見出し画像

「職場のメンタルヘルス・ケア」についてディスカッション(2023/12/20)

濱口桂一郎『ジョブ型雇用とは何かー正社員体制の矛盾と転機』p.230〜260より

今回は、職場のメンタルヘルス・ケアについて調べました。大企業や中小企業など、あらゆる現場におけるメンタルヘルス・ケアの難しさが見えてきました。

Aさん:
ストレスチェック制度
「労働安全衛生法」により、50人以上の労働者(非正規雇用労働者も含む)がいる事業所で年に一回実施することが義務化(50人以下は努力義務)
パート・アルバイトでも、労働時間が通常の労働者の4分の3以上であると、ストレスチェックの受験対象者となる
労働者がストレスチェックを産業医等ストレスチェック簡易票PDF[PD:73KB]

実施概要F形式
産業医のもとで実施

調査票の数値をもとに一定基準の人を高ストレス者として選定

検査結果を見た全ての労働者の希望に応じてのみ、事業者が産業医の面談指導の実施を依頼
検査結果は本人の同意なく企業側に提供することが禁止されている

産業医の意見を聞いた上で、必要な場合には作業の転換や労働時間の短縮などの措置を事業者はとらなければならない
事業者は、ストレスチェックの結果について、労働基準監督署に報告義務
怠った場合には50万円以下の罰金

ストレスチェック制度の実施状況 
厚生労働省(2017)「ストレスチェック制度の実施状況」
https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/000582827.pdf

データを見た疑問・感想と松本(2018)の評価
・義務であっても実施割合は8割弱と少なめ?罰則が弱い?
→当初懸念された実施率を考えれば評価できる

・事業規模が小さいほど、実施割合が低下している
 事業規模が小さいほど労働環境が整っていないと思われるが、従業員50人以下は努力義務でいいのか?
→事業規模間で受検割合の差は小さいので、大きな問題ではない?

 産業医を対象にアンケートをとったところ、厚労省のデータと乖離
 ①小規模事業場ほど医師による面談指導を希望する割合が高い
 ②小規模事業場ほど面談指導の希望者と受診者の割合の乖離が高く、面談指導を希望しても実施できていない可能性がある
 ③集団分析の実施割合にはアンケートと厚労省調査では約20%の差(ア:55.6% 厚:78.6%)
  →本来、産業医が関与している事業場ほど、実施割合は高値だと予想されるが、逆の結果に

・全体として面接指導を受けた労働者が少ないように思う。これは純粋な結果としてなのか、キャリアを気にしてのものか、、、
 →労働者にストレスチェックの結果に守秘義務があることが周知されておらず、検査結果による不利益扱いを不安視
・産業ごとのばらつきがある(宿泊業,飲食サービス業:49.0%など)

ストレスチェック制度の問題点(一部)
・集団分析の活用法が示されていない
・調査票・評価点が統一されておらず、医師が面談指導で困惑する
・毎年同じ受験票では、受験者が要領を得るため精度の問題が出てくる(変えても、コスト問題が)
・事業者が制度を理解せずに軽視している

参考資料
ドクタートラスト「ストレスチェックの義務化とその概要」(2023年12月閲覧)
https://doctor-trust.co.jp/law/law-2606.html
厚生労働省「ストレステェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/index.html
厚生労働省(2017)「ストレスチェック制度の実施状況」
https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/000582827.pdf
松本吉郎(2018)「ストレスチェック精度開始後の現状と問題点」総合検診2018年45巻2号,p26-33
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhep/45/2/45_344/_pdf


Bさん:
・国のメンタルヘルスケア指針
「「過労死等ゼロ」緊急対策を踏まえたメンタルヘルス対策の推進について」
背景:精神障害に関する労災件数の増加、大企業での過労死の発生
内容:
①精神障害に関する労災支給決定が行われた事業場及び企業の本社事業場に対するメンタルヘルス対策の特別指導の実施
②違法な長時間労働が認められる等の事業場に対するメンタルヘルス対策の指導の充実
③パワーハラスメントの予防・解決に向けた周知啓発の徹底
④長時間労働等によりハイリスクな状況にある労働者を見逃さない取組の徹底

先進的にメンタルヘルスケアに取り組む企業例
・三井不動産
ストレスチェックの実施
高ストレス者には産業医面談への案内
ストレスチェックの結果を基にした業務改善・人事配置
・ベネッセ
2003-2006年にかけて大規模な中途採用→大量のメンタルヘルス不調者
管理職に対してメンタルヘルスケア研修
管理職が部下の勤怠状況や仕事のパフォーマンスの変化に気付き、早期に相談デスクにつなげることを徹底

・厚生労働省、こころの耳「「過労死等ゼロ」緊急対策を踏まえたメンタルヘルス対策の推進について」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/8_sankou6.pdf
・厚生労働省、こころの耳「職場のメンタルヘルス対策の取組事例:三井不動産株式会社」https://kokoro.mhlw.go.jp/case/company/cmp127/
・厚生労働省、こころの耳「職場のメンタルヘルス対策の取組事例:株式会社ベネッセコーポレーション」https://kokoro.mhlw.go.jp/case/company/cmp071/


Cさん:
仕事や職業生活に関する強い不安、悩みストレスを感じるとした労働者のうち、その内容
仕事の量や質56.7%
仕事の失敗、責任の発生等35.0%
対人関係セクハラパワハラを含む27.0%
・ストレスを相談できる人の有無
9割が相談する人がいる状況
・相談相手
78.5%友人、家族
73.8%上司、同僚
・メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業所の割合
事業所の規模が大きくなるほど割合が増えていく
小規模の事業所ではまだ普及が進んでいない

取組内容

・労働時間や残業時間の短縮が喫緊の課題だが、うまく対処できていない、する余裕がない事業所が多い印象

参考資料
職場におけるメンタルヘルス対策の状況
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000845811.pdf

保健指導リソースガイド
職場のメンタルヘルスに影響するのは「長時間労働」ではなく「睡眠不足」と「不健康な食事」
2022年06月13日

https://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2022/011231.php


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?