろうとしています。職場では赤ちゃんのように甘やかされ、生徒たちからは友だちのように接せられ、どうにもうまいこといかないときもたっっっっくさんありましたが、なんとかここまでやってくることができました。先生を辞めずに終えられそうです。本当によかった。

 小学生のころ、「大人になったら小学校の先生になる!」と卒業文集で高らかに宣言した私。どういうわけか選んだのは高校の先生ですが、あのころ思い描いていた「先生」になれているかな。

 生徒1人1人に寄り添えるような、コミュニケーションを大切にできる、どんな子にも平等に深くかかわれる、そんな先生になりたいと思っていたかつての私。どうかな、4月と比べて、少しは理想に近づけているかな。少しはましになったかな。


 4月からはきっと担任をもって、たくさんの子どもたちの将来を背負って、新たに1年を進めていくと思います。この1年で学べたことなんてたかが知れているけど、成長できたなんて全然思わないけど、今できることを少しずつ増やしていって、生徒にとっても最高の先生になれるようにたくさん笑っていくぜ。

 言葉遣いは少し直さないとね。「うるせーぞ。いいか、聞け。」と高校生に圧かけるのはやめようね。

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