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「Mリーグ」生放送を23時までに終わらせるには

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◆はじめに


最近、Mリーグ界隈でこの件がちょっとした話題になっているらしいですね。
元・在京テレビ局社員であり元・競技麻雀プロである私が、なんとなく書かなきゃいけない気分になったので、個人的な考えを書かせて頂きます。

私はこの話題を黒木真生氏のnote「麻雀番組の放送時間は短縮できるか」(https://note.com/kinmakuroki/n/nfe26cf755e88)で知ったんですが、この記事中にもあるようにそもそも「黒点棒@Mリーグnote」さんのnote「Mリーグ 放送長すぎ問題について」(https://note.com/cute_mango814/n/nffa930b754c4)が問題提起になったとのこと。

そしてこの記事中には萩原聖人氏のインタビュー記事(萩原聖人「自分の言葉に責任を取る」プロ根性 最悪のシーズンからの反攻「必要じゃないと言われれば辞める」https://times.abema.tv/articles/-/10039538)も引用されており、これは「放送時間を短くする」ことよりも、「子供が観られる時間(23時まで)に終わる」ことが主眼になっています
どちらに重きを置くかでこの問題の根本自体も変わって来ますが、ひとまずは「Mリーグ」の放送について考えるために、現状の形式のMリーグ中継を「23時までに終わらせるには」という目線で考えてみたいと思います。

本題からそれますが、萩原聖人氏はいろんな意味でもっと評価されていい人物ですよね。
このインタビューでも、自身がプレーヤーとしてある意味窮地に立たされながらも、Mリーグ全体・麻雀全体を俯瞰して、価値ある提言を行っている意識の高さは、余人をもって代えがたいです。
私自身、20年ほど前にはよくセットに呼んで頂いてたんですが、もっと金だけ持ってる芸能人や業界人をバンバン呼んで自分の強さに酔いしれてもいいところ、お代は極力抑えて必ず面子に1人はプロを入れて(私は当時も今も元プロのアナログおじさんなのでこれに含まれません)、対局の質の高さを担保する、という向上心の塊みたいな方でした。20年間「若手プロ」に影響を与え&自分でも吸収して、麻雀観を進化させ続けて来た方なので、数多いる「最近麻雀プロの肩書を手に入れたタレントさん」たちとは、一線を画す存在なのは間違いありません。
当時の萩原セットは「自分がトップにならない飛ばしはチョンボ」みたいな面倒臭い(笑)ルールでやってましたし、それだけ自覚と自負のある方なので言動がやや“偉そう”に感じられることもあるのか、ごく一部批判する方もいたかとは思いますが、私から見れば「実際、麻雀界の為に尽力している“偉い”方」と思っていたので当然の言動で、本当に尊敬しています。ちなみに最新の著書「麻雀 逆境の凌ぎ方」では、謙虚に自分の読みが超トップレベルには及ばないと認めた上で、その次元での対処の仕方などを書かれていて、むしろ我々凡人には最もタメになるスタンスと言っても過言ではありません。実際、競技麻雀の実績があるトッププロほど、忖度ではなく萩原聖人プロの雀力は認められてますよ(まあ何事も例外はありますが)。

さて…余談が膨らみすぎたので、いきなり本題に入ります。
「Mリーグ」中継を23時に終わらせるには、主に以下の3つの方策が考えられます。
◆麻雀の対局時間を短くする
◆1戦目の開始時刻を早める
◆1・2戦目間のインターバルを短くする

以下、それぞれ考察してみましょう。

◆麻雀の対局時間を短くする

フリー麻雀ならば1半荘は平均50~70分程度、2戦で正味1時間半~2時間半では終わりそうなイメージですが、「Mリーグ」では3時間半以上掛かることがよくあるので、結局番組としては19時~23時に収まらない、という図式のようです。
これの原因には
・視聴者が見やすいように、所作がゆっくり丁寧
・チーム戦で考慮する条件が多いので、長考が多い

