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【要約&実践】専門家以外の人のためのリサーチ&データ活用の教科書

どうもー、消費財メーカーのマーケターとして働くmotuです。
マーケティングに関する書籍の"理解"から"実践"への架け橋となる記事を投稿していきたいと考え、活動しています。

書籍の内容を"実務"で活かすことができるよう、要約・体系化していくので、ぜひご覧ください。
それではやっていきましょう!

書評

【再現性】   ★★★★
【面白さ】   ★★★★
【おすすめ度】 ★★★★

私の記事では、上記3項目を5点満点で評価しています。
再現性は、筆者が自身の成功(失敗)を体系化して、私たちでも実践できるような形のノウハウとして提供しているかで評価しています。
面白さは、純粋に書籍としての面白さで、読みやすさなども考慮して評価しています。

今回紹介するのは、P&G出身米田恵美子氏著書の「専門家以外の人のためのリサーチ&データ活用の教科書」です。
この書籍からは、リサーチ&データ分析の考え方や活用方法について詳しく学ぶことができます。P&Gのノウハウが体系的に整理されていて、読んだその日から活用できる内容が詰まっていておすすめです。それではやっていきましょう!

1. リサーチ&データ活用とは

リサーチとデータ活用は、ビジネスの問題解決につなげることが目的。継続的な問題解決のために、どうリサーチ&データ活用をしていくか考えることが重要。

・リサーチ
様々なデータを収集すること
・データ分析
収集したデータから新しい発見をするために、様々な角度からデータを読み込み、解釈すること
・データ活用
分析で得られた発見をもとに戦略を立て、KPIを決める。また、設定したKPIに対しての結果を分析し、次につなげること

ここで、失敗するリサーチやデータ活用の特徴と対処方法を確認しておく。

①目的が定まっていない、共有されていない
何のために、どのくらいのコストをかけて何を実施し、その結果をどのようなアクションにつなげていくつもりなのか、関係者内で事前合意をとりつける。
②新しい発見を求めていない
関連がありそうな点、疑問に思う点、違和感を覚える点、予想と違うパターン、今までの考え方とつじつまが合わないことを見つけ、なぜを深ぼる。
③使い方、読み方がわからない
利用するリサーチ方法によって、どのようなデータが得られるか、得られたデータをどう分析するかの結論を事前に考えておく。成果を判断する基準を決めておく。
④データ忖度
Consumer is boss.

このとき、リサーチ&データ活用の目的を明確にし、関係者との事前共有のため、リサーチ提案書が作成される。

リサーチ提案書

・タイトル
・目的
・背景
・ビジネス課題
・リサーチ結果の活用
事前に検討し、関係者と事前共有する。

・リサーチ方法
・サクセスクライテリア
利用するリサーチ方法によって、どのようなデータが得られるのか、得られたデータをどう分析するかを決めておく。また、成否を判断する基準を決めておく。

・参考資料
過去のリサーチで得られたデータ、周辺情報、現状の仮説に至る過程で得られたデータをつける。

また、リサーチ提案書に呼応する形でリサーチ報告書を作成し記録として残すことで、合意されたデータ活用の実戦を促進し、新たな知見としてその後に残すことができる。このとき、Conclusion first新しい発見を重視する。

リサーチ報告書
・結論
・新しい発見(インサイト)
・次のステップ
・参考資料

最後に、リサーチ&データ分析を妨げる5つのタイプと対処方法を紹介する。

①コンクルージョンタイプ (すぐに判断しようとして結論を急ぐタイプ)
仮説とはあえて違う可能性を探る。ぎりぎりまで2つ以上のオプションを持ち、意識的にそれぞれのオプションのメリット、デメリットに目を向ける。

②アナリティカルタイプ (ロジックを重視し、根拠がないことを受け入れられないタイプ)
言葉にならない感情があることに意識を向ける習慣をつける。その感情はどんなものかと想像してみる。

③テクニックタイプ (手法や手段を重視するタイプ)
あらゆる手法を自在に使いこなすつもりで目的を達成する意識を持つ。できる/できないはとりあえずおいて考える練習をする。

④フォロワータイプ (他人の意見に振り回されやすいタイプ)
リサーチに正解はないことを意識し、まず自分の解釈を試みる。

⑤木を見て森を見ずタイプ (気になる点に固執してしまい、目的を忘れるタイプ)
気になったものはいったん書き出しておいて、後でじっくり対処する。

2. 目的の設定

リサーチ&データ活用を実際に進めていくうえで、最も重要で最初に取り組むことは、解決すべきビジネス課題を明確にし、目的を設定すること。以下OGSMのフレームワークで考える。

・Objective(目的)
達成したい、目標とすべき状況
・Goal(目標値)
目的を達成した時の状況を測定可能な数値、指標に転換したもの
・Strategy(戦略/手段)
目的を達成するため、あるいは目的達成までのギャップを埋めるための作戦
・Measurement (KPI)
戦略の進捗状況、出来不出来を確認する指標

このとき、視座によってカスケードダウンされ、上層の戦略は下層の目的、上層のKPIは下層の目標値となることに留意しておく。

3. リサーチ&データ活用のデザイン

戦略作成段階と解決策作成段階の2段階からなる、ダブルダイヤモンドプロセスに従って、リサーチ&データ活用を戦略的に実施する。

戦略作成段階
①現状理解 (実態調査、生活習慣調査、ブランドイメージ調査、デプスインタビュー、グループインタビュー、エスノグラフィー)
自分たちはどういう状況にあって、解決すべき問題は何か、そして何が課題なのかを把握し、それを解決するべきビジネス課題として設定する。課題を見つけ出せるまで、問題の原因を深く探求していくことが重要。

