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日本外交に求められるナショナル・ブランディング

2019年2月10日(日)、TBSサンデーモーニング「風をよむ」のコーナーでは「日本外交の今」と題してディスカッションがされていました。

( https://note.mu/tbsnews_sunday/n/nfc8b1ba33046?magazine_key=m26cde3a1301e )

以下要約。
「北方領土問題においては手詰まり感が色濃く漂う日ロ外交。徴用工問題に端を発し悪化の一途をたどる日韓関係。アメリカ頼みで日本の独自外交の姿が見えない北朝鮮外交。更には、唯一の被爆国でありながら、「核兵器禁止条約」(2017)に参加しない決断。IWC:国際捕鯨委員会から脱退(2018)し、商業捕鯨を再開の決断。2018のG7:主要7か国首脳会議では、プラスチックごみによる海洋汚染問題が協議され、「海洋プラスチック憲章」がまとめられたが、日本とアメリカは署名せず。海外から批判を招くケースが増加している。」

放送を視聴した上での私の見解を、僭越ながら以下に述べさせて頂きます。

日本外交には、「ナショナル・ブランディング」がされていないことが最も大きな問題であると私は考えます。今一度、日本のリ・ブランディングが必要な契機です。日本、或いは日本人は、外交が必要となる世界各国(MT:マーケティングターゲット)、或いは特定の外交対象となる国(CT:コミュニケーションターゲット)、例えば米国や中国、韓国、北朝鮮、更には、MTよりも小さな範囲となる欧州やG20、G8、G7等に対して、日本政府としてのブレない共通軸(BI:ブランディングアイデア)を持って外交をする必要があります。

BI を構築するために必要となる具体的な行動としては、現在の日本というブランドは世界からどのように思われているのか(インサイト)を調査した上で、今現在持っている機能的価値や情緒的価値を分析し、更にはこれからの未来において持つ事が可能となる機能的価値や情緒的価値を加え、日本人として日本というナショナル・ブランドを世界に対してどう伝えたいのかを明確化するという事です。念のための補足ですが、インサイトはアンケート調査とは異なります。アンケート調査では、建前の回答しか得られません。建前の回答ではなく本音の回答や、潜在的なニーズがインサイトです。特に本音を隠し世間体や体裁を気にする日本では建前の回答しか集まりません。本音の回答を導き出すには、調査する側と回答者の間に信頼が必要であることや、調査する側に一定のスキルを有したリテラシーが必要になります。

先述では「今現在持っている機能的価値」について触れましたが、例えば、日本ブランドの中には日本が持つ機能的価値として「利他主義」もその一つとなります。この利他主義については、きちんと定義を確立した上でターゲット(CT)に伝える必要があります。ターゲットに伝える以前に、伝える側である日本人の多くが、この利他主義の定義をきちんと理解していない点にも問題があると言えます。利他主義とは、自らを犠牲にして他者に利益を与えることではありません。 利他主義とは、自分を大切にし、自分と分け隔てる事なく他者も同様に大切にするという事です。つまりは、具体的な行動としては、自分がされたら嬉しい事を相手にも同様に行い、自分がされたら嫌な事を他人にはしないという事でもあります。

日本人が日本のナショナル・ブランディングに則って外交をするならば、この自分と他者の関係性を外交に置き換え、どんな場面の外交においても変わることなく、利他主義を貫けば良いだけの話です。例えば、欧米などでは、ディベートにおいて可能な限りイニシアチブを取る事に重きが置かれますので世界のルールに合わせた一定のテクニックも必要となりますが、それでは日本人らしくありません。日本のナショナル・ブランディングに則っていません。

世界外交において日本人らしく振舞うためには、先ず日本ブランドを世界に浸透させる必要があります。つまりは、日本人は世界のルールに従った小賢しいテクニックや小手先のテクニックを使う民族ではないという「日本ブランド」を、事前に世界全体に認識して貰う必要があるという事です。それは、日本人が外交において世界に合わせる必要はないという意味でもあります。

日本人は日本人なのです。世界の中で独自の民族なのです。それは傲慢に振る舞えという事ではありません。日本人としてブレない軸を持つという事です。世界に対して、日本人というのはこういう民族なのだと伝えるのが「日本ブランド」です。現状の日本においては、日本人自身が「日本ブランド」を失いかけている事が問題でもあります。もう一度、「日本ブランド」をナショナル・ブランドとしてリ・ブランディングする必要に迫られているのではないかと私は考えます。


※こちらは2019年2月10日(日)のnakayanさんの連続ツイートを読みやすいように補足・修正を加え再編集したものです。


中山兮智是(なかやま・ともゆき) / nakayanさん
JDMRI 日本経営デザイン研究所CEO兼MBAデザイナー 
1978年東京都生まれ。建築設計事務所にてデザインの基礎を学んだ後、05年からフリーランスデザイナーとして活動。大学には行かず16年大学院にてMBA取得。これまでに100社以上での実務経験を持つ。
お問合せ先 : nakayama@jdmri.jp

記事:MBAデザイナーnakayanさんのアメブロ 2019年2月20日付

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