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「家事代行の是非」(第8章関連)(2023.6.14議論)

肯定派の意見

・日本人の有償・無償労働時間を合計した総労働時間は男女ともにOECD平均を上回っている。これを考慮すると女性の社会進出のためには家事労働の分担だけでなく、一部あるいは大半をアウトソーシングすることが必要である。
・費用の問題から継続的利用が困難であっても、数度利用し家事のプロの技術や知識を見て学びそれを自らの家事に活かすことで時間短縮や高品質化を期待できる。したがって、家事代行サービスは低所得層にとっても価値あるものである。
・6歳未満の子どもがいる正社員の共働き世帯の31%は時間貧困であり、そういった層に家事代行サービスはニーズがある。
(時間貧困=可処分時間から労働・通勤時間を差し引いた時間が、国の統計で示される一般的な育児・家事時間より少ない状態)
・利用料金の補助を行う自治体も存在するため、家事代行サービスを利用する際の金銭面の問題を解決するためにそういった補助を利用することができる。
・家事労働というアンペイドワークを家事代行サービスというペイドワークに置き換えていくことでアンペイドワークの経済的価値が見直される。

否定派の意見

・家事代行サービスの継続的な利用には多くの費用がかかる。実際家事代行サービスを最も利用しているのは年収700~1000万円の共働き世帯
・消費生活センターには家事代行サービスに関するトラブルの相談が多く寄せられている。金銭面のトラブルは複数社への見積もり等で回避できるが、そのためには時間がかかる。時短のために家事代行サービスを利用するために時間をかけていては本末転倒である。
・家事代行サービスを利用し、家事労働時間を減らしたとしても、家事を外注する際の外注先の選定や家事代行サービスの評価といった「マネジメント業」を行うための時間が新たに発生する。
・家事代行サービスに関する制度が十分に整備されておらず、家事代行兼訪問介護ヘルパーとして派遣された女性が過重労働により亡くなった際に家事代行としての労働時間が労働時間として認められず、労災として認められなかったという事案も発生している。
・家事代行サービスの費用補助を福利厚生として導入している会社においてその費用補助があまり利用されていない→ニーズがない

まとめ

家事代行サービスには確かな価値があり、女性の社会進出を推進する際に果たせる役割がある。しかし実際に利用する段になると現状では費用面、制度面、利便性などの面で問題が発生する。以上を踏まえ私たちは「家事代行サービスは理論的には是であるが、現実的に困難がある」という結論に達し、さらに「どのようにすれば家事代行サービスがより利用されるようになるか?」という議論が追加で行われた。

+αの議論(どうすれば家事代行サービスがより利用されるようになるか?)にて出された意見

・子供手当などを現物・サービス給付として家事などの代行に切り替えたり、家事の負担を減らす制度を作る。
・年末に子育てに使用した金額に応じてキャッシュバックするシステム、クーポンの配布も有効?。その上で週一の利用であったり、介護と似た問題でdayサービスのように家事をしてもらう手軽に利用できるサービスに変える。
・料金の問題、家事代行サービスへの信用度の低さ、利用者側の優先順位の低さに対応するため個人より大きな団体(企業・行政)が関与し、一部料金を負担する。
・家事代行業を資格化することにより家事代行業に対する信用度を高める
・介護保険のように家事保険を作り、自己負担をへらす。保険料は皆負担。←類似例あり


参考資料

男女共同参画局, コラム1 生活時間の国際比較, 男女共同参画白書 令和2年版, 2020年 
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r02/zentai/html/column/clm_01.html
制作統括官付参事官付世帯統計室, 2021(令和3)年 国民生活基礎調査の概況, 厚生労働省, 2021, 7頁
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa21/dl/12.pdf

koba, 家事代行利用者の年収はいくら?コスト面や満足度もあわせてチェック!, 東京かあさん, 2021
https://kasan.tokyo/miso-shiru/article/2396/

野村総合研究所, 平成29年度商取引適正化・製品安全に係る事業(家事支援サービス業を取り巻く諸課題に係る調査研究)調査報告書, 2017
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11590486/www.meti.go.jp/meti_lib/report/H29FY/000261.pdf

http://kakeiken.org/journal/jjrh
e/109/109_07.pdf 
我が国の家事外部化の動向を探る ――家計調査結果から見た「家事に関する支出」
永井 恵子 (総務省統計局統計情報企画室 統計情報戦略担当課長補佐)
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r02/zentai/html/honpen/b1_s00_00.html 
特集 「家事・育児・介護」と「仕事」のバランス~個人は,家庭は,社会はどう向き合っていくか 男女共同参画局

日本経済新聞2022年8月21日 朝刊 「子育て世代『時間貧困』」PDFにて
日本経済新聞2023年3月18日 朝刊 「沖縄・中城、若年人口14%増 村の子ども予算は2.2倍 延長保育料無償化も」

共働き育児「メイドがいれば万事解決」の大誤解 "家事外注大国"シンガポールで残る親の役割
東洋経済オンライン、中野円佳、2021.7
「過労死:家事代行、労災認めず」毎日新聞、2022.9
https://www.yomiuri.co.jp/national/20221014-OYT1T50081/
「家政婦の働き方 実態調査…厚労省方針 「労基法対象外」改正検討」
読売新聞オンライン、2022.10

【ビザスク×働き方】選べる福利厚生!利用率を上げるための取り組みとは, JobQ Town (参照 2023-6-14)
https://job-q.me/rticles/14934


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