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それは「ゴミにKISS出来る?」って聞いてきた

その声の主を何と呼ぼう。
ワンネス、ハイヤーセルフ、右脳意識 インナーチャイルド、愛…
それとも幻聴…。
いずれにしても、名前を付けてラベリングした瞬間に、
それは人間社会へ収束のサイン…。

別に向こうから、
「汝、その名を尋ねてはならぬ」と言われたわけでもないし、
そもそも小学生の少年Eにとって、
そんなスピ系のコトバすら知らなかった。

ある日の休み時間、少年Eはノートにマンガを描いて遊んでいた。
何度も書いては消しゴムで消す、それを繰り返しているうち、
机のまわりは、消しゴムのカスだらけになっていた。

夢中になって書いてた少年Eの前にやって来た先生は、
「汚いわね…ゴミはゴミ箱に捨てなさい」
先生はそう言った。

「ゴミって汚いものなのかな?」そう思いながら、
少年Eは渋々周りのゴミを手で拾い集めゴミ箱へポイ。

するとゴミ箱の中で何か動く気配がする…
見るとゴミ箱の奥に昨日誰かが捨てた、
給食のパンの切れ端が捨てられていて、
それにまとわりつく、アリがうじゃうじゃといた。

少年Eは黙ってそれを眺めてると、、
周りにクラスメイトが寄って来た。
「何見てんの?」
一人の男子生徒がそう言うと、みんな一斉にゴミ箱を覗き込んだ。
「うわぁぁぁきったねェ…気色悪ぅ」っと大声をだし、
蜘蛛の子を散らすように走り去っていった。
どうもクラスメイトも先生と同じように、
ゴミは汚いものと思ってるようだ。
みんなに嫌われて、ゴミって可哀そうだなって少年Eは思った。

放課後、絵が好きだった少年Eは
一ヶ月ほど前、市が主催する絵のコンクールに
自分の絵が出された事を先生から知らされた。
「入選するといいわね」
ゴミ嫌いの先生はそう言った。

強い日差しが照り付ける、その日の帰り道、
「入選してるといいなぁ」っと思いながら、一人でトボトボ歩いていると、
横の下水道の中に、汚れて泥まみれになった段ボールの紙屑が、
グシャグシャになって、水の流れをせき止めていた。

少年Eは、別に気にも留めずそれを通り越してして歩こうとした瞬間、
その声はした。

「そのゴミ舐めれる!?」

    えっ!?

少年は一瞬立ち留まった。
     
     ?

再び

「今君が見たそのゴミにKISS出来る?」

    誰!?

しばらく時間が止まる。

少年Eは振り返って引き返し
泥まみれの段ボールの紙屑の横に立った。
周りに誰もいないことを確認し、膝まづいてゴミを舐めてKISSをした。

そして何事もなかったかのように家に帰った。

翌日、少年Eの絵は入選していた。


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