本庶教授 革新への提言「企業、目利き育成を」


 #NIKKEI

政府は介入を避けよ

――イノベーションとは何ですか。

「イノベーションとは結果だ。とんでもないと思うようなことから始まって、結果として世の中を大きく変える。アマゾンやフェイスブックが登場したとき『うまくいくわけがない』『どうやってもうけるんだ』とバカにされた。世界トップの企業になるなんて当時は誰も思わなかった。振り返ってみれば、あれがイノベーションだったと認識される」
――政府は日本からイノベーションを起こそうと躍起です。

「政府が旗を振ってするものではない。政府がこれをしなさいあれをしなさい、と言うのは全くばかげている。役人が考える程度のことは誰だって考えている。月にロケットを上げるような、計画を立てて金をかければできることはイノベーションではない。金で解決することとイノベーションは次元が違う」
――イノベーションを起こすにはどんな取り組みが必要ですか。

「政府はあまり規制をせず、ばかげた挑戦をやりやすくする環境整備をすべきだ。土を耕してタネをまくのが政府の役割だ」

「イノベーションの基礎は学術だ。学術が希薄で技術導入だけやっていても、やがて枯渇するのは明らか。日本の学術が明治から始まったとすれば、150年でようやく花が咲いた」

「基礎を固めるのは時間がかかる。次の150年をどうするのかという視点で考えるべきだ。日本が浮上するために、かなり思い切ったことをやらないといけない。もっと徹底的にしっかりとした学術を育てないといけない」

日本経済新聞 2018年12月3日(月) 朝刊 科学技術欄より



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