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「日本の労働組合の取り組み・ストライキの原因、要求内容」についてディスカッション(2024/1/10)

濱口桂一郎『ジョブ型雇用社会とは何かー正社員体制の矛盾と転機』p.262〜292より

今回は、日本の労働組合の取り組み・ストライキの原因、要求内容について調べました。

Aさん:
日本のストライキ【大橋】
・日本の労働争議(ストライキ含む)の発生件数は年300件前後

・ストライキの参加人数は少ない
2021年:日本→1000人 アメリカ→8.1万人 カナダ→29万人 韓国→5.1万人
・日本の労働組合の推定組織率は2割を下回る 2022年16.5%
欧米では産業ごとに結成された産業別労組の力が強い⇔日本は企業別労組が中心。
企業ごとの組合員の減少理由:定年退職、自己都合退職、正社員の採用の手控え

■日本の最近のストライキ
格安航空会社(LCC)のジェットスター・ジャパンのストライキ
・要求内容:
1.所定時間外労働に対する未払い賃金の支払い←最重視
2.同意なく減額された通勤手当の支払い
3.組合事務所の提供や組合掲示板の設置許可
・ストライキの動き
8月:労組側がストを実施する可能性を会社側に伝える。労使交渉の結果、ストは回避
しかし未払い賃金の算定方法を巡る労使の溝が埋まらず。
→12/1~ソフトストライキ→ 12/22~指名スト→1/1全面解除(石川の地震対応優先)
※ソフトストライキ=全ての勤務拒否ではなく、「急なシフト変更」などを拒否する
指名ストライキ=特定の組合員や部署がストライキする

参考資料
「ジェットスター労組、スト全面解除 石川の地震対応優先」『日経速報ニュース』2024年1月1日
「ジェットスター、なぜストライキ? 航空の人手不足深刻」『日経速報ニュースアーカイブ』2023年12月26日
「そごう・西武、売却でストライキ 日本の労使関係に一石-転換2023」『日経速報ニュースアーカイブ』2023年12月29日
厚生労働省(2023)「令和4年労働争議統計調査の概況」https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/14-r04-08.pdf
「データブック国際労働比較2023 第 7-3 表 労働争議件数・労働争議参加人員・労働損失日数」https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/databook/2023/07/d2023_7T-03.pdf
厚生労働省「令和3年 労働組合活動等に関する実態調査 結果の概況 2 労働組合員数の変化に関する状況 」https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/18-r03gaiyou02-2.pdf


Bさん:
⚪︎そごう・西武のストライキ
1)概要
・セブン&アイホールディングスによる百貨店子会社「そごう・西武」によるストライキ
・百貨店業界では61年ぶり
・2023年8月31日に実施、従業員900人に自宅待機を要請2)背景
・当初2023年2月1日までに米ファンドに売却予定だった
・米ファンドがヨドバシと手を組むことが判明→豊島区、労組、地元住民から反発
・その他、セブン側の事業計画や雇用継続に関する情報開示姿勢にも不満
・セブン側としては、電子商取引の拡大など事業モデル変革が避けられない状況
・そごう・西武の労組における結束力(雇用者に占める組織率は約8割)
3)結果
・売却は阻止できず
・従業員・顧客・取引先にも不信感
※参考文献
・日本経済新聞「特集ー転換2023、そごう・西武巡りスト、ブランドに傷、教訓のこす、労使協議、重要さ再認識」2023年12月31日朝刊
・日本経済新聞「特集ー転換2023、そごう・西武売却巡りスト、京都大学大学院教授諸富徹さん、『勝負に勝った』スト実行」2023年12月31日朝刊


Cさん:
〇日本における労働組合の種類とそれぞれの役割
1.単位組合(企業別組合)
 同じ会社の労働者が集まって作る組合
 職場環境や待遇などの改善
2.産業別組合
 同じ業種の会社にある労働組合が集まって作る組合
 同業種の人たちと協力し、その業種の未来のことについて話し合う
3.ナショナル・センター
 産業別組合が集まって作る、その国の労働組合を代表する組織
 働く人の暮らしについて、政府と話し合う機会を設ける
4.ITUC(国際労働組合総連合)
 世界のナショナルセンターが集まって作る労働組合の国際組織
 世界中で働く人たちが暮らしやすいと思える社会づくり
 労働問題で課題を抱える貧しい国に対する援助

〇組合費
日本の組合費:収入の約1.6%
欧米諸国の組合費:賃金収入の0.5%~1%
・日本は1.5倍~3倍ほど高い
・「これは,本来,使用者 が雇用すべき従業員を労働組合が組合費によって 雇用するという国際的には例外的な慣行を反映している」(浅見,2020)
・↳組合専従者?
・仕事と家庭と組合活動 24時間対応が求められる
〇非正規労働者の組織化
労働者の4割:パートタイム労働者  
2018年で組織人員130万人、組織率8.1%
1990年の調査開始以来、毎年確実に数万人規模で組織人員を増加
UAゼンセン同盟、生協労連が積極的
電機産業:非正規労働者が3割
非正規労働者の大半が、派遣や業務請負=「間接雇用」
 組織化進まず

※参考文献
https://www.jtuc-rengo.or.jp/about_rengo/toall/perspective.html
日本労働組合総連合会HP
https://www.jstage.jst.go.jp/article/spls/11/3/11_57/_pdf
「日本の労働組合の変貌と現況」浅見和彦,2020,社会政策学会誌『社会政策』第11巻第3号
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2023/09/pdf/043-065.pdf
「座談会 労働組合の現在と未来を語る」2023,労働政策研究・研修機構


先生より:
・「労働経済学」島田晴雄 
 制度的枠組みの重要性 それによる安定的運用と効率的な資源配分
・「労働経済学」宮本弘暁
 賃金の低さと組合の交渉力の弱さ
・「ストライキ迷惑論」についてどう考えるか
・非正規雇用者と労組:地域ユニオンなど個人加入が主か

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