初ホイミ

「お師匠様と神社巡り」の後日談です。

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【神社巡りの日の夜】

平野神社にお参りした夜、勉強会のメンバー全員が旅館のお師匠様の部屋に集まった。

「今日で、今回の旅行に初めて参加した人に、治療の神様が入ったからね」

「(いつの間に!?)」

体には何も変化が無い。何も感じなかった。

体がパーッとひかり輝くとか、頭の中に直接別な意識が流れ込んでくるとか…そんなことはなかった。
(自分が感じないだけかも)

「じゃあ、今日たくさん歩いて疲れてると思うから、二人一組になって足の疲れをとってあげて」

さらっと中学の体育の時間みたいなことを言うお師匠様。

とりあえず自分と同じく初めて旅行に参加した人に声をかけ、「よろしくお願いします」と頭を下げた。

「やり方を説明するよ。まず、胸に手を当てて、治したいところに手をかざして」

「そしたら目を閉じて『神様、治療をお願いします』って言えばいい。ラクになるよ」

えらい簡単な過程。ほんとにホイミみたい。

初めて使う神様の力。わくわくと緊張で心臓とこめかみがドキドキしてきた。

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【ホイミ実践】

「じゃあ、自分からやります」

組んだ人に膝を立ててもらい、片方の手を自分の胸に当て、特に痛いと言っていた右足に手をかざして

「神様、治療をお願いします。この方の、足の疲れをとってください。足の筋肉をほぐしてください」

と、目を閉じて言葉を口にしてみた。

かざしている手が温かくなったりとか、「了解」と、頭に知らない声が響くとか…そんなことはなかった。

「あの、どうですか?」

体感時間1分程。向かい合って右足に手をかざし続けていたら、治療とはいえ、気まずくなる。

相手の人におそるおそる感想を聞いてみた。

「なんか、ビリビリして暖かかったよ」

「あ、よかったです(できてた!?)」

社交辞令かもしれないけど、それっぽいことを言われて普通に嬉しくなった。

「(ホイミが使えるようになった!!)」

多分気持ち悪いくらいニヤけていたと思う。

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【ホイミしてもらう】

「じゃあ次は私がしてあげるね」

「はい」

今度は反対に、自分が足の疲れをとってもらう番。

相手の人は、目を閉じて自分の足に手をかざし、そのまま静かになった。
心の中で言葉を唱えるタイプだ。

「…(あれ?)」

何も変わらないような気がする。

強いて言うなら、手をかざされている部分が他と比べてふわーっと暖かく感じる。
ビリビリはしない。

さっきは目を閉じていたから分からなかったけど、ホイミを使っている時は手が光ったりしないか確認したが、そんなことはなかった。

「(どうしよう何か言わないと)」

「どうだった?」

相手の人が目を開けて感想を聞いてきた。

「あの、なんかあたたかかったです、ここが」

焦って出た言葉がこれ。

「疲れとれた?」

「あ、なんか軽く感じる!(よく分かってない)」

嘘ついた。ごめんなさい。

でも暖かく感じたから多分疲れは取れたはず。
神様が治療したんだから間違いない。

まだあまり感じることができない自分が悪い。

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【他にできること】

お師匠様は続けて話す。

「簡単な傷なら早く治るよ。火傷とかしたらすぐお願いしてごらん。治りが違うから」

「へー」

「火傷とかだけじゃなく、日焼けの治療も出来るからね。虫に刺されたりしたら『痒みをとめてください』『血をとめてください』ってお願いするんだ」

「へー」

火傷、日焼け、虫刺されも治療できる…とメモ帳に書きこんだ。

「とにかく、どんどん治療の神様に動いてもらうといいね」

「神様の力を使わないでいると、『そんなに必要ないのかな?』って神様が抜けていっちゃうから!」

「それはやだ」

勉強会のメンバーの皆さんが、嬉しそうに笑っていたのが印象的だった。

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自分の体に入ってくれた治療の神様。

ずっとずっと一緒にいてほしいと思う。

でもそんなに普段から怪我しないんだよなぁ