「日本は『全国一律最低賃金制度』を導入するべきか？」(第6章関連)（2023．6．2議論）
「全国一律最低賃金制度」とは
日本は現在、地域別最低賃金制度が採用されている。
その根拠として、最低賃金法第九条二項「地域別最低賃金は、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない。」が挙げられる。
この現行制度に対して、最低賃金を全国一律にしようという意見がある。
なお、他国ではイギリス、フランス、韓国などが全国一律の最低賃金を設定している。
2．ゼミでの賛成・反対意見
〈賛成意見〉
① 地方経済の活性化
・地方の賃上げによる人口流出の抑制、地方の労働力の確保
② 賃上げによる体力のない中小企業の淘汰→経済の合理化
・先進国では、零細企業の比率が高いほど国全体の生産性が低くなる傾向
③ 地域別最低賃金の根拠：「生計費の地域差」の存在に疑問
④ テレワークなどによる「稼ぐ場と消費する場の不一致」の不平等感
・県外就業率は全国平均約9パーセントである。
多い場所では千葉、埼玉、神奈川では25〜30％まである。
〈反対意見〉
① 地方、中小企業の負担が大きい
② 業界ごとに負担に差がある
・「製造業のように海外企業との競争にさらされるなど、製品価格への上乗せが難しい産業では、最低賃金引き上げは労働者の雇用を奪う可能性」
（日経．2019．9．2）
③ 賃上げする代わりに雇用や労働時間が減少する可能性
④ 最低賃金が均衡賃金を上回ることによる失業者の増加
⚪︎参考文献
・デービット・アトキンソン, 最低賃金を絶対｢全国一律｣にすべき根本理由, 東洋経済ONLINE, 2019, https://toyokeizai.net/articles/-/264773?page=2
・デービット・アトキンソン, 最低賃金の引き上げが｢世界の常識」な理由, 東洋経済ONLINE, 2019, https://toyokeizai.net/articles/-/263406
・中沢康彦、津久井悠太、山田宏逸、神田啓晴, 「中小企業は今の半分以下に」暴論か正論か話題呼ぶ, 日経ビジネス, 2019, https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52478210S9A121C1000000/
・最低賃金法, e-gov法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334AC0000000137
・日本弁護士連合会,全国一律最低賃金制度の実施を求める意見書,厚生労働省https://jsite.mhlw.go.jp/niigata-roudoukyoku/content/contents/0708-14.pdf
・最低生計費資産調査・総括表（全労連）,（２０２３/０６/０１に利用）http://www.zenroren.gr.jp/jp/housei/data/2022/220527_07.pdf
・平成27年国勢調査従業地・通学地による人口・就業状態等集計結果 結果の概要 https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2015/kekka/jyutsu1/pdf/gaiyou.pdf
・中澤秀一著、「全国チェーン店に“おいしい”最賃格差」後藤道夫・中澤秀一・木下武男・今野晴貴・福祉国家構想研究会編著『最低賃金1500円がつくる仕事と暮らし』大月書店、2018年、202-205頁参照
・若杉隆平著、第Ⅱ部1「経済のグローバル化と地域経済」若杉隆平編著『基礎から学ぶ国際経済と地域経済』文眞堂、2020年、101頁参照
・全国一律の「最低賃金」が実現すると地方を滅ぼす理由 | 重要ニュース解説「今を読む」 | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)
・日本の地方が南欧化する？最低賃金「業種別・全国一律化」の危うさ | ＤＯＬ特別レポート | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)
・最低賃金上げ、中小反発、日商など「３％超目標、厳しく」、全国一律にも反対、日本経済新聞、2019年5月29日朝刊
・最低賃金１０００円の是非（上）奥平寛子・同志社大学准教授――産業・地域ごとの状況考慮を（経済教室）、日本経済新聞、2019年9月2日朝刊
・ ファクタリング総研「最低賃金の引き上げで生じるメリットとデメリット」https://top-management.co.jp/soken/2019/09/20/saiteitinngin/#i-5
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