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多様な学びの現状と展望

 去る2月10日、11日、私の地元の東京都小金井市で「地方自治と子ども施策」全国自治体シンポジウム2023 小金井が開催されました。
 「子ども施策の基本理念と自治体における子どもの意見の反映」が全体テーマで、自治体関係者と研究者・専門家・NPOが連携、協力して2002年から開催しているとのことで、私自身は当日所用で参加出来なかったのですが、報告資料集を入手して、特に関心のある「子どもの居場所」分科会の資料を中心に拝読しました。
 同時期にNHKスペシャルの不登校特集やNPO主催の多様な学びプロジェクトのシンポジウムもあり、そこでの情報を含めて不登校(多様な学び)問題の現状と展望が概ね示されたと感じておりますが、それについて当事経験者として、また支援活動に関わる者として私見を述べさせていただきます。
 まず昨今特に不登校生の増加状況や問題の深刻さ、複雑さに関する情報発信が増加し、社会問題としての認知が高まっていることもあり、2017年の教育機会確保法施行から2023年の文科省通知によるCOCOLOプラン発信や本年導入された東京都のフリースクール助成施策等さまざまな形で支援体制が徐々に強化されていることは、以前に比べて進歩であることは理解(特に東京都だけの施策であるがフリースクール通学者への一部学費負担や運営費の補助は当事者としては喫緊の課題であったので大きな前進である)しますが、全体的な課題認識が予算や施策内容、解決策の進め方(スケジュール感や役割分担、メンバー構成等)を見ても不十分かつ悠長であると言わざるを得ません。 
 国による学校外の普通教育は戦後70年間置き去りにされてきたために、文科省としても明らかに経験不足であるから、試行期間が必要であり、今回🟰2023年の通知も国レベルでは方針、理念を示すにとどめて、制度整備の実質は、都道府県を中心として自治体に委ねるというスタンスには現状を踏まえて一定の理解はするものの、不登校が既に中学校段階では推定にはなりますが約1割相当と当事者が多いことや本人及び親の精神的、経済的負担が甚大であること。そこに学びの中核となる学校制度の破綻や、将来的な引きこもりの発生や社会的自立の阻害という更なる社会的課題が関連していることを鑑みると、中途半端な対症療法的対応や自治体任せの姿勢では解決困難であることから、より踏み込んだ財政支援による施策展開や学校制度とも絡めた社会改革が必要で、そのためには政治的な判断、対応が求められる重大案件であり、認識を更に高めての中長期的な視野に立っての計画化を要望していきたいと思います。
 国にノウハウがないので、民間の運営関係者の経験値をベースに自治体や研究者、また親の会共連携して知見を高め、子どもの意見も取り入れながら適切な対応を試行錯誤していくのは手法としては正しいと思いますが、現状の自治体における政策検討メンバーに、旧現職含め教員を主体とする教育関係者の構成比が高く、年齢層も高いため、この問題を多様な学びの機会確保による社会的自立支援、社会の多様化・活性化支援として捉えれば、社会の中で人数構成比が高く、時代の変化に柔軟に対応している民間企業経験者の参画を増やしていく制度設計・支援(オンブズマンへの起用等)も有効であると実感します。
※当事者でなくては理解されにくい面も多々あり、不登校経験者以外の約9割のマジョリティの方との意識齟齬はあり得ますが、当事関係者だけでは解決策の幅が狭まるリスクがあることを付け加えさせていただきます。
 また子どもの意見を取り入れる際にも、当事者は自信を失ってなかなか意見を言えない状況であることをよく理解した上で、丁寧なヒアリングと多様な意見をバランス良く反映いただきたいと思います。
 COCOLOプランにある施策はプランの多様化推進であり、それで一人でも多くの当事者の方が助かればプラスであるとは思いますが、まず学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)は通常学校との差別化が図れ、登校しやすい対象になるかは現状の教育支援センターの実態からも疑問ですし、校内教育支援センターも同様です。教育支援センターのICT教育の強化も「学び」ということの支援の一つにはなりますが、フリースペースえんの西野さんが言われている、子どもの育ちの三要素の残り二つ「遊ぶ」、「ケア」は満たされません。また行政の支援策としてよく提示されるスクールカウンセラーやスクールケアワーカーが当事者アンケートを見る限り当事者からあまり評価されていない実態もあります。
 財政支援については自治体によりけりの面も強いながら少しずつ増えてきておりますが、多様な学びプロジェクトのアンケートで顕在化しました通り、当事者(保護者)の経済的負担はフリースクールの通学費の他にもケアのための退職や時短勤務、学校代替の学習費や家庭内で増加しがちな遊びのための費用負担など想定以上に大きく、フリースクール通学費の一部負担(東京都で月2万、茨城県で1.5万で実質の約半額弱)だけでは不足ですし、運営団体への費用補助も東京都で上限年5百万、茨城県で1百万と、現状厳しいスタッフの人件費改善や設備環境の改善には到底足らないと思います。
 最終的には大学まで含めた学費無償化の中でフリースクール等の多様な学び学校の無償化及び内容改善(運営者、スタッフが安心して対応出来るだけの人件費確保、設備整備が出来るレベルの実現)を図るべきであると考えますが、まずは喫緊の対応として国家予算での全国一律のフリースクール等への財政支援の拡大を強く要望いたします。 
 またフリーハンドの支援はモラル破綻する懸念は当然ありますので、現在検討されているさまざまな対象施設認証や出席、内申点等のガイドライン作成については適切な整備をお願いしたいと思います。

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