宅建士試験で40点取って合格するための最も簡単な方法はこのライトノベル小説を読むことです 権利関係編1-34

 あれから、結局、宅本健一の遺産はすべて、建太郎が相続することになった。株式会社 宅本・オーガナイゼーションの株式の多くや会長兼社長の地位も、建太郎が承継した。
 そういうわけで、建太郎は何も分からないままに、宅本健一が残した大企業の舵取りを担わなければならなくなったのだ。
 三十階にある無駄に広い社長室に入ったところで、安土副社長が会長兼社長としての心得について、一気にまくし立てた。
 だが、宅建士の資格も持っておらず、不動産会社で働いたこともない建太郎にとっては、安土副社長の話はチンプンカンだった。
「叔父さん。そんな風に一度に話されても、何が何だか分かりませんよ」
 建太郎が頭を抱えると安土副社長はため息を洩らした。
「仕方ありませんね。では、どうしたらよいものか……」
「新入社員の研修のつもりで、基本から一つ一つ覚えさせるしかないんじゃないですか」
 と建太郎の秘書のように傍らに立っていた胡桃が助言する。
「新入社員の研修……。そこから始めていたら、会社の経営に関われるのはいつのことになることやら……」
「仕方ありませんよ。何も知らない人にいきなり、会長兼社長の仕事が務まるわけがないんですから」
「それもそうですなあ……。とりあえず、秘書を紹介しましょう。分からないことは、彼女に何でも質問してください」
 安土副社長はそういうと、扉の方に向かって、「入りなさい」と命じた。
 洗練されたスーツで身を固めた若い女性が颯爽と歩いてきた。
 年のころは、胡桃とほぼ同じだろう。シャープな顔立ちに、ふんわりとしたボブヘアをしている。やや切れ長の眼差しに高く形の良い鼻。程よく膨らんだ胸とくっきりとしたくびれに丸い腰まわり。スカートの下に覗く足もすらりとして形がよい。
 胡桃が可愛い女の子の魅力にあふれているならば、彼女は大人の女性の魅力にあふれていると言えよう。
「紹介しましょう。社長秘書の杏咲琴美です。若いながらも有能な女性です。年齢も、建太郎君と同じだから、何かと話しやすいでしょう。分からないことは何でも彼女に質問してください」
「よろしくお願いします」
 杏咲琴美がキビキビとした動作で、会釈する。建太郎も反射的にお辞儀を返していた。
 そんなわけで、建太郎は、いきなり、宅本・オーガナイゼーションの会長兼社長の座に就いてしまったのだった。

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※権利関係編は完結しています。今年の合格を目指す方は、先に読み進めてくださいね。

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