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[詩]「針を抜いて。」

刺さった針を抜く。


手、腕、その次は心。


傷だらけの身体と心を拭く。


涙が溢れる。


少しずつ

痛みから抜け出す。


ゆっくりでいい。


私だって出来るはずだ。


そんな風に

自分を鼓舞して。


顔を拭って、針を抜く。


傷だらけの身体と心。


全身に

消毒液が染みていく。


絆創膏と包帯。


痛みと辛さのグラデーション。


滲むような思い出を

丁寧にしまいこむ。


良いことばかりじゃなかったけど。


悪いことばかりじゃなかった。


それだけだった。


また、針を抜く。


少しずつ

気づいていく。


一歩踏み出せない恐怖の中でも。


やりたいことがたくさんある。


なにより。


今のままじゃ

耐えられないこと。


痛みを越えて。


針を抜く。


曇った空が晴れるように。


薄れていく不快感。


俯いた顔が捉えた景色。


抜いた針が

方角を指し示す。


小休止。


心と身体を休めて。


全身の縫い目を繕って。


静かに

未来の方角を見つめる。


やがて。


痛みから抜け出して。


目を開ける。


意識して見上げた

あの晴れ渡った青空は。


息を飲むほど、綺麗だった。


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