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技術革新とグローバリズムが破壊した世界

2019年1月6日(日)、TBSサンデーモーニング新春SPにて『技術革新とグローバリズムが破壊した世界』についてのディスカッションがされていました。

( https://www.tbs.co.jp/sunday/ )

放送を視聴した上での私の見解を、僭越ながら以下に述べさせて頂きます。

あなたは、技術革新とグローバリズムが破壊した世界を是と捉えますか?非と捉えますか?
創造的破壊なくして人類の進化や発展はないとも言えます。人類が進化や発展するためであるならば、多少の破壊は致し方ないのでしょうか?
日本の伝統精神は、大別すると次の3つであると松下幸之助さんは仰っています。「和を以って貴しと為す」、「衆知を以って事を決す」、「主座を保つ」です。世界の潮流がポピュリズム、すなわち自国第一主義、利己主義へと傾く時代だからこそ、日本の和の精神と利他主義が尊ばれます。

日本人は本来、外来の文化を含めた新しい文化に寛容であり、それらを柔軟に自国の文化に取り入れ融合し、世界では類のない八百万の神様が存在する独自の文化を築いてきました。外部のものに柔軟に接するためには、内部に剛なるものが必要です。これまではその剛となっていたのが日本人が長い歴史の中で培ってきた普遍的な哲学です。

普遍的な哲学とは、今の日本に失われてしまっている日本人を日本人たらしめるナショナリティです。日本国を第一とするナショナリズムではありません。ナショナリズムは強すぎますとショービニズム(排他的民族主義)に陥ります。ナショナリティとは、簡単には世界から見た「日本人らしさ」の事です。

では、「らしさ」とは何か?例えば、アメリカらしさについて考えてみます。私たちがアメリカ人に抱くアメリカらしさとは、分厚い肉汁たっぷりのステーキを食べ、チョコレートたっぷりのあま〜いデザートを食べているイメージがあります。それを私たちが目にしますと、アメリカらしいと感じます。しかし、私たちが実際にアメリカに旅行に行ってみたら、アメリカ人は毎日サラダばかり食べていたとします。そこには、事前に持っていたイメージと大きなギャップが生じてしまい、私たちはサラダを毎日食べるアメリカ人にアメリカらしさを感ず違和感を覚えてしまいます。私たち日本人にとっては何かの映画で目にしたような、腕にタトゥーの入った厳つい筋肉むきむきのアメリカ人が、庭で分厚いステーキに噛み付いている方が、アメリカらしさを感じます。或いは、毎日哲学書を片手に「人は何のために生きるのか」と眉間にしわを寄せて考え込んでいるアメリカ人よりも、「♪カーモンベイビーアメリカ!!」とノリノリの明るい表情で踊っている方がアメリカ人らしいと言えます。

仮に、「世界から見た日本人らしさを生み出す日本人のイメージとは何なのか?」を、もう一度見直す必要があると言えます。世界からバカにされているような日本人、例えば「いつもペコペコお辞儀をしている。」「いつもカメラを首から下げている。」「気持ち悪いニヤッとスマイルをする。」などのイメージこそが、重要です。「いつもペコペコお辞儀をしている」のは、何事に関しても感謝の心を忘れない精神があるからです。「いつもカメラを首から下げている。」のは、キャノンやソニーを始めとした日本のカメラ技術が世界最高レベルである証拠です。「気持ち悪いニヤッとスマイルをする。」のは日本人が周囲への気遣いが出来る証拠です。 なぜ、世界から見た日本人にはそんなイメージがあるのか?というイメージを生み出す背景のストーリーや理由(コンテキストデザイン)を世界にきちんと伝える努力が、まだまだ不足しているとも言えます。努力不足に加え、これまではそこには言語の壁があったのかもしれません。しかし、既に言語の壁もどんどん無くなってきている時代です。

世界から見た日本人のイメージとは、マーケティングの専門用語では「インサイト」という言葉に置き換えられます。本音が殆どの海外と異なり、本音と建前を使い分ける日本人のインサイトを調査するのは中々難しいとされていますが、このインサイトには、ポジティブインサイトとネガテイブインサイトがあり、後者のネガテイブインサイトこそ重要であり、それを転換する事で新たな潜在的ニーズ掘り起こすことが可能になると言われています。先述した例では、日本人に対するネガティブなイメージこそ、背景にあるコンテキストデザインを転換した上で、世界標準のコンテキストで世界に伝える努力が必要になります。

最後に利他主義について。利他主義とは、その意味を勘違いをしている人が多いですが、自分のことを省みずに他人の為に尽くす事という意味ではありません。先ず、自分を大切にすること。そして、自分と同じように他人も大切にする事という意味です。具体的には、「自分がされて嫌なことを他人にはしない。自分がされて嬉しいことを他人にする。」という事を、身近なところから出来る範囲で実行していく事であると私は考えます。


※こちらは2019年1月6日(日)のnakayanさんの連続ツイートを読みやすいように補足・修正を加え再編集したものです。


中山兮智是(なかやま・ともゆき) / nakayanさん
JDMRI 日本経営デザイン研究所CEO兼MBAデザイナー 
1978年東京都生まれ。建築設計事務所にてデザインの基礎を学んだ後、05年からフリーランスデザイナーとして活動。大学には行かず16年大学院にてMBA取得。これまでに100社以上での実務経験を持つ。
お問合せ先 : nakayama@jdmri.jp

記事:MBAデザイナーnakayanさんのアメブロ 2019年1月20日付

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