②可能性を広げる (ブレスト、アイディエーション、プロトタイピング、デザイン思考、オープンイノベーション、ネット検索)
課題解決の方向性についてあらゆる可能性を考えて、仮説を広げる

③検証 (スクリーニング調査、コンセプト調査、デプスインタビュー、デザイン思考)
一番効果が高そうに思える仮説を絞り込んで解決の方向性を定義する

解決策作成段階
④施策を広げる (パッケージの中身、価格、テレビCM、プロモーションアイデアなど、開発及び質的調査)
アイデアを具現化する

⑤検証 (パッケージ、中身、価格、テレビCM、プロモーションアイデアなど絞り込み調査、販売予測)
出された具体案についてテストと改良を繰り返して絞り込む

3-1. ①現状理解

まず初めに、ギャップ(=問題)の箇所を突き詰める。現状を要素に分解し、各要素のKPIと照らし合わせながら、どこで何が起こっているのか理解する。

①KPIを組み立てる
年間総売り上げ=購入者数×一人当たり年間平均購入金額
       =全人口×認知率×購入意向率×一人当たり年間平均購入金額
年間総売り上げ-広告・宣伝営業コストなど=利益
メディア投下額、メディアリーチ率、店頭配荷率
※以上各要素に対して、売上目標値や前年比など過去の実績を参考にしてKPIを定めておく。

②実績と各要素のKPIと比較してギャップを見つける
ユーザーを細分化、メディア/広告を細分化、店頭配荷/エリアを細分化、期間を細分化して、セグメント別で分析する。

③KPIを設定しなおす
ストレッチ目標(背伸びして工夫すれば届きそうな目標)とチャレンジ目標(達成困難な高い目標)をそれぞれ考える

このとき、参考値を複数置くことで、実現性の高いKPIを組み立てられる。また、自社だけでなく、カテゴリー全体のトレンド、競合の情報も記入することで社会全体の流れに乗り遅れることのないKPIを組み立てることができる。

次に、以上で見つけたギャップが生まれている理由、背景に対する仮説を見つけてビジネス課題を設定する。以下の手法が考えられる。

①問題の要因を細分化して、課題を探す
・他のセグメントと比較して、違いを探す
・ブランドが目指す姿に近づいているかの指標をKPIとして追いかける
②既存のパラダイムから抜け出す
③生活の場に潜入するイマージョン的アプローチ
・ネットサーフィン
・お客様相談室
・エスノグラフィー
・ストーリーテリング
・座談会

3-2. ②, ④仮説を広げる

次に、解決策を出すのではなく、異なる視点を取り入れて視野を広げ、問題解決につながる新たな気づき(インサイト)を見つける。以下3つの手法が挙げられる。

①ブランド愛好者に良さを教えてもらう
②オープンイノベーション的リサーチ
ユーザーからアイデアを提供してもらう手法。以下3つが重要。
・クリエイティブな発想を楽しめる外部リソースの選定
・アウトフロー(外部への情報の開示)に関して出し惜しみをしないこと
・協力を依頼する外部リソースに十分な時間を使ってもらうこと
③デザイン思考的アプローチ
ユーザーの求めるものに近づくよう改善していく手法。ユーザーの声を聴き、その場で商品コンセプトを即席でつくり、フィードバックをもらう。

3-3. ③, ⑤検証&実行

最後に、出てきたアイデアを絞り込み、最終的に選ばれたアイデアが、設定しているビジネス課題の解決にどの程度つながるのか調べる。目的、目標値に応じて、コストを考慮しつつ手段を選んでいくことが重要。このとき、ビジネス課題が解決できる可能席が高いことが確認できるのであれば、質的でも量的でも、どんな種類の調査でも構わないことに留意しておく。以下ではその手法を挙げていく。

①サクセスクライテリアを定める
・データベースを利用する
市場導入前のコンセプト調査で購入意向率と目新しさの結果をデータベース化しておくとよい。導入後の結果と比較することで、おおよその成功基準が判断できる。新商品開発に限らず、広告などの他の調査でもデータベース化しておくと活用できる。

ロールモデルをベンチマークする
目標の売上額に近い商品をベンチマークする

メリットデメリットを総合的に議論し、最終判断
リサーチ結果は意思決定ツールの一つにすぎない。各部署様々な視点から判断。あえて最後までアイデアを1つに絞らず、複数のオプションを残して検討することも良い。

④実行&振り返り
・データの蓄積
・成功や失敗の理由を明確にする

以上、リサーチ&データ活用手法をまとめると以下のように循環し、ナレッジが蓄積していく。

①現状分析を通してビジネス課題を明確化する
②パラダイムシフトを起こせるようなインサイトをリードし、解決につなげるためのアイデアや具体案を探り出す
③それらを的確に検証し、ビジネス課題に対する解決策をデータから導く
④解決策の実行の前には予測値を設定し、下振れ・上振れの可能性についても予測したうえで対応策の準備を促す
⑤市場導入後には結果を追いかけ、目標値と実績のギャップをあぶりだし、成功や失敗の要因を分析する
⑥そこから課題を抽出して新たなダブルダイヤモンドプロセスにつなげる

以上です。長い文章にお付き合いいただきありがとうございました。
また次回!


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