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ハピバト!第003話 怪しいメール

HAPIBATO!「Episode 3 invitation」鈴山八広


 大学三年になったオレと就職した瑛斗(えいと)先輩。
 瑛斗先輩が言っていたようにオレ達には成功しているアーティストが持っている『一歩踏み出す勇気』も『熱量』も足りていない。ただ現実に流されていく、ごく普通の人間なんだ。

 このままオレも普通に就職して普通に生きてくのかな。

 いつものように布団に寝転びながらスマートフォンでSNSを眺めていると、見たこともないような映像が飛び込んできた。
 それはアバターを使って、リアルタイムでパフォーマンスするもの。

 これなら……オレも先輩も踏み出せるかもしれない。
 誰でも配信が出来るし、日本中、いや世界中にだって簡単に瑛斗先輩の歌声を届けられる。

 考え出すともうワクワクが止まらなかった。
 オレは駆け上がる為の施策を考えるため、色々と調べ始めた。
 ちゃんと準備が出来てから瑛斗先輩に伝えよう。


 ◇

 二月四日。

 SHOWLIVEというアプリで初配信をするという『epito(エピト)』という人物に目が留まった。
 二十時からってことはもうぐじゃん。
 オレはこの人の配信を見ることに決めた。

 そして二十時。
 オレは鼻からお茶を噴出した。

「瑛斗先輩!!」

 そう、画面の中にいたのは紛れもなく瑛斗先輩だった。
 相変わらず緊張していたけど、歌だけはめちゃくちゃ上手い。
 リスナーさんの反応も上々でオレも嬉しくなった。

 なんだ瑛斗先輩、諦めてなかったんじゃん。

 配信について色々思うところはあるけど、それはこれからオレがカバーしていけばいいと思う。
 大丈夫、やれる。
 オレは何度か行われた瑛斗先輩の配信を見てから電話をかけた。

「もしもし、瑛斗先輩!」
【あ~八広(やひろ)~? どうした~?】
「エピト……って瑛斗先輩ですよね?」
【……えっ!!】
「オレ、初配信から見てます。やっぱ瑛斗先輩の歌、すげーいい!! オレ感動してます!!」
【……ごめん】
「なんで謝るんですか?」
【だって、八広に何も言わなかったから】
「あはは、そんなこと全然気にしてないですよ。それより瑛斗先輩が一歩踏み出したことがすげー嬉しいです!!」
【そっか……ありがとう】
「で、瑛斗先輩! 相談なんですけど、俺もその配信にゲスト参加していいですか? 瑛斗先輩の歌は凄いけど、他の人と同じことをしてはダメだと思うんです。オレ達が力を合わせてクリエイティブなパフォーマンスを作り上げていったら、凄いものが出来ると思いませんか?」

 オレが力強く言うと瑛斗先輩が吹き出した。

【あははは。八広って凄いな。僕に足りない熱量がある。いいよ。むしろ一緒にやろう!】

 瑛斗先輩はこのまま歌うだけでいいのかって悩んでいたらしい。一人で考えるより二人で考えた方が絶対良い案も浮かぶだろうしって快諾してくれた。

 そうしてオレは瑛斗先輩の配信にゲスト出演を果たした。
 もう、めちゃくちゃ楽しくてずっと笑ってた。
 この気持ちを伝えたくて配信終了後、オレは瑛斗先輩に電話をかけた。

「瑛斗先輩! すげー楽しかったです!!」
【僕も八広のおかげで凄くたのしかった。それでさ、配信していて思ったんだけど、八広もSHOWLIVEやってみたら?】
「え? オレっすか?」
【うん、向いてると思う。そしてさ、週に何度か二人で配信する日があっても良いなと思うんだけど、どうかな?】

 配信が二つになれば露出が増えるし、相乗効果も狙えるかもしれない。
 それに自分でやらないと分らないこともあるはずだ。
 何より配信が凄く楽しかったし。

「いいっすね! やりましょう!!」

 オレが力強く答えると、瑛斗先輩が笑った。


 ◇

 俺たちが配信を始めてから約一ヶ月が経った。
 一応順調と言えると思う。
 だけどもう一歩先を行くためにVRを使った配信もしてみたい。

「なんか作るの難しいなぁ~。作ってもらうのもお金がかかるし、無料のじゃなぁ~」

 そう、オレたちには技術力がない。かといって何十万も出す勇気もなく……。
 そんな時だった。
 オレのパソコンに一通のメールが送られてきた。

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ハチピ様

始めまして。
私はG社の研究員です。
そうですね、S.S.と書いてエスツーと呼んでください。

エピト様とハチピ様に同内容のメールをお送りしております。

アバターとワールドデータを添付いたしました。
以下のURLよりダウンロードしてください。
daf;lskajg;airutiae

このデータで、G社の計画を阻止してほしいのです。
まずはお送りしたアバターを使い、用意されたワールドに行って下さい。
そこで次の指令を送ります。

では、宜しくお願い致します。
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「何これ、めっちゃくちゃ怪しいんですけど!!」

 怪し過ぎて笑ってしまった。
 ちなみにハチピっていうのはオレのハンドルネームね。

 オレはさっそく瑛斗先輩に電話をかけた。

「あ、瑛斗先輩? メール届いてました? そう、めちゃくちゃ怪しいですよね! でもG社って言ったらVRの超大手企業ですよね」
【怪しいけどさ、ちょっと気になる。開くだけ開いて、もしデータがあったら行ってみるっていうのはどう?】

「瑛斗先輩って意外とチャレンジャーなんですね。うーん、ウイルスとかじゃないといいな~。でもこのメール文でググっても何も出ませんね。なんか漫画みたいなことが起きたりして。だって『G社の計画を阻止せよ』って何かわくわくする」
【僕達に足りないのは一歩踏み出す勇気だよ! なんでも怖がってちゃダメなんだ。やろう!】

 瑛斗先輩は配信してから凄く前向きになった。オレはそんな瑛斗先輩を応援したくて、ダウンロードすることに決めた。
 そしてそこにあったのは、ウイルスなんかじゃなく……。



サウンドノベル sound novel


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