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宅建士試験で40点取って合格するための最も簡単な方法はこのライトノベル小説を読むことです 権利関係編1-33

 宅本タワービルは、新宿駅前にある地上三十階、地下五階建ての超高層ビルである。地上二十階までは、テナントが入居し、二十一階から三十階までが、宅本健一が会長兼社長を務めていた不動産会社『株式会社 宅本・オーガナイゼーション』とその関連会社の本社となっていた。
 その日、建太郎は胡桃と共に初めて、その本社ビルに赴いた。
 胡桃の運転する軽乗用車で宅本タワービルの前に来た時の場違い感は半端なかった。
 このビルに入居する会社の役員であれば、運転手付きの高級車で出勤するのがスタンダードである。役員どころか、末端の社員でさえ、高級取りで軽乗用車に乗っている人はほとんどいない。
 地下の駐車場に車を停めた時、周囲にずらりと並ぶ高級車を一瞥し、建太郎も胡桃も圧倒されていた。
「なんか……。すごいところに来ちゃったね……」
「そうよね。さすが不動産王と呼ばれていただけはあるわね」
 建太郎と胡桃が車を下りたのを見計らったかのように、高級スーツを着た複数の男たちが駆け寄ってきた。
 株式会社 宅本・オーガナイゼーションの役員たちだった。町の小さな司法書士事務所をやっている建太郎や胡桃では、到底、接する機会のない殿上人たちである。そんな彼らが、建太郎を最敬礼で出迎えたのだ。恐縮しないわけにはいかなかった。
「建太郎君。君が無事で何よりだった。さもなければ、この会社が他所の企業に乗っ取られていたところだったよ」
 そう声をかけてきたのは、見知った顔の男だった。気品のある佇まい。口元にはわずかに口ひげをたくわえ、優しい眼差しを宿している初老の紳士――安土光秀。
 彼は、株式会社 宅本・オーガナイゼーションの副社長。宅本健一亡き今は、この会社の最高責任者である。
「まるで、俺の命が狙われているみたいな言い方ですね。叔父さん」
 そう。安土光秀は、建太郎の叔父だった。建太郎の父宅本建次は既に病死しているが、建次の妻――建太郎の母宅本典子の実弟が、安土光秀である。
 宅本健一が生前より、最も信頼していた番頭役で、カリスマ経営者だった宅本健一の急死にもかかわらず、会社の従業員たちが動揺せずに平常運転を続けていられるのは、安土光秀の手腕によるところが大きい。
「社長は、暴力団成金組の陰謀によって殺されたというのが専らの噂だ。証拠がないから警察は身動きずにいるが、まず間違いないだろう。成金組は、この会社を乗っ取ることを諦めたわけではない。いつ何時、君が連中に狙われるか知れたものではないから、十分に気をつけてくれたまえ」
「やっぱり、伯父さんたちはヤクザに殺されちゃったのかな? 」
「詳しい話は社長室でしましょう。さあ、こちらへどうぞ」
 建太郎と胡桃は、安土副社長の案内で、エレベーターに向かった。三人の後を役員たちがぞろぞろとついてくる。

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※権利関係編は完結しています。今年の合格を目指す方は、先に読み進めてくださいね。

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