安かろう悪かろう(ウラジオ日記8)

中々にいい景色だ。湾を挟んで向こうにもウラジオストクの町が広がっている。なんだか香港に似ている。それから近くにケーブルカーがあるようなのでそこから下に降りる。ケーブルカーも確か観光名所のはずだ。香港のピークトラムを思い出す。ピークトラムは急な坂を上っていく。香港の高層ビルが斜めに斜線を引いていくように見えてそれは異様な景色だ。「インセプションか、これは?」ってくらいに、ビルがそそり立つ。それに比べると少し物足りない。高層ビルもあまりなく、香港ほど建物が密集しているわけでもない。それに角度もいくらかゆるやかで短くあっと言う間。もちろん景色はきれいだったけれど、先にもっときれいな景色を見てしまったせいで物足りない。ケーブルカーで上に上がって、わくわくとした気持ちで展望台に向かうのがおすすめである。とは言え短いケーブルカー。観光名所というよりは市民の足なのかもしれない。というかさっき抜けた急な坂道はケーブルカーのわき道だったらしい。

そう言えばホテルをあまり見かけない。HOTELとは書いていないのかもしれない。ロシア語でホテルはなんと言うのか知らない。英語でMEETと書かれたお店を見つける。食堂に行きたかったが疲れた体に肉はいいかもしれないと店に足を向ける。半地下の店内に入ってみると、そこは噂に聞きし、バイキング方式の食堂だった。適当に五品くらい料理を見繕って、レジに行く。600円くらい。安い。席につく。
多分これはピロシキだ。食べる。くさい。血みたいなにおいがするひき肉。周りの生地はめっちゃうまい。でも中身がくさい。血抜きがうまくいってないのだろうか。じゃがいもの香草炒めみたいなのは美味しかった。けどくどい。

あんまり海外でまずい料理に当たったことがない。上海で食べた見たことのない鍋料理くらいだ。あれも血の味がした。生にんにくの入ったつけダレと食べると二郎と似た味がすることを友だちが発見した。そう思い込めば食べれるくらいの味。

あれ以来だ。日本だとおいしそうだなというお店に入れば大体おいしい。外見のセンスは料理の中身ともシンクロしているような気がする。その勘は海外では通用しない。それは経験則で理解していた。でも不味いというのは久しぶりだった。悪い幕開け。いや最初の食事は空港で食べたペリメニだから良しとしよう。

よし。ホテルを探そう。大きなホテルに行けば地図がある筈だ。深夜特急で学んだ知識。店の外に出るとLOTTEの大きなホテルが見える。間違いなさそうだ。行ってみると、観光案内所が併設されている。ラッキー。深夜特急ありがとう。やっと宿に辿り着けた。かなり近いところまで来ていた。方向音痴は直ったのか?幸先がいい。

ホステルは国営サーカスの裏の辺り。少し暗い道。車がずっと縦列駐車で並んでいる。それから時折、道の脇にゴミが積まれている。生ゴミではなく無機物。サーカスの裏の少し暗い道。悪くない。

一度通り過ぎてしまう。ホステルに入ると、ベッドに案内される。IDチェックはされない。一泊約500円。セーフティーボックスはなし。門限あり。

・・・門限あり!23:00。これは結構きついかも。23:00以降あの暗い道は危ないということか?

セーフティーボックスなしもきつい。安かろう悪かろう。

インドや中国、台湾に行ったことがある。そこでは安かろう悪かろうの論理は適用されなかった。むしろ、高い料理より庶民の安い料理の方が美味しかったりする。ロシアでは勝手が違う気がする。欧米圏ということか。肉は高けりゃ高いほど美味いとよく聞くけど、そんな感じ?

23:00の門限には悩まされた。でも経験したことのない寮や下宿の門限と思えば楽しめる。めぞん一刻をこないだ読んだからだ。

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