空港には開けてはいけない扉がいっぱいある(ウラジオ日記2)

夜、窓の外を見ると光が揺らめいている。街は明るすぎて海まで照らされていた。水平線がぼんやりと見える。世界がゆれている。

飛行機の上でわくわくとしている。エンジン音が体をゆらし、空へと飛び立つ瞬間のエネルギー。重力に抗って空に飛び立つ。窓際の席から見ると雲はなく、夜が果てしなく見える。

目覚めるともう韓国だった。窓から夜景を見ながら眠ってしまった。昨夜眠れなかったのだ。泣いてはいない。

海外旅行の前はわくわくとして眠れない。遠足前の幼稚園児のそれだ。結局楽しみにしていた飛行機の中で眠ってしまう。それでもいい。空の上で眠るなんて夢みたいだ。どう転んでも飛行機は魅力的だ。

起きると前のポケットの中の案内を読む。日本語でも書いてあるが、英語で書かれているところを読む。そうやってチューニングしないと英語をぱっとはしゃべれないし理解できない。窓の外を見ると街が見える。建物が光るのではない。道が光っている。まっすぐには延びていかない線が、地上に模様を描いている。

空港というのはみんな浮き足立っている気がしていい。いやな何かから離れて笑うのか、まだ見ぬ何かに期待して笑うのか、みんなニコニコと顔をほころばせている。足取りも心なし軽い。

仁川国際空港に降り立つ。英語の案内を見ながら進む。韓国ではまだ日本語も少し見かける。空港のターミナル間を移動する電車では日本語でもアナウンスが流れる。まだ異国に染まりきっていない。
どこかに行きたいというよりは日本から出たいという気持ちのほうが強い。定期的に日本の外に出ないと、なんだか息がし辛くなる。早く異国に染まりたい。

到着エリアではなくトランジットエリアへと進む。行ったことのない方へと足を向けている。

空港には開けてはいけない扉がいっぱいあるな。

荷物検査で少し待たされる。チケットを確認されやっとターミナルに入る。あんまりよくわかってなかったけれど、出国エリアに入るってことなのか。チェックインどうするんだろ。後で聞くとしてとりあえずおなかが空いた。でももう夜の11時過ぎ、フードコートは閉まっている。どこかないかと探していると、バーガーキングを食べている青年を見かける。一度通り過ぎたが戻ると青年に声をかける。

「バーガーキングはどこですか?」

青年は笑いながら首をふる。

「ここにはない?」「うん」

警備のおっさんが近づいてくる。

「ロッテリアならあるよ。11番ゲートの横に。」


ロッテリアうますぎ。子どものころ、外食と言ってロッテリアにたまに連れてかれていた。でも何故かそれ以来行ってなかった。久しぶりのロッテリア。そのころはかなりの頻度で行っていて「ポイントを貯めていればおもちゃをもらえていたね。」と毎回のように話した。結局一度もポイントカードは作らなかった。ロッテリアはロッテのハンバーガーショップだ。ロッテは韓国のイメージがある。韓国発なのだろうか。ならば現地料理だ。ケチャップが洗いたてのハーフパンツに落ちる。落ち込む。

出国ゲートからターミナルに入ってくる人々。こちらからは出れない。ん?チェックインってどうやるんだろ?トランジットをよくわかってない。まあとりあえず寝よう。

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