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よしもと劇場「続・加藤の乱」を読み解く

⇒ (前回)2019年7月23日付 よしもと劇場「反社闇営業の巻」を読み解く

2019年7月24日付ORICON NEWSには、加藤浩次「吉本興業」退社はいったん保留 大崎会長との会談「平行線のまま」「合致点が見つからない」と題して次の記事が掲載されていました。

(以下一部転載。)
経営陣が刷新されなければ、所属する吉本興業を辞めると明言していたお笑いコンビ・極楽とんぼの加藤浩次(50)が24日、MCを務める日本テレビ系『スッキリ』(月~金 前8:00)に生出演。大崎洋会長(65)との話し合いについて「平行線のまま」「合致点がなかなか見つからない」として、同社退社はいったん保留とした。 …

その後の展開についての新たな記事を加味した上で一連の「加藤の乱」に関して、現時点において僭越ながら私は次のような感想を持っています。


組織にはトップと違う意見の人も必要です。異なる意見をトップに直接進言出来る人がいるだけで組織は強くなります。中国古典のひとつであり今から約1400年前、唐王朝2代目皇帝であり名君として名高い「太宗」の時代に政治の要点をまとめた書物である「貞観政要」において、太宗の臣下のひとりであった王珪は「争臣七人あり」の体制が望ましい姿であるとも諫言しています。組織において大切にすべき点は理念や哲学が同じかどうかです。基本的にはお互いの立場が異なれば、視点の高さも視野の広さも異なるので、意見も異なります。違うのがおかしいのではなく、違いがあることを前提としてお互いが理解、納得することが大切です。

更に、論語の中で孔子は弟子の子項から「このひと言なら生涯守るべき信条とするに足る、そういう言葉はありましょうか」と尋ねられたとき、孔子は「それ、恕(じょ)か。己の欲せざる所は人に施すなかれ」と答えています。

訳としては、「強いて言えば「恕」だろうか。自分がして欲しくないことは、人にも行わないことだ」という意味になります。恕(じょ)とは、読んで字のごとく「心の如く」という意味です。「我の心の如く相手の心を思う」という慈愛の情、仁愛の心、相手との違いを認め許容する寛大な心のことです。

これらを踏まえて、私から2つの質問です。

Q. 「吉本興業のマネジメント側の立場の人は、芸人さんたちの立場に立った発言や行動が出来ていますか?」

A. 会社側は芸人ファーストという回答を出しています。

Q. 「吉本興業の芸人さんたちは、マネジメント側の立場に立った発言や行動が出来ていますか?」

A. ……

私の目にはまだ芸人さんたちからの回答が出ていないように見えます。

では、芸人さんたちに追加の質問です。

Q. 「芸人さんたちがマネジメント側の立場に立ったならば、自分がマネジメントする芸人さんたちに闇営業をされることで、本業の営業にどのような影響が出ると考えますか?」

昨今の会社経営においては、会社自体が持つ力(会社力やリソース)よりも感性的価値が重視されるようになっています。感性的価値とはブランディングイメージやブランド力とも換言出来ます。 力のある会社であろうとも会社の持つブランディングイメージが悪くなるだけで、会社が倒産してしまう時代です。これは大袈裟なお話ではなく、事実です。具体例としては、SNS上でバイトテロの動画が流れるだけで、その会社が得るはずだった1年分の利益が丸々吹き飛ぶ時代です。

ブランディングイメージとは、必ずしも事実に比例して反映されるものではありません。嘘やデマ、噂にも大きな影響を受けます。世間の人たちは、事実よりも噂の方が大好きです。更には、世間の人たちは頭のいい人たちばかりではありません。加えて、基本的には「火のないところに煙は立たず」と理解されてしまうことが大半です。

ご自身が会社に属する立場ならば、余程の理由がない限りはブランディングイメージを傷付けないことがその会社に属する最低条件として求められるのは言うまでもありません。会社に属する一人一人が会社の代表者であるという意識を持ち、ブランディングイメージの向上に繋がる行動が出来るのであれば更に好ましいと言えます。

ブランディングイメージを傷付けると利益が吹き飛ぶことになると前述しましたが、逆にブランディングイメージを高めることが出来れば利益は増えていきます。基本的にホワイト企業であるならば、利益の配分は正当に行われますので、会社の利益が増えれば、社員の給料も比例して増えていきます。

再度の質問になりますが、

Q. 「吉本興業の芸人さんたちは、マネジメント側の立場に立った発言や行動が出来ていますか?」

芸人さんたちが今後どのような回答を出すのかを、私は視聴者の一人として楽しみにしています。

補足として、吉本興業のマネジメント側が芸人さんたちの立場に立った芸人ファーストの実行がなされないならば、芸人さんたちも会社側の立場に立つ必要などないと私は考えます。


※こちらは2019年7月24日(水)のnakayanさんのtwitterでの連続ツイートを読みやすいように補足・修正を加え再編集したものです。


中山兮智是(なかやま・ともゆき) / nakayanさん
JDMRI 日本経営デザイン研究所CEO兼MBAデザイナー1978年東京都生まれ。建築設計事務所にてデザインの基礎を学んだ後、05年からフリーランスデザイナーとして活動。大学には行かず16年大学院にてMBA取得。これまでに100社以上での実務経験を持つ。
お問合せ先 : nakayama@jdmri.jp


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