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大内伸哉『雇用改革の真実

以下には、1章から3章までの要約を記載している。

第1章 解雇しやすくなれば働くチャンスが広がる

  • p32 

    • かつては、多くの労働者が正社員で非正社員は家計補助小遣い稼ぎ目的で働く→正規雇用の維持が大切

    • 非正社員が増える中、日本経済がかつてのように右肩上がりに成長し、雇用のパイがどんどん増えていくことは厳しい→正社員を無理に維持していくことはどうなのか?

    • 解雇が容易にできない法的ルールがあると、企業は労働者を雇い入れるときに慎重な判断が求められる。一度採用すると、定年まで雇用保証しなければならない。

    • 非正社員を雇う方が企業にとっては雇用調整がしやすい。そのため、非正社員と正社員との企業における二極化が極端に固定してしまう。

    • 労働初期の試用期間は正社員としてふさわしいかの適正を見極める期間を設けて、試用期間の間でも解雇の正当性が認められることで、企業も正社員候補として試しに雇うことができるため、採用に関して緩やかになるのではないか。

    • 解雇規制→労働者の不利益があまりにも大きいこと

      • 長期j雇用保証が定着している社会では、一旦企業から放逐されると、別の企業に再度採用されるのは容易ではない。

        • 雇用調整給付金→雇用調整助成金などで補填している

      • 正社員→企業において中核的な人材になることが想定。労働者の技能の蓄積を含め長期雇用を保障。

    • p42

      • 正社員の中にも優秀な人は少なからずいて、彼らが日本企業の国際的競争力の維持に貢献している→彼らの雇用は企業にとっても確保すべきである。

      • 解雇を軽率に行う企業だと正社員雇用されても解雇されてしまい、優秀な人材の確保が難しい。↑解雇ルールが厳しくても優秀な労働者と雇用保障には関係がない。

      • 解雇規制の恩恵を受ける人→正社員として能を発揮できない労働者である。企業に余裕があればいいが、そうもいかない。しかし、雇用の保障をするべき人は彼らである。解雇されると路頭に迷う可能性がある。解雇されても良いセーフティーネットを構築するべき。(労働市場の人材マッチングを高機能にすることが良い)


第2章 「限定正社員」が働き方を変える


  • p62

    • 限定正社員→職種、労働時間、勤務地などを労働契約の段階で限定する。個人の生活、価値観に合った労働が可能となる。

    • 限定正社員(職種限定)→職種に見合う能力がないと解雇+職種が不要となれば解雇→解雇のしやすく、企業経営に柔軟性を与える。労働者側には雇用の不安定性を与える。しかし、高技能労働者としてプロとして自身の専門性を磨く事で、限定正社員として自由に働くことが可能となる。

    • 正社員には『中核的正社員』『準中核的正社員』『周辺的正社員』があるとしている

    • 非正社員には『基幹的非正社員』『伝統的非正社員』がある。(著書:「人事と法の対話ー新たな融合を目指してー」大内伸哉 )

  • p71 

    • 限定正社員は、正規、非正規雇用の融解と言えるだろう。企業規則を念頭に置きながらも労働者個人が企業と擦り合わせながら労働条件を決定すること→今後の労働契約のあり方ではないか。

    • 企業も正社員として中核的人材を抱え込むことを減らし、雇用の流動性を高めることが可能となる。

    • 働きて自らが積極的に働く環境を整えることができるように


第3章 有期雇用を規制しても正社員は増えない

  • p74

    • 非正社員として働く時、労働契約において期間の定めが必要。

    • 法律の世界では「一つの契約の期間」「トータルの契約の期間」がある。両者の違いはやめたくなった時に現れる。(民法では契約解除にはやむを得ない事情が必要。)

    • 一つの契約期間が長いと労働者を強制的な労働繋がるおそれ。労基では労働契約の期間の上限を一年とした。→法改正後は3年まで引き上げられたが、労働者からの途中打ち切りが一年を過ぎた段階で認められるように。

  • p77

    • 今日では、有機労働者は雇用が不安定であるため雇用期間が長い方がよい。即ち、トータルの契約期間が長い方が良い。→労働者にとっては、一つの契約期間は短く、トータルの契約期間が短い方が良い。

    • トータルの契約期間を長くするには①企業からの更新拒絶を制限する②一定の回数以上の更新があれば、無期労働者に転換させる③有機労働契約を締結できる事由を限定して、それ以外は無期労働契約しか締結できないようにする方法

    • ①→英国では、契約期間がトータルで2年を超えた後に更新拒絶した時、解雇と同様の制限を受けて正当理由が必要。(日本では雇止め制限法理。ただし法律ではなく判例法である。)

    • ②の問題点

      • 5年で無期に転換するため、その直前で雇用契約を企業が打ち切るおそれ→有期雇用者を不安定にさせる。

      • 例外規定がないこと。(研究補助者など)

  • p85

    • 有期雇用と無期雇用の違いは契約の期間によるものよりも正規非正規の違いの方が大きい。

    • 有期雇用→長く働くことは想定されたいないため、労働者の育成は考えず、重要な職務に従事させず、長期インセンティブを与える必要がない。労働条件に歴然としたさがある。

    • ヨーロッパでは、有期雇用と無期雇用の違いは期間の有無以外大きな差はなく、身分的違いがない。そのため無期転換に問題が生じない。

    • 無期転換によって日本では労働者の地位が飛躍的に上昇して雇用の安定性が生まれる。

    • 限定社員を活用することで、雇用保証を限定的にする。そうすることで、無期転換の重要性が低下していくのかもしれない。

  • p93

    • ①②→出口規制③→入口規制(日本の法律では入口規制なし)

    • ヨーロッパでははじめに有期雇用で職務をこなしを力をつけてから無期雇用へと挑戦する考えがある。日本では非正規と正規で労働の諸条件に格差があることからそれは望めない。では政府が能力開発や技能形成のサポートをすることが労働政策として考えられるあり方ではないか。





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