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7月16日の日記

なるべく早く観ないとどんどんネタバレくらってしまうな〜と思って、朝10:10からの回の『君たちはどう生きるか』を観に行った。
昨日の時点ですでに主題歌と主要キャストを知ってしまって、正直、作品の鑑賞に普段は別に邪魔にならない要素なんだけど、公式が黙ってるんだからなるべくゼロな状態で観たいよなという気持ちもあった。

以下、映画『君たちはどう生きるか』のネタバレを含みます。











だいぶとっちらかってるな、というのが途中からずっとの感想だった。情報量の多さと説明の少なさ。宮崎駿本人が意識したかどうかはわからないが、「集大成」という見方をする人もいると思う。詰め込まれた要素はシナリオに限らず、特に最近の(最近ではないか)、ポニョや千と千尋、風立ちぬあたりからの既視感を感じるカットやシーンも多かった。作画監督が別の人だったから、そこは「宮崎駿らしいカットや動き」を意識した結果かもしれない。

全体的には、自伝と遺書を兼ねたみたいな映画だなと思った。監督本人の幼少期がモデルというのが明らかで、『君たちはどう生きるか』=『私はこう生きた』みたいな感じ。現実の世界(1944年)とファンタジーの世界(石と死者の世界)を行き来する主人公(少年少女)の成長譚、という意味ではこれまでのジブリ作品から大きく外れてはいない。ただその手触りがとにかく異質だった。

ポニョや千と千尋でも、物語がめでたしめでたしと終わっても後に残る得体の知れない気持ち悪さというのはあった。そこが宮崎駿作品の大きな魅力の一つなわけだけど、君生きの何かぬったりとした感触はその比じゃない。整理されたストーリーラインに乗っかって気持ちよく観終われる、というのがいわゆるウェルメイドな娯楽映画の作法だとしたら、そういうものは放棄してもとにかく言いたいことがあるんだ、美しかったり整えてあったりとかそういうのはもういいんだ、というのが君生きという映画だったと思う。

そんで。ウェルメイドといえばそれは前作の風立ちぬであって、原作の要素も活かしつつ、パヤオ本人の創作への態度と来し方をあらためて見つめ直した大傑作エンターテインメントだった(と思っている)。もうこれを撮れたら死んでもいいね、観せてくれて、ありがとう……という気持ちで鑑賞するたびに号泣してしまうのだが、その後にこれを作ったか!という衝撃がもう。すごかった。

コナンが大好きで、小学生の時にラピュタを劇場で観てからのまあよくいる普通の宮崎ファンとして、ずっと「いつか宮崎駿の作った駄作が観たい」と思っていた。今回、それに近いものを観られたのかもしれない。焼き直しとも思える発想や表現に、衰えを感じた部分もある。でも面白いんだ。本当に困ったことに。あとけっして失敗作でもない。同じ題材で、パヤオならもっと上手いことまとめられたはずなのは明らかで、でもあえてそうしなかった、ということがもっと明らかなんだよな。ごめんな!と振り上げた渾身の握りこぶしで、ボコボコにぶん殴られた。受け取らざるを得なかった、パヤオの奔流のような魂を。

それは、創作者としての業である。創作をやめられなかったし、でも創作で世界を変えることは出来なかったよ、という懺悔の咆哮だった。自分はそう受け取った。航空機製造の会社を営み、戦争特需(他人の死)で豊かに潤う恵まれた家庭で育ったという自身の罪悪感がパヤオ作品には通底してあり、マザコンとロリコンとあわせて作品の三大柱だと思うんだけど、今回、それらの全部を身も世もなく放り出すようにして描いていた。まったくプロフェッショナルの態度ではない。「最後のわがままなんで、すみません」と言わんばかりじゃねえか!!駿!!!

でもしょうがねえよな、遺書だもん……

という、寂しさ。

宮崎駿に何の思い入れもなければ、「なんかバランスの悪い変な映画だったね」で済ませられる作品だとは思う。ああ、一日経って思い返しても、まったく冷静ではいられない。本当に、どこまで人を傷つけたら気が済むんだろう、あのお爺さんは。

というのが、一回目の感想。
次はもっと小さなスクリーンで観たいと思いました。
駿、ありがとう。




君生きを観終わってかなりくらってしまい、俺この後で在廊とか出来んのかな……と思いながら松屋で牛丼を食って、Tシャツ展で参加している〈THE blank GALLERY〉へ向かった。

別に、普通に出来た。

お客さんや作家さんとも話して、Tシャツも一枚売れてほっとして、でも今壁に展示してる絵はやっぱり失敗で、いつか俺にも傑作と思えるような絵が描けるのでしょうか?とか思いながらなんとなく過ごすことができた。

あと営業時間の最後に、ギャラリーオーナーの佐藤さんに聞いた話が凄すぎてパヤオの衝撃を上書きされてありがたかった。だいぶポジティブになれたので、明日も絵を描こうと思う。終わりでーす!!




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