【舞台】音楽朗読劇『黑世界』

2020.10.14 雨下の章
2020.10.15 日和の章

劇場で一公演ずつ観劇しました。
覚え書き。

STORY(公式HPより)

「時よ止まれ、君に永久の美しさを──」
それは永遠の繭期の夢だった。
その永遠の繭期の終わりと始まりに、少女は夢から醒め、花園を去った。
少女が還る現実の世界は、寥々たる荒野だろう。
あてどなき旅。終わりのない繭期。失われた死を求めて。
彷徨いながら、少女は邂逅と別離をくり返す。
14人の俳優と7人の作家陣が織りなす、孤独と狂気。12篇の物語。

LILIUMで不老不死となったリリーが、「死」を求めて旅をする物語。

雨下の章

①イデアの闖入者[作・末満健一]

雨の中、眠るリリーを起こす声。
眠りから覚めると、繭期が見せる幻覚の友・チェリーと、声の主・シュカがいた。
シュカはリリーの傍観者。
干渉すること無く、見守り続けると伝える。

周りには、血を流して倒れている何人もの人。

リリーとチェリーの旅が始まる。

②ついでいくもの、こえていくこと[作・宮沢龍生]

橋職人の親方と、その弟子の物語。

嘘が嫌いですぐに見破る親方。
あと僅かで橋が完成するとき、村には嵐がおとずれ、橋の崩落から弟子を守ろうとした親方は死の淵に。

親方の最期に、リリーがついた嘘。

大丈夫、橋は完成した。
私は明日、その橋を渡って村を出る。

親方は微笑んで、永遠の眠りに着いた。

親方から弟子に残されたたくさんの書類と手紙。
親方の意思と技術を受け継いだ弟子が、橋を完成させ、そしてまた、リリーは旅に出る。

③求めろ捧げろ待っていろ[作・中屋敷法仁]

アイドル☆ヴァンパイアハンターと、彼がヴァンプを倒すところを見たいがゆえに、自らの身体を切り刻み、生き血の臭いでヴァンプを誘い出す老女とその他大勢の女たち。

歌って踊ってのフィーバータイム。
モノマネあり(くれよん○んちゃん)おふざけあり。
モー娘。出の方はダンスがうめぇ…と実感したし、これだけ踊ってくれるの見れるなんて鞘師さんのファンめちゃくちゃ嬉しくない?私だったら嬉しい。

普通に観に来てたら笑うんだろうけど、このテンションの心構えで来てないから戸惑う。

推しのために身を削ってオタク活動を続ける私たちも、あの女性たちと同じなのかもしれない()

④少女を映す鏡[作・末満健一]

人の5倍の速度で老いてしまう、15歳の吸血種の少女(老女)の恋物語。

本当は15歳の老女は、鏡の中にリリーを閉じ込めることで、自分と理想の少女の姿であるリリーを同一視するようになる。

本当は自分が周りにどう見えているか理解し、誰より恋に憧れているのに誰より恋を諦め、怯えている少女。
人の心の形が見える繭期の少年にアプローチをかけられても、彼は心を見ているだけで、自分の姿を見ているわけではないと拒絶し、そのまま寿命迎えて永遠の眠りについてしまう。

息絶え、心が無くなったはずの少女に少年がかけた言葉。
「本当に、綺麗な人だったんだな」

末満さんは、大久保祥太郎くんをとっても信頼しているんだな…と思う配役でした。

⑤馬車の日[作・降田天]

息子の姿を探し続ける母親と、母親に息子の夢を見させ続ける息子の話。

母親役の樹里さんの狂気と危うさと純粋さのバランスが素晴らしくてゾッとした。

母親のメイプル、息子のヘイゼル、使用人のシダ、全員樹木の名前なんだなと思ったけど、他の話の登場人物も植物なんだろうか。

鞘師さんの生き返り方が秀逸。

⑥枯れゆくウル[作・末満健一]

