190523デザイン思考_1280_670

若者を魅了した「堀江イズム」とは

2019年5月10日付新R25には、「飲み会は“意味”を込められるかが勝負」田端信太郎が教える“飲み会・接待”の極意と題し、リクルートにて「R25」を立ち上げた後、ライブドアにて堀江さんの下で働いていた経験のある田端信太郎さんのインタビュー記事が掲載されていました。

https://r25.jp/article/675681850121580227

以下文中転載。

ライブドアに入ってビックリしたんだけど、堀江さんって接待交際費を1円も認めない主義なんだよ。
キャバクラ代なんてとんでもない(笑)。
飲食してコミュニケーション取ること自体は否定してないと思うよ。ただ、「会社のお金なんで!」みたいなリスクゼロのサラリーマン根性を嫌うんだよね。
「それで本当に売上が上がるなら、あとで給料上げるから、まずはリスク取って自分の金で接待しろよ」っていうタイプ。
広告営業なんて、“飲み代に一晩で何十万円使った”なんてしばしばある話だと思うけど、「それで売上上がらなかったら誰の責任になるの?」って。

責任の所在を明確にしないフリーライダーを軽蔑してるんですよ。
昔ライブドアで、備品注文する「アスクル」で、カップラーメン頼んで家に持って帰ったヤツがいたんだって。

それ見て堀江さんが「なんだよこれ!!」って激怒してさ。それ以降、アスクルも1円単位で全部「社長決裁」になった(笑)。
でも俺は「ああ、その通りだな」って納得したんだよ。本当に仕事を自分ごととしてとらえているビジネスパーソンは、「会社の金で飲み食いしよう」って発想に至らないと思うんだよね。

それ以前の会社でやってた接待では、こちらが出す接待交際費でクライアントが高い酒飲みまくってて。そのあと発注をもらっても、内心「あんた、プロとしてどうなんだよ?」って思うこともあったから(笑)。

撮影で「グラドルの○○呼べ」とか(笑)。いや、それで発注もらえるならやりますけどさあ…って思いつつだんだん飽き飽きしてたから、そういう「堀江イズム」に共感できたんだと思う。

私は、堀江さんの5歳下、田端さんの2歳下になりますが、当時は若者たちによるオヤジ狩りなども流行していた時代であり私の目から見えていた堀江さんは、「この人は古臭い時代を変える!化石化した脳ミソと加齢臭や油汗が酷いオヤジたちを叩き潰せ!という期待感」と同時に、「この人で大丈夫なのかな?という不安感」が半々ながら、前者の期待感の方が強くなっていたという感じでした。

旧態依然の組織では当たり前のように経費扱いされていた接待交際費というものは、極めて保守的な組織の構成員になり、組織に忠実であることへのトレードオフとして与えられた権利のようなもので、逆に、主体的に行動できるスパイクたちを求める組織であれば、トレードオフの権利は必要なかったとも解釈できます。

更には、「それで本当に売上が上がるなら、あとで給料上げるから、まずはリスク取って自分の金で接待しろよ」というのはロジックが通っています。「接待交際費は売上に繋がる」という暗黙の事実を信じず、先ずはファクトの再確認に加え、売上という数値で判断していたと言えます。つまりは、旧態依然の組織にあるような常識にとらわれず、「数字、ファクト、ロジック」で判断していたと言えます。そこが、ライブドアに優秀な若者たちを惹きつける要素の一つになっていたのではないでしょうか。

加えて、IT系の人間たちは、広告代理店の人間たちとは異なり、基本的には人間よりもPCと向き合っている時間の方が長く、ハイスペックなPCやICT環境への投資などには価値を感じますが、キャバクラ代などには価値を感じない人達が多いという側面もあるのかもしれません。


次に、アスクルでカップラーメンを頼んで家に持ち帰っていた件への対応について。堀江さんは、激怒して、それ以降はアスクルも1円単位で社長決済になったそうですが、理由はお金なのか、社員の行動なのか不明ではありますが、黙認せずに社長決済にした判断は正しい行動だったと私は考えます。100円、200円だから良いだろうと金額の小ささを理由に社内のお金をごまかす人間は、その内に100万円、200万円ごまかすようになり、いずれは、100億円、200億円ごまかすようになります。

社員の立場で物事を考える社長であるならば、社員たちからカップラーメンを求めるニーズがあるならばそのニーズを満たして上げるのは安上がりであると判断して、一定数を会社で一括購入した上で、社内で食べなかった分は自由に持ち帰って良いなどとするのでしょうが、そこも堀江さんらしいと言えば堀江さんらしい側面であり、堀江さんから不安感を感じる要因の一つとも言えます。

私の記憶が確かならば、堀江さんがライブドアの株主総会の後に、慰労会か何かで灰色のツナギをきて馬鹿騒ぎをしている映像がワイドショーなどで流れていましたが、あの慰労会は会社のお金で社員たちと飲み食いしていたということではないのでしょうか?そう考えますと、当時の堀江さんは、ちょこまかと会社のお金をごまかすような社員の姿勢の方が気に食わなかったのではないかとも判断出来ます。

この田端さんのインタビューから見えてくるものは、堀江イズムの何が当時の若者たちを魅了していたのかという点であり、堀江さんから盗み取れる良い点は素直に参考にすべきではないかと私は考えます。


中山兮智是(なかやま・ともゆき) / nakayanさん
JDMRI 日本経営デザイン研究所CEO兼MBAデザイナー 
1978年東京都生まれ。建築設計事務所にてデザインの基礎を学んだ後、05年からフリーランスデザイナーとして活動。大学には行かず16年大学院にてMBA取得。これまでに100社以上での実務経験を持つ。
お問合せ先 : nakayama@jdmri.jp



頂いたサポートは、書籍化に向けての応援メッセージとして受け取らせていただき、準備資金等に使用させていただきます。