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【将棋観戦】叡王戦の展望、2020年版。※追記あり

藤井聡太 新棋聖の話題で盛り上がっていますが、将棋界には八つのタイトル戦があります。

1996年に羽生善治さんが七冠を制覇した時代は、タイトル戦は全部で七つ。八つめの「叡王戦」は、2017年度にタイトル戦へ昇格した新しい棋戦です。

現在のタイトル保持者は、永瀬拓矢 叡王(王座と合わせて二冠)。
永瀬さんは「才能なんて関係ない、努力あるのみ」という意味の語録を残しておられ、将棋ファンからは『軍曹』とも呼ばれています。しかも、藤井聡太さんがプロ入り間もない頃から、研究会でお互いを高め合ってきた戦友でもあるそうです。
将棋には「居飛車」「振り飛車」という二大戦法があり、永瀬さんはプロ入り当初は振り飛車党。受けの強い振り飛車が持ち味でしたが、やがて研究を進めて居飛車党へモデルチェンジ。
2019年5月には初タイトル 叡王 を奪取。同年10月には 王座戦 でも勝利を収め二冠となりました。

藤井聡太さんは棋聖戦で初タイトルを獲得し、王位戦で挑戦中(現時点で七番勝負を二連勝)。
実は棋聖戦・王位戦ともに挑戦者決定戦で 藤井聡太 七段 vs 永瀬拓矢 二冠の対戦となっており、両方とも藤井聡太さんの勝利となりました。だからこそ、永瀬さんは叡王のタイトル保持者として、今回の防衛戦に「ここで負けてなるものか」と期するものがあるのかもしれません。

叡王戦の挑戦者は、豊島将之 名人・竜王。渡辺明さんと並んで、現役最強の棋士です。

永瀬叡王と豊島挑戦者の叡王戦七番勝負は、これまでのところ・・・

第一局 113手で千日手、指し直し局は115手で豊島名人の一勝
第二局 223手で持将棋(引き分け)
第三局 207手で持将棋(引き分け)
第四局 232手で永瀬叡王の一勝

現時点で一勝一敗、二持将棋と互角の戦いになっています。特筆すべきは指し手の長さ。プロの将棋は平均して110手くらいで勝負がつくと言われています。ところが今回の叡王戦は、ほとんど200手超え。両者の執念がぶつかり合い、狂気の長手数が続いています。
七番勝負は先に四勝したほうの勝利ですが、決着がつくまで十局くらい戦うことになるかもしれません。

加藤一二三さん(愛称・ひふみん)が現役時代、1982年に名人戦へ挑戦したときは、持将棋ひとつ、千日手ふたつ、四勝三敗。計十局を戦って、当時の中原誠 名人を破り、初めて名人位を獲得しました。

かつての名勝負に並ぶような、熱戦の予感。
叡王戦 第五局は、2020年7月23日に行われます。

挑戦者している豊島将之 名人・竜王は、高校二年でプロ入りした俊英。順調に勝ち上がりますが、タイトル戦は久保利明さんや羽生善治さんの壁に阻まれて、四度敗退。2018年5月に、当時の羽生善治 棋聖を破り、念願の初タイトルを獲得。現在は名人・竜王の二大タイトルを保持しています。
また、2014年頃から将棋ソフトを用いた研究に力を入れており、研究面でも先駆者のひとりです。人間どうしの研究会からは遠ざかっているため、公式戦以外の動向は、プロ棋士から見ても謎に包まれているそうな。

観る将棋ファンとして勝手なことを言わせていただくと、指し手の切れ味や研究の厚みは、豊島名人がわずかに上かな、という印象です。しかし、永瀬叡王が引き分けや長期戦をいとわず粘り強く戦い続け、互角の勝負に持ち込んでいます。
「序盤・中盤・終盤、スキが無い」と称される豊島将之 名人ですが、永瀬拓矢 叡王を負かすことの大変さに、ちょっぴりウンザリしておられるかもしれません。。

現在の将棋界は、渡辺明さん、豊島将之さん、永瀬拓矢さんが三強。藤井聡太さんが棋聖を獲得し、木村一基 王位に挑戦中。無冠となっている羽生善治さんも、いずれ巻き返してくるでしょう。

私の場合、プロ棋士の将棋の指し手は、解説を読んだり、将棋ソフトで解析したりして少し理解できるかどうかです。それでも、これまでの文脈を理解して観戦していると、優れた才能に磨きをかけた者たちの対戦に、胸が熱くなることがしばしばです。

観る将棋ファンにとって、とても幸せな時代ですね。

※追記※
2020年9月21日に、叡王戦 第九局(!)が行われ、豊島将之 竜王が勝利。
四勝三敗、二持将棋にてタイトル叡王を奪取しました。
そして先立って9月19日には、羽生善治九段が竜王戦の挑戦者決定戦 第三局に勝利。豊島将之 竜王への挑戦を決めています。

真夏の暑さが過ぎても、将棋界のアツい戦いは続きそうです。

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