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「雀鬼流」の総本山、「牌の音」での思い出



2023年Mリーグで「雀鬼会」が話題に


Mリーグが開幕。

開幕直後の話題は何といっても、今年から参戦の「BEAST Japanext」の初戦、鈴木大介プロ「雀鬼流」の第1打が大きく取り沙汰されたことだろう。

「雀鬼流」とは、裏プロで「20年間無敗」とも言われた伝説の雀鬼・桜井章一氏が主宰する「雀鬼会」の掟を守る打ち方のこと。

  • 「第1打に字牌を切ってはいけない」 

  • 「ドラは聴牌まで切ってはいけない」

  • 「すべての打牌は3秒以内」

など、牌効率を考えればかなり不合理な”掟”が設定されている。
いかに不合理でもこれを頑なに守ることで、心と技術を鍛える(これは私の解釈です)ということなのだろう。

鈴木大介プロはこの手牌から8筒を切って物議を醸していた。

ちなみに私はこの手牌から字牌をどうしても切れないならば、8筒より5筒を切りそう。後に2筒シャンポンになった場合の出やすさと、後の守備(5筒引き戻し時のスライド8筒切りなど)を考えればそっちのが優位じゃない?
…って、こんな議論いらないか。

1巡目、何を切る?

配牌で上記の手牌をもらっても、第1打なので西を切ってのダブルリーチは許されない、というのが元祖・雀鬼流だった。
この状況になった某有名プロが、後ろ見をしていた雀鬼本人に「どうすればいいですか?」と聞いたところ、「引き戻す牌を切れ」と言われた、というのは都市伝説のように語り継がれている。

ちなみに「元祖~だった」と書いたのは、これに関してはその後「ダブルリーチの場合は字牌を切ってOK」になったという話を聞いたことがあるから。
ただ明文化されたルールに外部の人間はアクセスできないので、「元祖」の方も「修正後」の方も、そして都市伝説エピソードも、あくまでも伝聞の域を出ないのはご勘弁いただきたい。

なお雀鬼会が麻雀界を席巻したのは、20世紀終盤の話。
1992・93年の「麻雀最強戦」を雀鬼会メンバーが連覇したのがピークだった印象である。
それから30年経って、2023年のMリーグで「雀鬼会」の名前がSNSを騒がせたのは、おじいさん雀士としてはなかなか感慨深いものがある。

31年前、下北沢「牌の音」へ

そんなおじいさん雀士が「雀鬼流」に触れたのは、31年前。「雀鬼会」の総本山として営業していた麻雀店「牌の音」でのこと。
ちょうど最強戦を雀鬼流が席巻するちょっと前、「近代麻雀ゴールド」誌が雀鬼流の機関誌のようになっていたまさにその時期に、ちょうど大学入学で上京したので訪れてみたのだ。

初来店ということでアンケートを書かされるのだが、そこで雀鬼流をいつから知っていますか?みたいな質問があり、近代麻雀で取り上げ始めた頃から知っていたので「5~6年前」と書いたら、それを見たメンバーさんに「5~6年前から知ってるのになんで今まで来なかったの?怖かったんでしょ?ねえ、やっぱり怖かったんでしょ?」とすごい勢いで詰め寄られて、かなり驚いた。
当時まだ十代だったし来なかった理由は見りゃ分かるだろ、という感じだったのだが、お客さんの事情よりも「怖い伝説の雀鬼がバックについている」のを自ら感じたかったのだろう。こちらの言うこともロクに聞かず、自分の言いたいことだけをグイグイ押し付けて来て、その時点でまあまあ憂鬱だったが、私も私で「こんな奴、麻雀で負かしたい」とか思ってたような記憶がある。

雀鬼流体験のノーレートと並行して普通のテンゴのフリー営業もしているのだが、フリーも「雀鬼流」で打つことを強いられる、というなかなか不思議なお店だった。もちろん私はオンレを所望。

当時の時点でも、説明されたルールは意外と補則が多かった。
「ミンカン・加カンは絶対禁止」「アンカンは即リーチできる時のみ可」
などはたぶんずっと続いているものだが、
「一手替わりで役満がある時はリーチ禁止」という謎の項目も存在していた。へえ~。

「雀鬼流」強制のフリー対局


早速案内されたフリー対局。
微差トップ目で迎えた南2局南家。8巡目に北家・東家が相次いでリーチ。
既にその前から私は聴牌していたが、ある事情でリーチができなかった。

謎ルールのためにリーチできない手牌

そう。「一手替わりで役満」なので、「雀鬼会ルール」でリーチできないのだ。
え~マジで?5萬が1枚飛びだから、2軒リーチならばもうこのまま追っ掛けて跳満倍満にしたいんだけど。だいたいドラ独り占めしてるんだから、先制リーチ打ってりゃ展開違ったんじゃないの?
とか思いながら、ツモった牌が、まさかの…

2軒リーチを受けて、何を切る?

