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随筆  「めっちゃ美味しい」ってどんな味? ―「めっちゃ」という言葉―

1 「めっちゃ美味しい」

TVのグルメの紹介番組などで、タレントが料理を口に入れると、「めっちゃ美味しい」と言葉にする。たぶん「大変美味しい」では表現がありふれていて、感動を表現する言葉として物足りない感じがして、この言葉を使うのであろう。

2 「めっちゃ」の元々の意味

「めっちゃ」という言葉は、「めちゃくちゃ」の短縮形であろうと推察される。「めちゃくちゃ」を手持ちの辞書で引くと感じで「滅茶苦茶」と表記されている。記載されている意味を引用する。
1.まったく筋道が通らないこと。度外れないこと。また、そのさま。
2.どうにもならないほどこわれたり、混乱したりすること。またそのさま。

3 どうして「めっちゃ美味しい」と言うのだろう

この辞書の説明から判断すると、「めっちゃ美味しい」の「めっちゃ」は2.の意味から派生した用法であるのではないかと推察される。この意味は辞書の2.の意味の「混乱したりすること」に由来するのではないだろうか。この意味に解釈すると、「自分の気持ちが混乱するほど美味しい」という意味になる。ここから「大変」という言葉を「自分の気持ちが混乱するほど」という意味の「めっちゃ」という言葉に置き換えると、「大変」では表せない感動した意味合いが加わってくるように思える。

4 元々否定的な意味の言葉を、敢えて使う理由とは

私は、「めちゃくちゃ」という、元々は否定定な意味を表す言葉なのに、敢えて使うようになったことが面白いと思う。私の勝手な推測に過ぎないが、「大変」という言葉の意味を強める言い方では物足りなくなり、「めちゃくちゃ」という「強い破壊的な意味と語感」を与える言葉を敢えて使うことによって、人々を「あっ」と驚かせたいという心理が働いたのではないだろうか。確かに使い始めた頃には、そのような効果があったと思われる。しかしながら、「めっちゃ」という言葉に私たちはすでに聞き慣れて、現在「破壊的な意味と語感」を感じる人は少ないであろう。

5 新しい表現が出る頃では


「言葉は生き物のように変化する」とも言われるそうであるなら、もうそろそろ「大変」を意味する新しい表現が出て来ても不思議ではないとも思える。広島県や山口県では、大変を意味する「ぶち」が使われている。読者の皆さんの地域では「大変」という意味でどんな言葉が使われているでしょうか。全国各地で「めっちゃ」に代わる言葉を競うと「めっちゃ面白い」いや「ぶち面白い」かもしれない。

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