という2つの要素があります。

まず「視聴者が見やすいように、所作がゆっくり丁寧」であることですが、これは今のペースが適当だと考えます。

一つには、カメラワークの問題があります。
何をツモって何を切ったのか、という麻雀というゲームの本質をリアルタイムで明確に分かるように中継する、というだけでも一定の「ゆっくりさ」は必要。プラス「ツモる瞬間」或いは「打牌直後」のタイミングでユニフォームを着た選手を表情を抜くのは、チーム戦で感情移入するには重要で「Mリーグ」に必要な要素と思えます。
また打牌に対する下家の「チー」発声は、他家の「ポン」発声がないことを確認するためワンテンポ置く、というのも「結果的に晒していないターツや手牌構成をバラさない」という、麻雀そのもののゲーム性を担保する為には極めて重要。フリー慣れした方には少しもどかしく思えるかもしれませんが、競技麻雀として頂上を目指すならば、これは放棄してはいけないと思います。「鳴き」に関して言えば、他の競技麻雀中継ではややおざなりにされがちな、鳴いた時に晒した面子を天井カメラから捉えるのも「Mリーグ」映像の親切さの大きなウリです。
これら既に提供している「サービス」を低下させて速度を重視するのは、既に定着しているファンに対しては裏切りに値する(ちょっと大げさですが)行為でしょう。これらを兼ね備えた一連の映像を作るには、現状の摸打・所作の速度が最適解ではないでしょうか。強いて言えば、ツモの際に力を込めてゆっくり盲牌するなど、視聴者もツモ牌を見られないタイミングでの「ゆっくり」行為は僅かながら「無駄な遅延」と言えそうですが、これについては解決策を後述します。

続いて「チーム戦で考慮する条件が多いので、長考が多い」ことですが、これも打牌にかける時間込みで麻雀の対局を構成する要素ですから、ある程度は許容する方が自然だと思います。
ただ、「他家の過去の手出しツモ切りを脳内で再生して、他家の手牌構成を精密に想定する」など、トッププロならば可能な作業をこの「長考」中に行っているとすれば、長考への実質的な規制がない(常識的に許容できないレベルの長考をあまりに度々行えばイエローカードが出る可能性はありそうですが)現状は、「長考したもん勝ち」になり競技としての公平性を欠くとも言えそうです。
視聴者としても待たされて、競技としても公平を欠くとすれば、これは真っ先に是正すべきでしょう。

解決法は、ただ一つ。
「長考を避けるように通達する」などの曖昧なものではなく、「山のツモ牌に触れてから打牌までの時間制限を設ける」、これだけです。
「フジテレビONE」で放送されている麻雀バラエティ番組「極雀(ごくじゃん)」では「手牌をツモって(牌に触って)から10秒経過で警告音。さらに5秒経過時点で打牌していない場合は場に1000点の罰符を供託する」という罰則が存在しますが、例えば「30秒経過で警告音、さらに5秒経過時点で打牌していない場合はイエローカードが出される」などにして、サッカーと同じく「イエローカードは日を跨いで累積する、累積2枚でレッドカードになりその後8試合出場停止」「選手個人の出場停止期間の年俸は減俸し、チームに対しても賞金を一定料率で減額する」などと明文化すれば良いのです。
ただ「○秒経過すると強制ツモ切り」などは、これまたゲーム性を損ねるので、これまで積み重ね目指してきたものと相反します。あくまでも選手個人やチームへのペナルティを課して対処すべきです。そしてもう一つ重要なのは、「ツモ牌を手牌に寄せてから」ではなく、「山のツモ牌に触れてから」を計時の起点とすること。これにより、盲牌に時間を掛けるような無駄な所作もなくなると思います。

◆1戦目の開始時刻を早める

「Mリーグ」の特徴として、
・対局前のチームポイント状況説明などのやり取り
・入場時のゆっくり時間を取った選手紹介

などがあり、これが放送開始は19時なのに、対局開始は12~15分後という状況に繋がっています。

後者「入場時のゆっくり時間を取った選手紹介」に関しては、ゆっくりと言っても尺にして僅か2分間程度ですし、「Mリーグ」のセットとも調和した荘厳な世界観の完成の上で必要なピースだと考えます。何なら「Mリーグ」企画書の1ページ目に書いてありそう。