シュカの正体。

ヴラド機関では、リリーの不死能力を試すため、切り刻み、磨り潰し、燃やし、あらゆる残虐な行為をリリーに対して繰り返していた。
ヴラド機関にいたシュカは、自らが渡したスノーフレークの花を見て涙したリリーを見、リリーの心が死んでいなかったことで自分がリリーにしてきた行為への罪の意識に苛まれる。

リリーを逃し、自分は、彼女を見守り続けることを決める。
ソフィが生み出した不老不死の薬"ウル"を使用して。

盗み出したウルが尽きるまで、シュカはリリーを100年もの間、見守り続けた。

彼女が、幸せでありますように。

日和の章

①家族ごっこ[作・末満健一]

倒れていたリリーを救ったのは、父親・エルマーと、5歳の娘のラッカ、遠縁の親戚の男の子・7 歳のノク。

子どもたちに気に入られ、家族と暮らすようになったリリー。
気がつけば、5年の歳月が流れ、ラッカはリリーを"ママ"と呼ぶようになっていた。

「リリー、パパと結婚して本当のママになってよ」

手を繋いで歩いた散歩道。
ずっと一緒に居てね、約束よ。

血盟議会で優秀な議員だったエルマーを消すため、敵対派の刺客に襲われる家族。

家族を守るため、リリーはエルマーの代わりに刺され、刺客たちのイニシアチブを奪い、自分達自身を刺すよう命令をくだした。

身体中に返り血を浴びたリリーは思う。

もう、この家族のもとには居られない。

リリーの旅が、また始まる。

②青い薔薇の教会[作・葛木英]

森で神父を助けたリリーは、小さな村の教会に迎えられた。
神父と、教会で働くモスカータ。

一見良好な関係に見えた2人は、妹の命を奪われた者と、奪った者の関係だった。

神の教えに従い、許すことを選ぶ神父。
許されることを受け入れられず、自分の罪の報いを求めるモスカータ。

今は枯れ果ててしまっているが、妹が大切に育てていた青い薔薇を、再び咲かせてほしい。
1年目は咲かず
2年目も咲かず
3年目に葉が茂り
4年目に青い花が再び咲いた。
そして5年目の今。

神父が許そうとしたのは、神の教えに従ってのものだけだったのか。
近くに居させることで、罪の意識に苛まれ続けさせることも、一つの復讐だったのではないか。

許したい。それでも、許せない。

不可能だと思った花が咲いたように、いつか許せるその日まで。
不可能だと思った花が咲いたように、いつか許されるその日まで。

らんくんがまたひどい慟哭の世界で生きているのを観たときは、あまりにハマりすぎていて、これははたして代役なのか…?元かららんくんだったのではなくて…?と思わざるをえなかった。しんどい。

③静かな村の賑やかなふたり[作・岩井勇気]

日和のお笑いタイム。

リリーが出会ったカップルは、リリーが吸血種だとわかると、吸血鬼は黒く裏地は赤色のマントを着ているはず、にんにくが苦手なはず、十字架も、マントを翻すとコウモリがバサバサと飛んでいく、なぜか狭い棺桶で寝ているはずと、次々にいわゆるステレオタイプな吸血鬼の特徴を賑やかに歌い出す。

リリーが楽しそうで何よりでした。

彼氏側の声量も歌の上手さもやばい。

④血と記憶[作・末満健一]

ヴラド機関がリリーの居場所を突き止め、とある炭坑へ追い込んだ。

ヴラド機関から派遣されていたのは、30歳になったラッカと、32歳のノク。

リリーが不死の吸血種だとわかった後、ラッカはリリーに再び会うためにヴラド機関に入り、ずっとリリーを探し続けていた。

一緒に逃げよう。
また一緒に暮らそう。
ずっと一緒に居るという約束。
ママ。

自分のためにヴァンパイアハンターを手にかけたラッカを、リリーは噛み、イニシアチブで自分にまつわる記憶を全て消し去った。
自分と出会ってしまったせいで、ラッカやノクの人生が狂ってしまった。

