一日遅れの日曜日(ウラジオ日記32)

町の奥の方に行くと、途中サーカスの廃墟を見かける。古いポスターがまだ貼られていて、ソ連時代のポスターアートの雰囲気が感じられる。サーカスはテント小屋みたいで、イメージしていたサーカス小屋に近かったから潰れていたことを口惜しく思う。しかしとても趣がある。

日本のどこかの田舎で見た、ストリップ小屋の廃墟を思い出す。それが少し明るい外装をしているものだから、くすんで錆付いた赤色が目に残っている。かつての栄華が見え隠れする。壁にはきっと歓声が染み付いているだろう。だから物寂しい。

広い公園がある。公園の中には小さな遊具がいっぱいに並んでいる。遊具と言ってもすべり台やジャングルジムやシーソーじゃない。デパートの屋上にある遊園地みたいに、電動式のチープな遊具が立ち並ぶ。人気は少なく、動いていない遊具も多い。機関車はフェンスで囲まれていて線路が円形に敷かれている。男の子の兄弟が乗っている。弟はきらきらとした目をして動く景色を見ている。兄はやれやれとした表情で付き合っている感じを出しているけれど、なんだかんだ楽しそうだ。弟より楽しまないように抑えている感じ。フェンスの横には硬貨投入口があってその横に少し大きな機械がある。機械にはスイッチがあって、お金を入れてスイッチを押せば機関車が動くということらしい。係員がいなくても遊園地が稼動できるシステム。

規模の大きいものもところどころある。左右に振り子みたいにゆれる、日本だとバイキングという船の形をしたアトラクションみたいなものがある。そこにはさすがに係員がいた。ちょうど人が乗っていたから少し眺める。左右に段々と大きく振れてくる。かなりの角度まで振れてくる。ほぼ逆さになるくらいまで。少女の楽しそうな悲鳴が響く。また右に大きく振れて、上の方でゆっくり逆さの状態になってまた戻って勢いよく左に大きく振れて、上の方でゆっくり逆さの状態になってそのままゆっくり振れて一周する。一周した!これって一周するんだっけ?バイキング一周しないよな。こわ。子どものころブランコで遊んでて、一周しそうな気がしてこわくなって、途中でやめた。端から見たらそこまで到ってないんだろうけど、それはこわくて、でもスリルがあって楽しかった。あの経験ってたぶんみんなしてるんじゃないのか。だとしたら、まさかの一周は結構こわいかもしれない。

他に動いている遊具は見かけなかった。稼動していないというよりは硬貨が投入されていないというだけだろう。月曜日の昼間、公園は人気が少ないものだ。広い公園の敷地内には所狭しと遊具が並んでいて、誰にも使われていない遊具がだらだらと惰眠をむさぼっている。子どもたちの楽しそうな声を耳に残して。遊具にとっての日曜日。

紙コップに注ぐタイプの自販機があった。のども渇いていたので硬貨を入れてボタンを押してみる。多分レモネード。黒いカスが二三浮いている。口を付けてみるとめちゃくちゃ甘い。逆にのどが渇く。シロップを水に溶かしただけの味。でもかき氷の跡よりおいしくない。

公園のそばには立派な劇場があって、劇場前の広場に本棚があった。ロシアでは一般的なのだろうか、ここでも本棚が野に曝されていた。劇場もやっぱり閉まっている。今日はやはり歓声は響かない。

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