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モンゴルでの乗馬体験から考える、これからのモビリティの在り方

先日、モンゴルに旅行に行ってきました。

モンゴルってどんなところ?何があるの?とよく聞かれますが、
モンゴルをテキストデータにしてマイニングしたら、おそらくこんな感じになります。

あれこれ説明するよりもわかりやすいですよね。

いろいろと旅をしている中でも久しぶりにベリーハードな旅で、
書きたいことが山盛りにあったのですが、それはまた今度にします。

旅の感想よりも、仕事柄コネクティッドカーの分野に関わる上で、
いろいろと考察のヒントになることがあったので、記事にしてみます。

背景として、Industry 4.0がドイツから発信されて7年が経ち、
オートメーションから機械学習・データ活用、貨幣経済から信用経済など、
国内外の各業界で様々なイノベーションが起こっています。

自動車業界も例に漏れず、単なる移動手段としての車・製品売りから、
“モビリティサービス”としてクルマというサービスを提供しよう、というコンセプトに大きく舵を切ろうとしています。

特に変化の中心になっているのが「自動運転」「電動化」「シェア」「コネクティッド」の4分野で、製造業だけではなく、IT・半導体・通信・電力・電機・エネルギーなど世界中の様々な業種の企業が、この分野に投資・事業展開を進めています。

かつて1900年ごろ、移動手段が馬・馬車から蒸気機関・自動車へと変わっていったのと同じように、今、自動車産業・自動車社会にも大きな変革期が訪れています。

そんな中、私も「モビリティってそもそも何だろう・・?」と考えており、
いろいろと調べていた中で見つけたのがこのとんでもない記事でした。

この記事は、2012年にトヨタが初めてプラグイン・ハイブリッド車(PHV)を発売した際に、“電気でもガソリンでも走れる車”と“馬”では、どちらの燃費が良いかという比較をしているのですが、一見ネタっぽいテーマにも関わらず、かなり緻密に調べられていて、強烈なインパクトがありました。

この記事を見てから、私もモビリティとして“馬”に興味を持ち始めました。
なんと言っても馬は、紀元前4~3000年ごろから1900年頃までの数千年間にわたり、人間社会の主要な移動手段でした。(※馬車含む)
現代では日常生活に根付き、当たり前になっている自動車ですが、実は人類が自動車に乗り始めてから、まだたったの100年程度しか経っていません。

そのため、人類の移動(モビリティ)の歴史≒馬の歴史と言っても過言ではないのです。

冒頭の話に戻りますが、モンゴルに行き、実際に馬に乗ってみると、想像以上にワクワクするもので、これからのモビリティを考える上で、大きなヒントになり得る体験でした。

モンゴルの観光地を馬で駆け巡るという非日常体験の中で、私が印象的だった馬の特徴は3つありました。

1、個体差がある
まず意外だったのが、馬は人間と同じで一頭ずつ性格や体調、好みなどが異なっていました。
気まぐれで時々しか走ってくれない馬や、とにかく先頭を走りたい馬、他の馬に置いて行かれたくない馬、指示を待つ馬、いつもお腹が空いている馬など、ひとえに馬と言ってもいろいろで、自分のその日の気分と合う馬に乗れると、その馬にものすごく愛着が湧きます。
これは自動車よりもコネクティッドカーに近いのでは・・・?と感じました。
従来の自動車は人の所有物で、好きなようにカスタマイズして“自分だけの車”として装飾はしていましたが、これからのクルマは、クルマそのものに個性があり、乗る人の情報によってスピードやルートを変更することで、「俺のことわかってるじゃん、このクルマ」という風に、乗る人に愛着を持たせていくというのは良いのではないでしょうか。
昨年、「注文をまちがえる料理店」という店が話題になりましたが、例えばクルマでも、休日で目的もなくドライブしたい時には、AIやナビにおまかせして自分の好みに合った全く知らない土地に連れて行ってもらうことで、意外性を持たせるというのも面白いと思います。
自分の行きたい場所へ行くための“単なる道具”から、予想外の素敵な場所へ案内してくれる“体験を共にするパートナー”としての価値が出るのではないでしょうか。

2、双方向(インタラクティブ)性がある
馬の2つめの特徴は、インタラクティブであることです。
自動車は、アクセルを踏んだら進み、ブレーキを踏んだら止まる。という一方向のモビリティです。
対して馬は、「チョー!」と言いながら両足で脇腹を蹴っても(※馬を進ませたい時の合図)、「ブヒュルルル(今は走りたくない)」と言って走らないことがあったり、逆に、手綱を思いっきり引いても(※馬を止まらせたい時の合図)、「ブヒュルルル(今は走りたい)」と鳴いて止まらなかったりすることがあります。
馬の調子がどうか、疲れているのか元気なのか、喉が渇いているのか、おなかが空いているのか、どのくらいのペースで走りたいのかなど、その時のコンディションをコミュニケーションの中で感じ取りながら進みます。
一見面倒くさいように見えますが、これが、馬との関係を淡泊にせず、移動体験としての質を高めています。
これからのクルマも、タイヤの摩耗状況や、乗っている人がボディを擦りやすいシチュエーションなどを学習し、「いまのタイヤの状態でこの道を行くのは危険です」「この角度からの駐車はよくぶつかるのでオススメしません」など、運転手と意思疎通しながら進めたら良いな、と思いました。

3、上達したことがわかる
最後になりますが、乗馬は思っていたより難しかったです。想像の5倍くらい体力を消耗しました。
私のように未経験者の場合は、正しい乗り方ができるまでに時間がかかり、始めは振り落とされないように必死なので、全身が筋肉痛になります(特におしりと内もも)。
ですが、連日何時間も乗っていると、次第に負荷がかかりにくい乗り方を覚え、乗りこなせるようになってきます。
乗馬は、馬の走り方・速さに段階があり、「常歩(なみあし)・速歩(はやあし)・駈歩(かけあし)・襲歩(しゅうほ)」となっています。
常歩が最も簡単で、右へ順に難しくなりますが、乗り始めて数日後には、最も難しい襲歩まで乗りこなせるようになりました。
この達成感がなんとも言えない満足感になり、記憶に残る思い出ができました。
クルマに関しても、乗っている人は休日しか運転しないことがほとんどで、カーシェアリングブームの背景には、買ったもののほとんど車に乗っておらず、もったいないので使う時だけ借りたいという消費者インサイトがありました。
それはつまり、ほとんどの人はペーパードライバーに近い状態であるとも言えます。
あまり運転が得意でないことから、ますます車に乗らなくなり、自動車離れにもつながっていました。
そういった運転手の人たちが、運転の度に少しずつ上達して、「運転・駐車のスコアが1ヶ月前と比べて○○点上がりました。○○円分のサービスクーポンをお渡しします」などと知らせて貰えることで、上達が目に見えるようになり、そこに喜びも伴い、クルマ体験はより充実するのではないでしょうか。

このように、馬に立ち返ってモビリティというものを考え直してみたら、
意外にヒントになりそうなことが発見できました。

イノベーションの価値を、あえて時代を巻き戻して考えてみるというのも、面白いですね。

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