崩落に巻き込まれ、岩の下敷きになるリリーとノク。
命を落としたノクは、血を媒介にして再生したリリーの脳内に現れる。

あいつはずっとリリーとの記憶を大切に思ってきた。
記憶を返してやってほしい。
ノクとリリーとの、約束。

ヴァンパイアハンター・アーヴィ?のらんくんがRAP BATTLE ヒヨリディヴィジョンを繰り広げて居たので、あ、ほんとに代役だったんだなと安心した。

⑤二本の鎖[作・来楽零]

倒れていたリリーを家に運んだ繭期のヴァンプのカップル。(リリー倒れ過ぎでは…)

クランに連れて行かれる直前に、駆け落ちした2人。
森の奥の小さな小屋で、まもなく繭期の抜けようとしていた。

ずっと一緒に居るように
自分を愛してくれるように

お互いをイニシアチブで縛り合う。

2人は、きっとイニシアチブが無くても想い合っていただろうに、お互いがイニシアチブを使ってしまっていることで、きっと一生、どこかで罪の意識を抱えながら共に過ごすことになる。

一緒に居てくれるのは、イニシアチブに従っているだけ
自分を愛してくれるのは、イニシアチブに従っているだけ

表面上だけでも、この2人が、穏やかな、やさしい時を刻んでいけますように。それが本当の幸せなのかはわからないけど。

よしくんの歌、とっても素敵だった。
1話のエルマー、2話の排他的な村人と3役、どれも全く違う人物像で、やっぱりよしくん上手だなぁ…と。

⑥百年の孤独[作・末満健一]

130歳を迎えたラッカは、死期を迎えていた。

ヴラド機関を離れ、父と暮らした村に帰ってきたラッカは、生涯の伴侶とも出会い、子どもや孫にも恵まれ、穏やかな生活を送っていた。
でも、この100年、ずっと抱いていたのは、心にぽっかり空いた穴と、孤独。失ってしまったかけら。

ラッカの前に現れたリリー。
ノクとの約束を果たすため、最期に、ラッカに記憶を返す。

一緒に歩いた散歩道。
眠る前、いつも2人で話したたくさんの話。
2人だけの、内緒の恋話。

あなたも、孤独に負けないで。
ずっと一緒に居る約束、守ってくれてありがとう。
ママ。

リリーの記憶の中で、ずっとラッカは一緒に居る。

ノクが再度リリーの脳内に現れて、ノク自身も、ラッカやエルマーに対してと同じように、リリーのことも好きだったと告げたとき、初めて泣いた。
リリーはこんなにも愛され、大切に思われていたんだね。

朴ろみさん、5歳、10歳、30歳、130歳のラッカはもちろん、2話ではモスカータという青年まで。
それぞれに全く違う声、話し方、その声のままで自在に歌う姿、圧巻としか言えませんでした。特に最後のシーン、想い出話では10歳のラッカの声を出していた直後にすぐに130歳の声に変わるところ、すごかった。

日和は、朴ろみさんあっての構成だったな…。

それにしても、ラッカやノク、ラッカの子どもや孫たちも普通に越繭しているので、TRUMPシリーズを観ていると越繭することが非常に困難で、大体その前に死ぬ(だからCOCOONで越繭したエミールやジュリオが希望に見えた)ところあるから、拍子抜けしたというか、普通はちゃんと越繭できるんだなと認識を改めた。

個人的な好みだと、日和のが好きだったかな。
全体的にあたたかくてやわらかさがある気がする。
雨下の方が狂気強め。

リリーは、クラウスともソフィとも違う。
永遠の命という孤独はあるかもしれないけど、総じて、彼女は他者と共にあり、100年に渡って見守ってくれていたシュカという存在や、共に生きたラッカがいる。

ソフィへの憎しみ。
自分はソフィとは違うというプライド。
それが、彼女を狂わせること無く、永遠に純潔な心を持たせ続ける源。

少女がいつか、あたたかな眠りにつけますように
少女がいつか、愛しき死を迎えられますように

リリーが伸ばした両の手は、いつか届きますように。

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