三つ葉のクローバー#4

コーポクローバーの契約手続きはすぐに始まった。

占い師のおばちゃんが大家さんと電話でやりとりをして、ほどなく話はまとまった。

契約の段になると、宅建の資格をもつ生協の職員が奥のカウンターから出張ってきた。黒縁メガネをかけ、髪の分け目がきっちりとしている、いかにも真面目そうな男性である。

おばちゃんから、家賃や敷金、更新料といった契約内容と、ゴミの出し方などの細々とした決まり事の説明を受けた。そのあと、黒縁メガネの職員から契約に間違いがないか最後の確認を受けて、契約書に判を押した。彼は契約の時にだけやってくるらしく、おばちゃんとの分業制が僕にはなんだか奇妙に感じた。

住むところが決まったら、今度は家具や生活用品を揃えなければならない。

冷蔵庫をはじめとする一部の生活用品は、春休みを利用して父が車で持ってくる手筈になっている。父は仕事で忙しいらしく、持ってきてすぐトンボ返りの予定だ。

僕は量販店を回ってひとつずつ家電を購入するのも面倒だと思った。そこで、生協の新生活パックというもので家電を揃えようと思っていたが、学費がかかることを気にする母は、リサイクルショップで買うほうが割安だといって譲らなかった。

新居の近くにあるリサイクルショップに行ってみると、卒業生が去り際に売り払ったと思しき家電ばかりでろくなものはなかった。結局、母のお眼鏡にかなった、ほとんど未使用の電子レンジだけを買うことにした。

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