続いて「対局前のチームポイント状況説明などのやり取り」を減らすかどうかですが、これは出場するプロの立場とすれば、絶対にしっかりやっておいて欲しいところです。
純粋な一発勝負とリーグ戦の1半荘とでは戦い方は大きく違うので、それこそ従来の麻雀番組「麻雀最強戦」などで、一発勝負的な対局を見慣れた層からすれば、説明なしだと違和感のある打牌やリーチ判断などが頻発することになりかねません。
もちろん対局中に適宜コメントとして差し挟むことも可能ですが、客観的な情報を正確に伝えるのが苦手な実況者もいるので、開始前にしっかり映像・テロップなどで周知しておくに越したことはないでしょう。

これに関して、「序盤はいらないのでは」「残り○戦以降で良いのでは」という意見もありますが、例えば3節目まででトップ6回とトップ0回のチームが発生すれば、シリーズ開始2週目にしてチームポイントに600~700ポイント差がつく可能性も十分あります(ちなみに2022-23シーズンでも2週目火曜日時点で300ポイント差が付いています)。
700ポイント差が付けば最序盤でも打ち方が変わる可能性はあり、少なくとも前提としては視聴者に周知しておくべきでしょう。つまりレギュラーシーズン通して、同じスタイルの方が良いと思います。ポイント差によって状況説明をする/なくす/短くするを臨機応変に変える、というのもあまり現実的ではありません。

放送側もシーズンの途中で番組フォーマットが変わるのは煩雑ですし、視聴習慣的にも「19時15分ごろ開始と思って視聴準備していたのに、序盤だから19時05分に試合開始だった」とか、或いはその逆の事態が起こるのは、視聴者・番組側両方の不利益に繋がります。

ただし、だからと言って1試合目の開始時刻を早めるのが不可能だとは思いません。
放送時間が19時~23時半になることが多いとすれば、それを「18時半~23時」にしてしまえば、表題の「『Mリーグ』生放送を23時までに終わらせるには」はほぼ達成されるのです。

問題は、視聴率とCM料金でしょう。
旧来の「プライムタイム=19時~23時」という地上波CM価格の設定の発想では、番組時刻の前倒しは明らかに損です。特に近年は19時台の価値が下がり、23時台(旧来のプライムタイム外)の価値が上がる傾向があり、むしろ「19時半~24時」が得とされるぐらいでしょう。ただAbema麻雀チャンネルの視聴者層は独特だと思えるので、その特異性をどう判断してどう売っているかで判断は変わりそうです。
ちなみに、全盛期のプロ野球巨人戦は放映権1試合1億円とまで言われましたが(その真偽や正確な価格は立場上知っているのですが、道義的に言及しません)、その巨人戦でさえ地上波では試合開始からは中継していませんでした。18時プレイボールで19時放送開始、これと似たことをするのも一つの「『Mリーグ』生放送を23時までに終わらせる」解決策でしょう。18時半に対局開始しておいてAbemaプレミアム会員限定で生中継、19時からの本放送では数分間のダイジェストで本編に追い付いて合流する、なんてことも可能なはずです。
完全中継をしている現状のコンセプトに沿う現実的な方法としては、18時40分ないし18時45分から「もうすぐMリーグ」的な別番組枠を作って放送開始、ゆっくり振り返りや状況確認を行ったうえで、19時からの本放送では選手入場から始まって19時02分には対局開始、という形でしょうか。

◆1・2戦目間のインターバルを短くする

これを実行するには
・試合と試合の間のCM回数・本数を減らす
・対局後インタビュー2人を減らす
・ハイライトや実況解説やり取りや点棒移動・スタッツ表示などを減らす

などの方策が考えられます。

まず「試合と試合の間のCM回数・本数を減らす」ですが、これは完全に営業・収益マターなので、外野からは何とも言えません。
広告収入の最大化だけを考えれば、視聴者が目を離せない対局中、例えば各半荘の東場と南場の間にCMを入れてもいいはずなのですが、それをしていないというだけでも、藤田社長肝入りのコンテンツだけあって「麻雀」へのリスペクトをしっかり感じられる状況なのです。少なくとも、1試合目で20時54分を超えれば「一旦お知らせです」になってもおかしくないのに、半荘の間では切らないというのはファンにとってはありがたい「英断」と言っていいと思います。
この現状を踏まえると、もし営業的に重要であるのならば、せめて試合の間のたっぷりCMは入れさせてあげて、と思う次第です。