もうこんなの、カンして追っ掛けてめくり合いじゃ~!
「一手替わりで役満がある時はリーチ禁止」
って、リーチできないのか。
じゃあアンカンでダマテン続行するしかないな…
「アンカンは即リーチできる時のみ可」
待てよ、リーチできない手牌(リンシャンから四暗刻変化牌引いてきた時のみリーチできるけど、確定してないからダメ)だから、アンカンもできないのか。

はぁ?!
この手牌、「6枚持ち筋の2軒リーチに通ってないドラを切る」「2軒リーチに全然通ってない牌を切って聴牌を崩す」の二択しかないってこと?
しかもここから全く自分の意志ではない選択で、ドラ打って振り込んでも聴牌崩してトップ逃しても、負けたお金は自分で払わなきゃいけないの?!

気が狂いそうになりながら3索を叩き切ったらたまたま通って、その後横移動で終わったけど、あまりにも納得がいかない。

最初から最後まで違和感の連続


結局この半荘はトップ取って、そこから1・1・2・1着。
2着の半荘は、ドラ引きかテンパネで逆転の条件があったので、思わず暗刻の牌が出て大ミンカンしたら、すごい勢いでメンバーさんが飛んできて、すぐに戻されて捲れず。まあその瞬間雀鬼流ルール忘れてたこっちが悪いけど、これも「なぜカンしちゃダメなのか」案件。

最初から○時までしか時間がないと伝えていたし、それを逆算して4回目に入る前に「ラス半」を告げたのだが、「今まで怖がってお店に来られなかった」若造が勝ち逃げするのを許せなかったのか、メンバーさんはもうちょっと打って行けとかなり食い下がって来て、もう気持ち悪かった。

もちろん対局時の話は、「雀鬼会ルールに従って打ちます」と納得して自ら卓についているのだから、すべては自己責任。お店になんの文句もない。

私が経験したような手牌・状況では全く納得感がないルールで、補則の多さからもつぎはぎで不合理をカバーしようとしてしきれていない、という印象だったが、もちろんそんな「合理」よりも、鍛えて大切なものを得ようとするためのルールなので、このお店に限ってはこれで問題ないのだろう。
このルールで金賭けさせるのは、(たまたま私は勝ったけど)カツアゲの一種になりかねないよなとは思ったが、その日の勝ち負けやお金のやり取り以外のものを求めるために行く場所だと割り切るべきお店なのだろう。そう、このお店の趣旨に合っていないのは私の方なのだ。

そんな思いでお店を後にしたが、まあメンバー(私が触れた1・2名だけだとは思うが)の接客はどう考えても酷かった。
その当時も「山が高くなると、裾野は遠くなるんだな」というような感想を抱いたが、どこの世界にも「虎の威を借りるクソ狐」みたいなやつはいるということなんだろう。

鈴木大介プロ、今後はどうするの?


で、鈴木大介プロ。
本当にずっと雀鬼流で打つの…?
上記の補則なども含めてどこまで厳密にやるのかでだいぶ変わるが、応援している人もしていない人も「負けた時の言い訳」が打ち手以外の外部にあるような状況は、ちょっと歓迎できない気はする。
どうやら禁止されてる加カンはやったとのことで、厳密な雀鬼流ではなさそうだが、果たして今後はどうなるのだろうか。

「歓迎できない」とは書いたものの、IQ低い人の不合理な打牌で他の人の運命が絶えず左右されることもあるのが麻雀の常なので、どんな打ち筋であっても他人の麻雀を否定してはいけないのもまた真理。
「雀鬼流はMリーグでやるべきではない」が通るならば、「IQ120以下はMリーグで打つべきではない」にして、テストを課して欲しい、というのがおじいさん雀士の理想。

最後何の話だよ。

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