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プラセボ探偵 光永 理香 15

15  伍億円事件別件逮捕事件(対峙編)

 駒田と言う秘書課長はいきなり質問してきた。
「ミツナガケイイチさんとは誰なんですか?」
私は抑揚ない言い方で答える
「伍億円事件で別件逮捕され冤罪で釈放された後、自◯した私の父です」
「その方が亡くなった事と私共にどう関係があるとおっしゃるんですか?」
「言いがかりなら警備員を呼びますよ」
態度も話し方も冷徹な感じだと思った。揺さぶってやろうと思い挙げ足を取ってやった。
「女ひとりで話しに来てるのに警備員を呼んで力ずくで排除するんですか?私はまだ何も話ししていないのに」駒田は少し沈黙してから口を開いた
「いいですよ 聞きましょう あなたに非難される覚えはありませんよ」
引っかかったなと思った
「ではお伺いいたします」
「父、圭一を騙して陥れたのは合田亀太郎の指示ですか?」
駒田は顔を引き攣りながら口を開いた
「我々の尊敬する前会長を侮辱するのは許せない」
「やはりあなたの話しはまともでは無い様ですね」
「お帰り下さい」
私が暫く黙っていると駒田は凄みを見せて来た
「こちらが優しく相手しているうちにとっとと消えろ」「このドブネズミ!」「言いがかりをつけて金をたかろうとでも思っているんだろ」「怪我したくなかったら失せろ」
あまりの豹変ぶりに今度は私の顔が引き攣った

 「侮辱行為で訴えられるのはあなたですよ」

携帯電話のボイスレコーダー機能で録音した駒田の音声を聴かせてやった
もちろん侮辱罪が制定されるのはまだまだ先の話しだが録音の証拠はインパクトが大きかったようだ
小娘にしてやられた駒田は苦虫を噛み潰していた

合田亀太郎の所在地とアポイントを得る事が出来た
「さあこれからが本番だ」私は気合いを入れた

合田家の別荘は森の中にあった
そんじょそこらの森では無い深い古代から存在する様な森だ しかも高い塀に囲まれいて中に家があるかどうかは分からない 最寄りの電車からここまでバスが無いのでタクシーで乗り付けた
「痛い出費だ」と思いながらふと自分を見つめ直した いつの間にか40年も前の事件に巻き込まれている 鍛えているとは言え女一人で乗り込むのは危ないなと感じていた しかし勇気を振り絞って大きな門のインターホンのボタンを押す 何処からか監視しているのか自動で門が開く敷地内に入ると門は音を立てながら閉まった 振り返っていた所をはがいじめにされ薬を嗅がされた 意識が飛んだ

 気がつくと何も無い地下室の様なところにいた
家具も照明も無いがうっすらと中の様子がわかるくらいの明るさはあった ドアらしい物はあるがドアノブは無い もちろん窓も無い「一体何のための部屋なんだ ここは」 いきなり天井が明るくなった 「光永理香さん 手荒な事をして申し訳なかった 私はこの屋敷の家主で合田亀太郎と申します」スピーカーは見当たらないが天井から声が出ている 「私はここ2年くらい体調が悪くてベットから起き上がる事も出来ない 失礼だがこの様な形でお話しさせて頂きます」亀太郎は意外に穏やかな口調で説明した 私は無礼を詫びてくれたおかげで少し調子が狂った だが聞きたい事は山ほどあった気を緩める訳にはいかない 「わかりました 最初の手荒な歓迎は大目に見ましょう」「ところであなたが本物の合田亀太郎だと証明する事はできますか」少し沈黙が流れてから話し始めた 「あなたは光永圭一さんの娘さんだから圭一くんと私の息子栄一が一緒に暮らしていた事はご存知ですよね 栄一は本当に圭一くんを大切に思っていました 家を飛び出す程嫌っていた父親に土下座までして圭一くんの学費の援助を頼みに来ました この話しを知っているのは本人と私だけです」と私の信頼を得ようとした 「わかりました、信用しましょう」「ところであなたは何故栄一さんがそこまで光永圭一に執着するのかをどうお考えですか?」 「確かに兄弟の様に仲良くしていたらしいですね」穏やかな口調は変わらない 「栄一には実の兄がいます」それは知っている「長男の光一さんですね」「お兄さんとの関係性はどうだったのですか」少し間が空いてから溜息の様に亀太郎は口を開いた

「兄の光一は圭一を見下していました」
「二人の母親は実の姉妹なんです」

つづく(15/52毎週日曜日20:00更新)

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