「追い出し部屋」「働かないおじさん」についてディスカッション(2023/11/22)

濱口桂一郎『ジョブ型雇用社会とは何か-正社員体制の矛盾と転機』p.96〜137より

今回は、メンバーシップ型雇用社会に特有の、いわゆる「追い出し部屋」「働かないおじさん」について調べました。
特に「働かないおじさん」問題については、メンバーシップ型雇用社会だからこその、構造的な理由が見えてきました。

追い出し部屋
Aさん:
◯追い出し部屋とは
企業から戦力外とされた,いわゆるリストラ対象者・社内失業者を一時的に受け入れる部署

・企業側の建前:再教育して別の部署に再配置することを目的とした部署
↕︎
・実態:退職させたいが、それを拒む社員の臨時の異動・受け入れ先

異動させられた従業員に「やりがいのある仕事」を与えず,「働きがいのある職場」とは対極にある職場情況を創り出すことで,自主退職・転職に追い込もうとするもの
(仕事を与えない、単純作業のみ、キャリアが活きない仕事、異動先・転職先を探すなどの意に沿わない仕事、異動・転職のための能力開発を名目とした自己研鑽・自己学習…)
→継続勤務への意欲を削ぐ+希望退職への応募を繰り返し勧める→自主退職・転職を選択させる

◯追い出し部屋の認知
2012年12月31日 『朝日新聞』「配属先は“追い出し部屋”」
◆パナソニックの事例
・事業・人材強化センター(BHC):仕事は他部署への「応援」
◆コナミグループの事例
・「キャリア開発センター」(キャリア開発課)
異動先の職場は社内になく、自宅で職探しをする。

参考資料
伊藤, 健市(2017)「「追い出し部屋」が教えてくれること : 「やりがいのある仕事」「働きがいのある職場」という視点から」『關西大學商學論集』61(4), p.1-24
関西大学学術リポジトリ (nii.ac.jp)
「(限界にっぽん)配属先は「追い出し部屋」 会社「退職強要ではない」」『朝日新聞』朝刊 2012年12月31日
「(限界にっぽん)第4部・続「追い出し部屋」:3 「うつになった。人間は弱い」」『朝日新聞』朝刊 2013年07月29日

Bさん:
◯「企業内過剰雇用者」の存在
 例:内閣府が2013年12月に発表した日本経済に関する分析は,同年9 月時点での企業内過剰雇用者(「雇用保蔵者数」)の 人数を推計しており,少な目の見積もりで364万人, 稼働ピーク時を基準にした見積もりでは465万人と 推計している(内閣府政策統括官室 201,9-10ペ ージ)。これは雇用者全体の6.7%~8.5%にあたる
(篠田2014、63頁)

◯厚生労働省による調査
・2010年代前半、「追い出し部屋」が注目され、厚生労働省も調査を行なった(厚生労働省2013)
→「明らかに違法な退職強要を行なっていると考えられる事案は確認されなかった」

・それに対し、、「企業側の言い分を丸のみしたかのような調査結果」と批判(朝日新聞2013)
 例:「外部委託業務の内製化」など、企業が使った表現を厚労省が似た表現で使用

まとめ:企業内過剰雇用者の数からも、追い出し部屋の存在は明らか
一方で、行政が課題として認識していない模様?

※参考文献
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002tye7.html
厚生労働省「退職強要の有無に関する調査について」、2013年1月29日(2023年11月22日閲覧)
https://ritsumei.repo.nii.ac.jp/records/3572
篠田武司、櫻井純理「新自由主義のもとで変化する日本の労働市場」2014年、『立命館産業社会論集』第50巻第1号(2023年11月21日)
・朝日新聞「(限界にっぽん)第2部・雇用と成長:15『私の部署も追い出し部屋』」、2013年4月8日(2023年11月21日閲覧)

Cさん:
⚪︎3種類の追い出し部屋
・単純作業:パワハラの「過小な要求」に該当する。
・過酷な業務:パワハラの「過大な要求」に該当する。
・退職勧奨:
「新たな仕事を会社の内外に探すこと」を職務として与えられる。転職先が見つからないと「成果が出ていない」と判断され、賃金が下げられる仕組み。

参考資料
高井尚之「『追い出し部屋』はもう古い!リストラの最新手法」2015年2月
https://president.jp/articles/-/14440?page=3
「退職勧奨(退職勧告)とは?適切な進め方や言い方・注意点を弁護士が解説」弁護士法人咲くやこの花法律事務所,2023年11月19日
https://kigyobengo.com/media/useful/288.html#:~:text=退職勧奨は適切な,にも該当します%E3%80%82
「退職勧奨が違法となるのは、どのような場合でしょうか?」湊総合法律事務所
https://www.kigyou-houmu.com/post-7013/

働かないおじさん

Dさん:
⚪︎ジョブ型社会の「働かない若者」

「働かないおじさん」:日本で起きている現象、
有能な若手社員の給料<中高年社員の給与 であることに対する若手従業員の不満から生まれた言葉
組織の一員として同じように業務遂行、顧客対応ができるように教育され、その中で昇給昇格が起き、昇格できなかった者から「働かないおじさん」が誕生
↕︎
"quiet quitting"(静かな退職):アメリカで起きている現象、
従業員規則やジョブ・ディスクリプションに従って必要最小限の仕事をして給料を得る、すなわち、必要以上に働くことを辞めることを意味している。
これまではジョブディスクリプション以上の仕事をすることによる昇給・昇格がモチベーションを保っていた。しかし、コロナ禍によるリモートワークが切磋琢磨する同僚やロールモデルとなる上司とのインフォーマルな交流の場を奪った。

・共通点:必要最小限の業務を行うことで企業内に留まっていること、モチベーションの低下
・最大の差異:quiet quittingは 若者の現象 である

参考文献
斎藤豊 (2023),静かな退職と働かないおじさん
https://otsuma.repo.nii.ac.jp/records/7452 (2023-11-20閲覧)

Eさん:
「働かないおじさん」
=十分とは言えない働きなのに分不相応な給与を受け取っている、一部の中高年層

背景:
日本型雇用モデル(年功序列、終身雇用など)
・「キャリア自立」の意識がない
・入社直後から会社にぶら下がろうとする
・入社~40代くらいまでは、貢献>賃金
社会情勢の変化
・人手不足
・デジタル化、グローバル化
・ビジネスの先行きを見通すのが難しくなった
・もはや日本型雇用モデルでは世界に通用しない

参考文献
日経ビジネス「特集どうする?働かないおじさん」2020年3月16日(2023/11/22閲覧)
https://bizboard.nikkeibp.co.jp/houjin/cgi-bin/nsearch/md_pdf.pl/0000450698.pdf?bt=NB&NEWS_ID=0000450698&CONTENTS=1&SYSTEM_ID=HO

先生より:
・中国への技術流出 ←日本の現状を考えれば当たり前?
・ジョブ型:若者がやる気を失いやすい ↔︎ メンバーシップ型:中高年
・技術進歩のスピードが速い=世代が少し違うだけで必要なスキルが変わってくる


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