ハピバト!第001話 衝撃!
HAPIBATO!「Episode 1 Impact」 鈴山八広
大学のキャンパス内はいつも以上に賑わいを見せている。風船が飛んでいたり、屋台が並んでいたり、派手な衣装に身を包んで騒いでいる人がいっぱいいたり、誰もが楽しそうに過ごしていた。
そう! 今日は大学生になって初めての文化祭だ!
「お、八広(やひろ)~、おはよ~! 待ってたぜ!」
キャンパス内を歩いていると、同じ学部の友達が声をかけてきた。
「おはよ~。オレ、これから始まるカラオケ大会行く予定だけど、一緒に行く?」
「はぁ? そんなところじゃ女、引っ掛けられないじゃん!」
友達は顔をしかめる。
「ははは、オレ、引っ掛ける気ないけど。いいよ、オレ一人で行くし。じゃ、またあとで!」
何か言いたそうな友達を残し、オレは野外ステージが設置されている場所へ急いで向かった。
そんなことより音楽!!
それも生のステージ!!
もちろんバンド演奏も全部見るつもりだ。
ウキウキしながら野外ステージの前に立った。
おお~! すげ~~。
大学の野外ステージはかなり本格的で、大きなスピーカーに、ライト、ドラムにマイク、よく分からないけど色々な機材が沢山置いてある。そして、そのステージを彩る観客達。
その場所は凄くキラキラと輝いて見えた。
◇
「エントリーNo.8。三年の……みっ……水木瑛斗(みずきえいと)……と……いいます」
八番目に出てきた人は、もの凄く緊張しているらしく手足がガタガタと震えている。かわいい系男子? がこう震えてるとなんか可愛いな。でもこれじゃー、歌詞も飛ぶだろうし、声も上手く出せないだろ。どうしてこんなところに出てきたんだろう? 罰ゲームか? でも見た目は悪くないし、嫌がらせとかじゃないとは思うけど。
前奏が大きく鳴り響くとその人は俯き、目を伏せた。
音に意識を集中しているのかな? とりあえず最後まで歌えるように頑張れ~。
そんな風にオレは同情するような目で八番目の人を見上げていた。
――――っ!!
しかしそれは一瞬で覆り、オレは息を呑む。
たった一フレーズ目でここにいる全員が心を奪われたと思う。
それくらい凄かった。
重厚な声に心に響く音色。
全身粟立つのを感じながら目が離せなかった。
そしてその時間はあっという間に終わりを告げ、会場内から大きな拍手が上がった!!
こんなに一曲が短く感じたことはない!!
もっと聴きたい!!
もっと色々な曲を聴きたい!!
オレは慌ててプログラムを開き、エントリーNo.8の欄を見る。
水木瑛斗。
この人が絶対に優勝だ!!
◇
予想通り、水木先輩が優勝した。
オレはステージの裏へ急いで周る。
そこには友達に囲まれた水木先輩の姿があった。
「水木先輩!!」
オレは何も考えずに声をかける。
側にいた人たちが何だろうとオレのほうを見ていたけど、高揚感が大きくてそんなことは気にならなかった。
「えっ、何? 誰?」
水木先輩が友達と目を合わすと、周りの友達たちは首を傾げている。
そりゃ誰も知らないでしょ。今年入ったばかりのサークルもしていない男なんて。
オレはメガネのブリッジを上げて姿勢を正す。
「オレ、鈴山八広って言います! 水木先輩の歌に感動しました!!」
「あ……うん、ありがとう」
困っている様子の水木先輩を無視してオレは真っ直ぐ見据えた。
握り締めたプログラムがくしゃっと折れる。
「オレと音楽、一緒にやってください!!」
オレは何も考えずに声を張り上げた。
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