★今日の問題★

 未成年者Aは、Bの欺罔行為により、Bが所有する偽物のコインを本物のコインと同額の値段で購入する旨の売買契約を締結した。この契約について、Bは、Aの法定代理人Cに対して、一箇月以上の期間を定めて、追認するかどうか催告したところ、Cは期間内に確答しなかった。
 この場合は、A、Cは、詐欺を理由に当該売買契約を取り消すことができなくなる。正しいか?

胡桃「10秒で答えてね。よーいどん!」

建太郎「おう」

1秒

2秒

3秒

4秒

5秒

6秒

7秒

8秒

9秒……

胡桃「10秒経過。どうかしら? 」
建太郎「ええっと。Bは、Aの法定代理人Cに対して、一箇月以上の期間を定めて、追認するかどうか催告したところ、Cは期間内に確答しなかった。ということだから、民法第二十条2項の規定によって、Cが追認したものとみなされるんだよな」

民法
(制限行為能力者の相手方の催告権)抜粋
第二十条 制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。
2 制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。

胡桃「そうね。じゃあ、この場合、A、Cは、詐欺を理由に当該売買契約を取り消すことができなくなるのかしら? ということね」
建太郎「ええっと、詐欺だな? 」
胡桃「詐欺にかかった場合は、この規定によって取り消すことができるとされているのよ」

民法
(詐欺又は強迫)
第九十六条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

建太郎「うん。それなら、この規定によって取り消せると考えていいんじゃないの? 」
胡桃「でも、追認したでしょ。ということなのよ。追認した場合はもう取り消せないのよ。次の規定ね」

民法
(取り消すことができる行為の追認)
第百二十二条 取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。

(取消権者)
第百二十条 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む。)又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
2 錯誤、詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。

建太郎「えっ。そうなのか……。でも、設問の追認は、Cだって騙されたと知らないで追認することもあるだろうし、追認したら取り消せないっておかしくないか? 」
胡桃「そうね。その考えでいいわ。設問では、民法第二十条2項の規定により、Cは、Aの行為を追認したものとみなされることになるわけね。でも、民法第九十六条1項の詐欺による取消を主張することは可能ということよ」
建太郎「うん。すると設問は間違いということでいいんだな」
胡桃「そうね」

※問題は、ノベル時代社の肢別100問ドリルを利用しています。下記サイトから入手できます。

https://new.novelzidai.com/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?