人形

先生の治療所に初めて来た時、実はものすごい気になるものが置いてあった。

それは、赤ちゃんのお人形。

怖い映画に出てきそうな、昭和の匂いのする人形が、何故か椅子に座らされていた。

「…(何で人形が置いてあるんだ)」

「かわいいでしょう?お人形さん」

「え?」

初対面で、これから診てもらう先生に対して

かわいいでしょう?なんて言われたら、不気味ですなんて返せない。

「カワイイデスネ(社交辞令)」

「ね、だいぶいい顔になってきたのよ」

「はい?(いい顔になってきた?)」

先生の言っていることが気になったが、治療が始まってしまい、その日は人形に対して何も聞くことができなかった。

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その後、何回か先生の所へ通ううちに、もう一つの気になるものを見つけた。

それは、マネキンの首。

美容室にある、美容師さんが髪を切る練習に使うアレが、何故か棚に置いてある。

「…(何でマネキンの首が置いてあるんだ)」

「それ、引き取ったのよ」

「はい?」

椅子に座っている人形といい、マネキンの首といい、正直客は面喰らうと思うのですが…

思いきって聞いてみた。(仲良くなってから)

Q.あの、これら(人形とマネキン)はなんなんですか?

A.このお人形さんはね、お客さんの家にあったの。怖い顔するって言うから、先生の所に連れてきたの。

だいぶいい顔になってきたのよ。
いい子にしてる。

普通に怖い話をされてしまった。

ますます不気味ですなんて言えなくなった。

「かわいいですね(震え声)」

「ね。」

多分、マネキンの首も似たようなことがあって先生の所に引き取られたんだと思う。(聞くのをやめた)

詳しく調べた訳ではないが、そういった現象は本当にあることなんだと

勉強になった(強調)。

今でもその赤ちゃんのお人形とマネキンの首は、先生の所にいる。

もう見慣れてしまって怖くない笑