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試しにMBAを取ってみたnakayanさんが語る「もっとも大切な学び」とは何か

2019年6月24日付東洋経済オンラインには、「MBAを取っても残念な人」がハマる3つの勘違い 見失うとヤバい「もっとも大切な学び」は何かと題し、次の記事が掲載されていました。
https://toyokeizai.net/articles/-/287594

以下一部転載。
…「数百万円以上の投資をしてMBAをとる意義ってあるんだろうか」と考えている人も少なくないかもしれません。ビジネスパーソンによってMBA取得の目的はさまざまかと思いますが、時にMBAに期待を抱いてしまい、残念な思いをする人もいます。そこで、MBAを最大限に活かし、MBAをとっても残念な人にならないために何をすればよいのかを考えていきたいと思います。

…さまざまなパターンがありますが、よくある勘違いは以下の3つです。

① 「MBAさえ取れば何とかなる」という勘違い
② 「MBAでは『知識』さえ習得すればいい」という勘違い
③ 「MBAを取れば『起業家』として成功できる」という勘違い 


全て筆者が記事内で述べている通りであり私も同意するところですが、筆者の見解に加え実際に数百万円以上の投資をしてMBAを取得してみた私の見解を以下に補完させて頂きます。


■ MBAは第2ビジネス語

先ず、勘違い①にある「MBAさえ取れば何とかなる」という勘違いについては、MBAは資格ではなく学位ですが、基本的な世間の認識は資格に対するものと同じです。世間には所謂、士業と言われる資格さえとっておけば何とかなると考えている人たちが未だに多くいます。同様に、MBAに対しても似たような感覚の人たちが多くいます。

MBAについて私が良く説明に用いる言葉としては、「第2ビジネス語」を使えるかどうかの違いと表現します。例えば、MVV、CSV、MVPと聞いてその言葉の意味と定義が分かるでしょうか。


使用例:
①「当社ではMVVの軸が社内にきちんと浸透していません。そのため、忖度ばかりになってしまい自浄作用が働かずコンプライアンスの阻害要因になっています。」
②「SDGsを加味した上で当社がこれからの時代を生き残るためには、MVVのVVに更にCSVの強化が必要ではないでしょうか。」
③「消費者ニーズが多様化する中での製品開発はウォータフォール型ではなく、アジャイル型でニーズを探りながら進める方が賢明であり、MVPを意識することがKFSになります。」

マネジメントクラスでは、MBAを保有している人たちが多いので、これらの用語を分かっている前提で会話が進んでいくことも多々あります。恐らく何も知らない人たちにとっては、5倍~10倍速くらいで会話が進捗していくのではないでしょうか。マネジメントクラスでは共有の基礎知識があるので、多少不明な点があったとしてもその高いリテラシーで文脈を補完できる人たちが多いとも言えます。


MVV:Mission、Vision、Value
CSV:Creating Shared Value
MVP:Minimum Viable Product


■ MBAが習得すべきは、KnowingからDoing、更にはBeingへ

次に、勘違い②にある「MBAでは「知識」さえ習得すればいい」という勘違いについては、かつてのMBAは「(M)マジに(B)バカで(A)アホ」と揶揄されていた時代もありました。それは、ハーバード・ビジネス・スクールのケース・スタディを筆頭にKnowing重視の詰め込み型教育がなされ、実際の現場とはかけ離れた机上の空論が大好きな学者型の現場では役に立たないリーダーたちを多く生み出していたからです。しかし、ハーバード・ビジネス・スクールも次第にケース・スタディ教育だけでは世界で通用するリーダーたちを育てられないことに気付き始め、2012年前後からフィールド・スタディを重視するようになりました。これは、それまでのKnowing(知識)教育からDoing(行動・実践)教育へ、世界のマネジメント教育が大きくパラダイムシフトしたことを意味しています。更に、昨今では、Doingの先にあるBeing(Who am I/価値観の形成)を重視するようになりました。Beingとは、他者と異なる自分自身の価値観を生み出すこと、更には、それぞれが自分とは異なる価値観を有していることを知るということでもあります。簡単には、日本のムラ社会で育った人の多くが持っている「自分と他人(周り)が同じであることが当然であるという先入観」や「自分を他人(周り)と同じにしなければいけないという思い込み」などを変えることです。

私の場合は、他人とは違う意見を主張することやオリジナリティある作品を生み出すことを重視する建築デザインの世界で育ってきたために、珍しいかもしれませんがMBAの取得過程では逆の経験を強く実体験しました。具体的には、ムラ社会で生きてきた人たちとどのようにコンセンサスを図るかということにとても苦労しました。結果的に、「私は、この人たちとは違う。」ということを改めて実感しました。違うならば、違うなりの対応や行動をすればいい訳であり、私がMBA取得を試みなければ、「違う」という明確な結論は得られずに、「私は、この人たちと合うのではないか」という空想を未だに抱き続けていたかもしれません。


■ MBAは起業家としての失敗を減らせる

最後の勘違い③にある「MBAを取れば「起業家」として成功できる」という勘違いについては、上記の勘違い①で私が述べさせて頂いた内容と重複するところはありますが、MBAはマネジメントの基本知識を得ることであり、起業家として成功できる確率を高めるものではありません。起業家としての成功は、MBAを保有していようがいまいが、実際に行動に移した誰に対してもその確率は平等です。しかし、MBAを保有していることで失敗する確率を大幅に減少させることは可能になります。起業に対するリスクヘッジのようなものです。


■ MBAは優越感ではなく、有能感に繋がる

私はMBAを取得する以前までは学士すら得ずに、学歴や肩書を重視する旧態依然の慣習が残るビジネスの世界で生きてきましたので、見識を持たないある人からはバカにされ、ある人からは蔑む行動をされることなども多くありました。そのため独自性ある感性価値を生み出すことが高い評価に繋がるデザインの世界に逃げ込んでいた感もありました。そんな私自身が、実際にMBAを取得して思うのは、これまで同じ土俵に立つことにも腹立たしさを覚えていたような人間たちに対して、同じ土俵に立ち堂々と正面突破で叩きのめすことが可能になったという実感です。換言しますと、それは「有能感」を得ることが出来たということです。

「有能感」は優越感とは異なります。優越感は、自分と他者を相対的に比較した上で自分の方が優れていると感じることですが、「有能感」とは、他者との比較ではなく自分の中に確固たる絶対的な基準を持ち、これまで積み重ねてきた地道な努力に自信を持つことです。

この「有能感」とは、内発的動機づけに不可欠な「主体性を保つこと」「他者との良好な関係性を築くこと」と並ぶ3大要素のひとつになります。世の中に多くいる鼻の尖ったような優越感を好む人間の殆どは、本当は内心に強い劣等感を抱えており、その劣等感の憂さ晴らしの為に他者を見下し優越感を得ています。そのような劣等感に起因した優越感を得ようとする人間たちに、私はMBAを取得する過程で得た有能感を持つことで負けることがなくなりました。



中山兮智是(なかやま・ともゆき) / nakayanさん
JDMRI 日本経営デザイン研究所CEO兼MBAデザイナー 
1978年東京都生まれ。建築設計事務所にてデザインの基礎を学んだ後、05年からフリーランスデザイナーとして活動。大学には行かず16年大学院にてMBA取得。これまでに100社以上での実務経験を持つ。
お問合せ先 : nakayama@jdmri.jp





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