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『詩』「チグリジア」

最近分かった自分にはセンスがないこと才能がないこと
最近分かった叶わない夢もあるってこと
ずっと前から知ってた自分には出来ないって
それでも前に走った走るためなら大切なものも切り離した。
気づくと目の前には暗闇が広がっていた。
分からなかったなぜ光ではなく暗闇が見えるのか
なぜ歓声ではなく無音が続くのだろうか
なぜ達成感ではなく後悔が生まれたのか
分からなかった分かりたくなかった

後悔が生まれたあの日から何年もたったのに未だに目の前に暗闇が広がっている。
何度隠そうとしても何度白色を足してもグレーにもなってくれなかった。
夢が叶った人を見るたび自分の存在意義が消えていく

気づけば気持ちを紛らわすために朝から酒に溺れていた
こんな人間になるために小さい頃から走り続けてきたのではない
そんなこと頭の中でも気づいている
のに
あの日から一歩踏み出すのが怖くて出来ない

ただ毎日泣いていた
一人明かりもつけずただ部屋の隅で
泣いていた。

そうしているうちに金がなくなり心のよりどころであったお酒も買うことができなくなってしまった。
私は完全に黒に染まってしまった。
こんなはずじゃないのに私はただスポットライトの光にあたりたかった。
それだけなのに
温かさをくれる人はもういない
私を愛してくれた人ももういない
私にはもう光が差し込むチャンスすらないのだ
雨音が鳴り響く日に私は傘も持たずに家を飛び出した。
昔のように走れなかった
でもただひたすらにとある場所に向かっていた
川だ
何で川に来たのかは自分でもわからない
でもきっと気づいていた。
これから川に身を投げるんだなと
死に対する恐怖心なんてその時にはなかった
なのに身を投げる前強く念じた
「助けて」と

私はずっと助けてほしかった。
いつも助けを求めても後回し
気づけば一人抱え込むようになっていた
もし、
もし夢が打ち砕かれたあの日私を励ましてくれるひとがいれば
こうはならなかったと思う。
念じてすぐに私は迷いもなく川に飛び込んだ
冷たかったどこか心地よかった
やっと私が好きになれたような気がした。
もういなくなっちゃうのにね
もしまた人として生まれ変わるのなら
今度はもっと自分らしく生きてみたいと思った

消えゆく意識の中で私は静かに微笑んだ。


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