携帯、「3」の呪縛 「4」の福音 論説委員 西條都夫


 #NIKKEI

(以下一部転載)
日本人は3という数字を偏愛する。「石の上にも三年」といい、「三種の神器」という。御三家や三羽がらすといった3つでひとくくりにする表現も多い。そういえば昭和の大スター、長嶋茂雄さんの背番号も3だった。

ところが、世界には3という数字を、何か「よくないことの予兆」のように感じる人たちがいる。独占や寡占を嫌い、自由競争を信奉する競争政策当局の人たちだ。…

世界には携帯通信サービス会社が4社ある国もあれば、3社の国もある。再編で4が3に減ったり、逆にフランスのように新規参入で3が4に増えたりする市場もある。各市場の料金推移を比較分析すると、もともと4社の市場が3社に再編集約されると携帯料金は最大16%上がるという。これがビッグスリー化の代償である。

さて、日本に話を戻すと、日本の携帯通信事業の歴史は残念ながら寡占化の歴史だ。1990年代半ばには、簡易型のPHS事業者を含めると東名阪では実に7社が競合したが、その後、淘汰が加速。12年にはソフトバンクが「第4の携帯会社」だったイー・アクセスの買収を決め、今の3社体制が固まった。

その結果、教科書どおりの事態が起きた。欧州諸国などと比べて料金が高止まりし、家計負担が膨らんだのだ。…


人材の流動性の高まりも新規参入者には追い風だ。今夏、渉外畑が長く霞が関や永田町で顔の売れていたNTTドコモ幹部が楽天に転職し、周囲を驚かせた。若手を含めドコモなどから楽天への移籍組は数十人に及ぶという。

「NTTグループにはスピード昇進する『最早組』という人たちがいて、そこから外れるとなかなか上に行けない。それに不満な人がノウハウを持って外部に流出し始めた」と総務省幹部はいう。

そして、カギを握るのは起業家精神だ。80年代に幕を開けた日本の通信自由化では旧国鉄や東京電力、トヨタ自動車や総合商社などのそうそうたる大資本が一斉に参入したが、再編の海に沈んだ。

現時点で大手3社に名を刻むのは、稲盛和夫氏のつくったDDI(第二電電、現KDDI)と孫正義氏のソフトバンクのみだ。本物の起業家だけしか生き残れない厳しい市場で、楽天の三木谷浩史会長は3社寡占の壁を破り「4の福音」を消費者に届けられるか。真価が問われる。

孫さんは「3」がお好きなようですね。日本市場においても、米国市場においても同様です。対象的に、孫さんの嫌いな官僚たちは「3」がお嫌いみたいですね。
KDDIは、Kがついた時点で残念ながら稲盛色はなくなってしまった印象がします。

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