次に「対局後インタビュー2人を減らす」件ですが、これはある意味スター選手を揃えたMリーグ最大の強みと言っていいコンテンツなので、現行のサービスを低下させるのはやはり現実的ではありません。インタビュアーまつかよ(松本圭世アナ)の痒い所に手が届く質問の数々、何よりも選手自身が視聴者にしっかり説明したいことを語れる時間は、明らかに必要なものだと考えます。
またAbemaプレミアム限定公開の「裏インタビュー」が平行して行われていることを考えると、表裏2人ずつは恐らくベストなバランスなのでしょう。

そして「ハイライトや実況解説やり取りや点棒移動・スタッツ表示などを減らす」のも、僅かに尺を削ることは可能かもしれませんが、むしろ「ながら視聴」の視聴者をしっかり繋ぎ止め引き戻して次戦へと向かうには、有効な時間でしょう。
また解説の裏インタビューからの移動やコメント準備を考えても、連闘者の休憩やトイレなどを考えても、このインターバル期間自体をある程度ゆったり進行するのは必要なのだと思われます。

またここでの半荘全体を俯瞰する解説者のコメントは、自身の「麻雀観」を示す、ある意味腕の見せどころでもあり、渋川難波がMリーガーとなったサクセスストーリーにも不可欠のコンテンツだと思います。もちろん彼自身の実績や個人配信などでその奥深さは十分すぎるほど表現されているのですが、「Mリーグ」の番組フォーマットの中で輝いた事実は万人を納得させるのに必要なものだったでしょう。

ところで関係ありませんが、点棒移動のグラフでは、現状半荘中の最高点数と最低点数が座標の最大・最小値となっていますが、この座標の設定は一定の方が、半荘の性質が分かって良いと思いませんか?
真ん中あたりでチョコチョコ動いているいわゆる「小場」だったのか、大きく上下に振れているいわゆる「荒場」だったのかは、座標が一定でこそ伝わるというもの。例えば真ん中に25,000点・30,000点のラインがあって、下(X軸)は0点・上は50,000点というのがデフォルト、ここに収まらない場合のみSEと共にグラフがギュッと縮まって上下の座標が出現する、というようなもので良いのでは?と思います。

◆まとめ

・我々が考えるぐらいのことは、全て俎上に上げて議論した上での運営なりの「最適解」が現状、というのは間違いなさそう。
・現状の「Mリーグ」のCMの入れ方は、広告収入の最大化よりも「麻雀」自体にリスペクトを感じる形で、これに関しては我々ファンはもっと感謝してもいい。
・そんな中で、次の世代の為に「23時までに終わる」という目線は意外と漏れていた可能性もあり、流石は萩原聖人という問題提起。
・その為には、「前番組『もうすぐMリーグ』枠を15~20分程度作って振り返りや状況説明を済ませて、19時ちょうどに選手入場のスケジュールにする」「ツモ山に触れてから打牌までの制限時間を設け、ペナルティを課して最低限のスピードアップを図る」というのが、現実的な施策として考えられる。
・現状の見やすさ、カメラワーク、インタビュー、ゲーム性の担保などは世界観の構築としても既存ファンへのサービスとしても堅持すべき。

以上です。
これだけの施策だと、必ず23時までに終わるとまでは言えませんが、それでもバランスとしてはちょうど良い落としどころだと考えます。

ひょっとしたら「Mリーグ」叩きを期待した方もいるかもしれませんが、実は少なくとも番組・コンテンツとしてはめちゃくちゃ現状支持してるのがバレてしまいました。実際とてもよく考えられた、すごいコンテンツなんですよね。
ちなみに「Mリーグ」に参戦するスポンサー企業がコンテンツとしてどう評価しているか、それを踏まえてMリーガーにどういうヤバい話があるか、なんてことは、また別途書きますかね…

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